簡単に言えば『言えない秘密』は、音大生同士のラブストーリーなのか | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 殆ど、予備知識もなく、また主な出演俳優も知らないという状況で観た映画🎥『言えない秘密』(河合勇人・監督/松田沙耶・脚本)だった。事前に得ていた情報としては、音楽大学生の男女のラブストーリーで、奏でるピアノが美しい…、という程度のものだった。主演となる若い二人に対しての何の知識もないので、それはそれでフレッシュな気持ちで観ていた。

 ところが、話が進んでいくにつれて思わぬ形になっていった。いつの間にやら、難病モノの悲恋ストーリー的展開とタイムトラベルムービーに誘導されていたという感じでもあった。「切なく転調する恋に涙が止まらない」というキャッチコピーだったけれど、ボク自身としては、何となくそこまでストーリーに入り込めないでいた。

 かつて、やはり若い知らない子ばかりが出ている作品で、高校生が夏休みに文化祭へ向けての映画作りをしようという『サマーフィルムに乗って』(2021年・松本壮史監督作品)などは、その瑞々しさがたまらなかった。チャンバラ映画を作りたいという女子高校生の一途な思いが、すごく伝わってきたというか、ボク自身すっかりハマってしまったという経験がある。観ているうちに、どんどん作品に引っ張り込まれていったのだけれども、今回はそこまでではなかった。

 音大というシチュエーションは、それはそれで新鮮だったかなとも思ってはいた。それに、音大生なんて言う存在そのものがそんなにいるワケではないので、音大の授業というのはこういう感じなのかもしれんなぁ、と、思いながら観てはいた。

 なかには、かつての日活青春映画のような和泉雅子や山内賢が出てくるのではないかと、思わせるようなクリスマスパーティーのシーンなんかもあった。また、音大の旧校舎と言われている所なんかは昭和的なレトロ感もあって(そういう設定でもあった)、それはそれで悪くはなかったかなとも思ってもいた。

 そういえば、2022年にやはり大学生のキャンパス生活を描いた『恋は光』(小林恵一監督・脚本作品)なんていうのがあった。岡山の環太平洋大(IPU)でロケをしていたようだが、その作品ではヒロインよりも、その宿敵と言うかライバルの馬場ふみかの方がいいなぁなんて思っていた。

 それと同じで、この作品でもヒロインよりは、主人公の幼馴染という設定の横田真悠の方がいいなぁなんて思いながら観ていた。ヒロインの古川琴音には、当初あまり表情がなく不思議な魅力を描いていたのだろうけれども…。ボクとしては何だか、目と目との間隔のちょっと広い子だなぁとか、音大だとこんな女の子もおるのかなぁ…などと思いながら観ていた。

 ただ、映画の中でのピアノの演奏は、それなりに心地よくボクの耳には響いてくれた。一応、ボクも幼稚園の年長クラスの時から小学4年生まで‟ピアノのおけいこ”に行って(行かされて)いて、ソナチネ12番くらいまでは行ったのでねぇ。まあ、どうでもいいことではあるのだけれどもね(苦笑)。