週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 昨夏の甲子園、全国高校野球は新型コロナの影響で中止となってしまった。この大会中止ということは以前に、太平洋戦争で中止となっていたことがあった。実は、それ以前に一度、当時は全国中等学校野球優勝大会時代に第4回大会が中止となっている。その要因は富山県から始まった米騒動だった。

 歴史的に、中等野球が米騒動で中止になったということは知っていたが、米騒動そのものがどういう要因で発生してどんなものだったのかということは、詳しくは把握していなかった。せいぜい、富山県で発生したということくらいだった。また、日本で初めて、女性が起こした市民運動ということでも特筆ものだということくらいは何となく知っていたが、その程度のことである。

 この作品は、その米騒動を描いた映画だ。

 米騒動の勃発は1932(大正7)年のことである。まだまだ、男尊女卑というか完全なる男社会だった富国強兵の帝国主義時代。日本軍のシベリア出兵に伴って、軍隊へ米を配送しなくてはいけないということで、米どころ富山でもどんどん米が不足していった。そのことで米の価格はどんどん上がっていって庶民の生活を締め付けていく。その一方で、一部の金持ちや権力者は自分たちの米を蓄えながら、庶民の生活を圧迫していた。

 こうした現象に業を煮やしたのが、米俵を運ぶ仲瀬で何とか日々の生活費を捻出していたおかか(女房)たちだった。

「自分たちは汗水たらして、米を担いで運んでいるのに、その米が食べられないとは、どういうことだ」

 そんなおかかたちに決起を促していくのが、清んさのおババだった。そして、おババに煽動されながらおかかたちも権力に抵抗していく。

 ただ、おババが捉まえられたことで多くのおかかは戦意消失。そこに、再度戦う意志を作っていくのが井上真央の演ずるいとだ。女子ながら勉学好きだったことで、却って疎まれていたこともあったが、皆が本音を吐露していくことで再び決起していく。そして、最後は、日本で初めて女子の一揆で世の中が動くということになったのだ。

 

この作品には、富山県出身者のエネルギーも満載されているともいう。

 本木克英監督もさることながら、清んさのおババを演じた室井滋は大熱演、大奮闘していた。さらには柴田恵理、西村まさ彦ら富山県出身の俳優たちも渋く脇を固めて彩を添えていた。

 どちらかというと全国47都道府県の中でも地味な存在といってしまっても否定されないかもしれない富山県。だけど、大正初期に庶民の、しかも女性たちの中からこんなエネルギーを爆発させていたという事実を伝えた映画は富山県パワーを示したともいえるのかもしれない。

 また、室井滋だけではなく話し言葉の語尾が伸びる独特の富山訛りも言語考証が巧みで、そんなあたりにも富山愛が感じられた。

 おっと、だから今場所こそ、富山商出身の朝乃山、頑張らないかんのだろうけれどもねぇ。

 帰り道、スーパーに寄って、米10キロを買って担いで帰ってきたが…重い。