ルックバック | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

ルックバック

86点

『チェンソーマン』でお馴染み漫画家・藤本タツキが2021年にジャンプ+へ掲載した読み切り作品を劇場アニメ化。主演声優はTBSドラマ『不適切にもほどがある!』の河合優実。ここは少々ネタバレ。
本作の上映時間は58分。新海誠監督の『言の葉の庭』あたりを彷彿させるコンパクトさ。ただ内容はいい意味で簡素化されており、とても見やすい。
小学4年の学級新聞で漫画を描いている主人公藤野と、不登校だが同じく漫画を描いている京本。この二人が出会い、共作してプロを目指し成長していく展開。
しかし後半、思わぬ事件で京本が亡くなり、自らを責める藤野。そして小学生時代にタイムスリップして事件を未然に防ぎ、京本を救う時間軸を作り出す。

ただ現実には京本は生き返っておらず、そのまま物語は終わりを迎える。アニメとしてのファンタジー描写から一転、リアリティを突き付けた独自性が心を撃ち抜く。


さて全体を振り返ると、京アニ事件をモチーフにした展開だったり、オアシスのDon’t Look Back In Angerを遠回しに表現したタイトルだったり、ちょっとあざとさが幼稚に感じられてしまった。
58分という時間が見やすい、と冒頭で書いたけれど、その分深いメッセージが置き去りにされたのも否めない。そこは長所と短所が同居している印象。
音楽やセリフ、そして独特な作画でとにかく冒頭から突き刺さる人には刺さる映画。もちろん個人的にも泣けると感じたものの、ここまでのネットでの絶賛絶賛の評価を見ると、それほど突き抜けた映画でもないとも思ったり。

まぁ俺みたくそこは深く勘繰らず、素直な気持ちで見れば普通に泣けると思う(笑)。


監督:押山清高
声の出演:河合優実、吉田美月喜
2024年  58分