東京藝術大への入試を扱った青春映画『ブルーピリオド』 | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 東京藝術大の入試をメインストーリーとした映画『ブルーピリオド』(萩原健太郎・監督/吉田玲子・脚本)である。大学入試や受験をテーマとした作品は、これまでもないことはなかったと思う。だけど、芸術大への入試、しかも東京藝術大という、アート系の最難関大へ、フツーの高校生が挑戦するという話というのは、なかったパターンじゃないかかなと思う。

 テーマとしては「努力は才能よりも優る」ということを貫いていると感じた。果たして現実にはどうかということは別にしておいて、コツコツと努力する者が能力のある者、才能のあるヤツに勝つというのは、その昔の童話『ウサギとカメ』でも扱われているテーマでもある。言うならば、人類普遍のものともいえようか。

 閑話休題、ボクの母親は日本画を描いたりしていたのだけど、ボク自身は、恐ろしいくらいに絵心がない。だから、線描きでも漫画のような絵でも、なかなか表現が出来ない。なので、絵でモノを表すということが出来る行為は尊敬してしまう。それに、絵こそはセンスではないかな…なんて思っている。だから、やはり絵が上手いというのは、努力よりも才能によるのではないかとは思っている。ある程度才能のある人間が努力してこそのアート作品(芸術品)なのではないだろうか。

 もっとも、この映画に関して語るには、そんなことはどうでもいいわけである。多分進学校であろう高校の、ちょっと不良っぽいフツーの生徒(実は、あんまりフツーではないのだけれどもね)が、ひょんなことから絵心が刺激されて、藝大入試へ向けて走っていく2年間を描いたものである。そこでの友情や、指導の恩師との出会いで刺激を受けるなどは、その辺にいる高校生と何ら変わりはない。

 それを眞栄田郷敦が演じるのだけれども、実年齢は24ということだから、役の設定としてはいくらか無理がないとは言えなくはない。とはいえ、まあ、この手の映画ではそれは、よしとしておこうか。そして、芸術系大学の入試というのは、実際にこんな感じで行われるのかなぁ、などと言うことを思っていた。

 結果的には、映画としても落ち着くところへ着地したのかなぁとも思っている。そんな作品だった😅、のではないかと思う。美術科の教員が薬師丸ひろ子というのも、妙によかったかなぁ。