名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊

59点

アガサ・クリスティ原作の名探偵ポアロシリーズ。ケネス・ブラナー監督兼主演は『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』に続いて3作目となる。

1969年に発表された小説タイトルは『ハロウィーン・パーティ』。仮装した招待客が恐怖を煽る、まぁありがちな手法。
前2作に比べると、キャストや映像、そしてトリックが徐々に地味になってきている。本作はベネチアの街並みが綺麗に描かれているものの、ポアロの冴えた推理も抑えめ。亡霊の幻覚にひたすら悩まされるポアロだけど、そういう小手先の演出で誤魔化してるような印象があった。
このシリーズはあくまで現実的な解決がベースになっているため、本物の亡霊は出てこないことが予想できるわけだが、その分リアリティのある真相は、ともすれば見てるこちらからは満足のいくものにはならない場合がままある。
『オリエント急行殺人事件』のように「犯人は全員だった!」みたいな飛び道具的なものでなければ、本作のようなオーソドックスな結末だと、さすがにこの手の謎解き作品を何本も見てると、飽きる人は多いかもしれない。
すでに本作のポアロは一線を退いているため、さらなる続編が出る可能性は低いかな。日本の金田一耕助同様、古典のミステリー小説はそろそろ限界を感じるので、今後映画化するなら新たなアイデアが欲しいところ。
ポアロものではないが、個人的に好きなクリスティ原作『そして誰もいなくなった』の再映画化を首を長くして待ちたい。

監督:ケネス・ブラナー
出演:ケネス・ブラナー、カイル・アレン、カミーユ・コッタン、ジェイミー・ドーナン、ティナ・フェイ、ミシェル・ヨー
2023年  103分
原題:A Haunting in Venice