下町の商店街をウロチョロするのも、楽しくて面白い | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 おでんを準備する必要があったので、散歩がてら砂町銀座商店街の有名なおでん屋さんに行った。元々、タウンウォッチやヒューマンウォッチは嫌いではないので、ぶらぶら歩きながら、いろんな店やすれ違う人たちを観察するのも楽しい。それに、いつも歩いているわけではないところを通っていると、また何か新しい発見もあるというものだ。

 砂町銀座商店街は、年末あたりに行くと、まあ上野のアメ横ほどではないにしても、かなりの人出でごった返している。だから、ボクが目指すおでん屋さんなんかも、行列が出来てしまっている。並ぶのが好きではないボクとしてはそれは回避したいところである。ということで、一番いいのが平日の午前中で昼飯よりも少し前の11時前後ということになる。

 この時刻になると、商店街のそれぞれの店も、その日の揚げ物や料理が準備されてくる。食い物屋さんなんかだと、店頭にモノがいっぱい並んでいて大いに食をそそる。

 ボクは、まず迷わずおでん屋さんに行くのだけれども、こちらが品物と個数を言うと、おばちゃんが黙々と袋に入れていってくれる。そして「以上です」と言うと、すぐに電卓も押していないのに「960円」とか言う素早い計算だ。品物一つひとつの値段が違うのに、この速さは何なのだろうかと、いつも感心させられてしまう。

 しかも、プラスチック容器やコンビニのように発泡スチロールの容器に入れるというものではない。一見無造作な感じでポリ袋に入れていってくれて、最後にもう長年をかけて煮込み続けられているおでんの汁を大量に入れてくれて、その口を輪ゴムでぐるぐると何重にも巻くというスタイル(だから、口を開ける時は結構難儀ではあるのだけれども…苦笑)。それを茶色の無愛想な紙袋に入れて手渡してくれる。これも、いわゆるレジ袋ではないところにまた、味がある。そんな、昭和の残り香が十分にある商店街のおでん屋さんなのだ。

 他にも、揚げ物屋さんとか、焼き鳥屋さんとかも活気がある。総菜屋さんのメニューにも美味しいものがある。ということで、この商店街は、やっぱり癖になる。それに、歩いている人の年齢層も高めなので、ボクなんかも、「オレも、まだまだ中堅だわ…」と思えるくらいである。そうした中に身を置いているのは、それはそれで嬉しい。

 それに支払いもpaypayナントカとか「ピッ」という電子マネーなんかじゃなくて、現金というのもいいね。この砂町銀座を歩きながら「これも、世の中から失くしてはいかん、大事な文化なんだろうなぁ」としみじみと思っていた。