映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』は、現代社会への警告や問題提起もあった | 週刊テヅカジン

週刊テヅカジン

手束仁が語る、週刊webエッセイ

 基本的には、娯楽映画ということで、その時間を楽しく面白く過ごせられればいいかなぁという思いで観た映画🎥『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(武内英樹監督/徳永友一脚本/原作=渡邊明人)。しかし思った以上に現代社会への批判と言うか、今の時代のSNS社会への警告や問題提起も含まれていた。そんなこともあって、ボクとしてはそれなりに共鳴しながら観ていた。

「う~ん、案外、現代社会に対しての批判も含めた、社会派的要素もある映画だったのだなぁ」というのが、正直な感想だった。

 戦国武将をはじめ、歴史的な人物を今の社会に持ってきて政治家に例えてみたり、プロ野球監督にしてみたりということは、呑んだ際の遊びなんかでもしばしやってみることもあるものでもある。だから、こういう設定には、ボクなんかはスムーズには入り込んでいけた。ボク自身も、かつて、そんな本を手掛けさせてもらったこともあった。

 そうした展開で、映画的には三大英傑のそれぞれの特徴と言うか、歴史的に言われている性格を顕著に表しながらの展開というのは、それなりに納得していた。

 もっとも、この作品としてはタヌキオヤジのはずの徳川家康が、実は一番いい者になっていた。まあ、考えてみれば、260年にも及ぶ、江戸時代という安寧の世の中を構築していく為の基礎を作り上げたのだから、それはそれで、案外、今の日本の昭和後半から平成の浮世を作り上げる根底になっていたのではないかとも言えようか。そう思うと、納得は行った。まあ、コロナ禍の令和は知らんけど…。

 それはそうだ、大政奉還後の明治から大正を経て、帝国主義となっていった昭和前半の帝国日本は、実は織田信長的な明治天皇が牛耳り、その後を豊臣秀吉型の東条英機が国をを支配していたのかもしれんなぁと思ってしまっていた。

 そういう意味では、徳川幕府が栄えた江戸時代は元禄文化や文化文政時代といったいわゆる文化を育むことにもなっているのだし、平穏が長く続いていたということになる。現実的には、そういう世の中を徳川家康が本当に目指していたのかどうかをわからないけれども、結果として、そうした基礎を作り上げたということにはなる。そういう意味では「どうする家康」ではなく、「こうしたぞ家康」ということになろうか(苦笑)。

 そんなこんなで、結果としては、結構引きずられて見入っていた。内閣の面々の設定もさることながら、そのキャスティングも十分に楽しませてくれたと言っていいであろう。ことに、豊臣秀吉の竹中直人はどえりゃーよかったがや。あとは、織田信長のGACKTもカッコよかったんじゃないの。それに、徳川吉宗の高嶋政宏や北條政子の江口のり子なんかもなかなか良かった。そして最後に、長い演説をしっかりと聞かせてくれた徳川家康の野村萬斎。キャスティングとしては他に思いつかないくらいのハマり方だった。

 そんな中で、もうけ役だったのはテレビ局の新人記者役の浜辺美波だったかもしれん。いずれにしても、こういう楽しさにも巡り合えるから、やはり観たいと思った作品は外してはいかんなぁ…ということも、改めて思っていた。