大学ラグビー王者帝京大に対して、どこまで抵抗できるか注目された慶應義塾大の戦い | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 現在の大学ラグビーでは、正直突出した力があると思われる帝京大。

 今季も、関東大学ラグビー対抗戦では、圧倒的強さを示して全勝でここまで来ている。対する慶應義塾大は先日の早稲田大戦と明治大戦と、筑波との試合も落として3勝3敗。全国大学選手権大会へは対抗戦5枠目として何とか出場できるが、この日の戦いでどこまで弾みをつけられるのかということになる。

 

試合前のセレモニーに並んだ帝京大と慶応義塾大の選手たち

 

帝京大 54(26―3/28―7)10 慶應義塾大

 

 大学ラグビーは対抗戦という性質上からも、レギュラーシーズンの試合一つひとつは大事にしていかなくてはいけない。力では上と思われる帝京大に対して、慶大がラグビールーツ校としての意地をどこまで示すことが出来るのかというところも見どころとなる。

 試合前の両校選手がメインスタンドに向かって並んで、それぞれの校歌斉唱というセレモニーも、厳かだ。そんな雰囲気が、学生スポーツらしいなぁと、しみじみと思わせてくれる。そして、この試合を観戦に訪れた学生たちにも、より自分の学校を好きになってもらいたいという思いにもなる。学生野球のエールの交換なんかもそうだけれども、そんな気持ちを高揚させてくれるのも、学生スポーツのよさだと思っている。

慶應義塾の場合には正式には、校歌ではなく塾歌という

 母校を好きになる、故郷を好きになるという思い。それは、そのままその人間の心を育てていくのではないかと、そんなこともしみじみ思っている。

 まあ、そんな能書きはいいとして、試合は、どこまで慶大が帝京の分厚い攻撃に耐えきれるのかなというところからの興味で観ていた。

 開始から10~15分、攻められてはいたけれども慶大はDFがよくこらえていたかなというところだった。しかし16分、帝京がついに、ラインアウトからFL⑦奥井君(4年・大阪桐蔭)が持って、そのまま左スミにトライ。さらに、21分にも正面20m付近からSO⑩井上君(4年・京都工学院)→RW⑭小村君(3年・ハミルトンボーイズ)に渡ってトライ。なおも30分と33分にも帝京はCTB陣の展開のよさからトライを重ねていった。

 

黒黄の慶應ジャージーと赤が基調の帝京ジャージ

 慶大は何とか前半を0では終わらせたくないという意地であろうか。39分にSO⑩磯上君(3年・青山学院)が立て続けに狙ったDGを2度目で決めて3点を返した。

 そして後半は、開始早々に慶大がファーストプレーから突進して、FWの攻撃で相手5mあたりまで攻め込み、PR③吉村君(3年・本郷)が押さえて一本を返した。これで、16点差とした。しかしながら、慶大としてはここまで。ここからは力では1枚上回る帝京が圧倒した。

 8分、23分と帝京がトライし、ゴールも⑮山口君(4年・長崎北陽台)がことごとく決めていく。こうして、帝京がリードを広げていく。

スクラム含めて、パワーと瞬発力では帝京が上回っていたことは否めなかった。

帝京SH⑨李君(3年・大阪朝鮮)のスクラムからの球出し。

 

 それでも、慶大もその後は攻められながらも堪えていた。そして、あわよくばカウンターアタックになるのか、という場面もあった。しかし帝京はロスタイムに入って41分、LO⑳カイサ君(1年・大分東明)から出たボールをFL⑦奥井君が押さえてトライ。さらにその2分後にもLW⑪高本君(4年・東福岡)が大きくゲインして、RW㉓五島君(3年・尾道)に渡り、留めの留めとなるトライとゴールが決まった。結果的にはトライ数としては8対1ということになった。

 帝京は、対抗戦1位校として全国大学選手権にシード校で準々決勝から登場することになる。全国選手権でも、優勝候補の筆頭であることは、間違いない。