関心領域 | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

関心領域

64点

2024年のアカデミー国際長編映画賞など、数々の賞に輝いた話題作。
時は第2次世界大戦下、ポーランドのアウシュヴィッツ強制収容所。強制労働とガス室、銃殺、そして劣悪な環境による病死が蔓延した忌まわしい施設。
そして本作の舞台はその収容所ではなく、すぐ隣にある所長邸宅。普通に暮らす所長ルドルフ・ヘスとその一家の日常を淡々と描く。
この映画の特徴は、収容所の中は一切見せないこと。

序盤で一見平和に見える邸宅、しかし徐々に聞こえてくる隣からの銃声や悲鳴、罵声。
邸宅の住人はそれらを全く気にしない。自分たちの家の中だけが「関心領域」であり、壁1枚隔てただけの収容所で行われている恐ろしい行為は全く関心の領域外、というわけ。この比較が映画の肝となる。

例えば収容所で、ルドルフ所長はユダヤ人を効率的に「始末」するために焼却炉を導入する。邸宅に帰るとそんなことは全く表に出さないが、その思想は子供たちに無意識に、そして確実に伝染しているのが怖い。


さて収容所内は全く描かず、邸宅内だけで進むアイデアは一見秀でているように感じられるが、実は映画としては意外と途中で飽きる。予告を見ると凍り付くんだけど、1時間40分もやるとそこは間延びしてしまった印象。映画館では後ろの方でイビキが聞こえたり。まぁ寝てる人にとっても関心領域ではなかったんだろう(笑)。

監督:ジョナサン・グレイザー
出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー、ラルフ・ハーフォース
2023年  105分
原題:The Zone of Interest