生きる LIVING | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

生きる LIVING

90点
1952年・黒澤明の名作『生きる』をイギリスで2022年にリメイク。
舞台は1953年のロンドン。役所の市民課で淡々と事務的に、毎日同じような仕事をこなす官僚の老人ウィリアムズ。ついたあだ名が「ゾンビ」。
ある日ウィリアムズが、末期ガンで余命半年との宣告を受ける。その最後の半年で何ができるか、を描いた物語。
クロサワ映画というとどうにも大作で敬遠しがちな人もいるかもしれないが、こちらは1時間40分とかなり端折っており見やすい構成。
主人公ウィリアムズの終末が、コミカルな部分も含めどこか身近に描かれているのが嬉しい。
同居している息子夫婦が遺産を狙っていたり、元同僚の女性と軽い恋模様があったり、そこは日本のドラマにも出てきそうな演出。
残されたわずかな余生の価値を求め、ウィリアムズは自ら「お役所仕事」から脱却し、放置してあった「子供の遊び場公園の建設プロジェクト」を進めようとする。誰もやりたがらないこの仕事を、果たして余命半年のお爺ちゃんが成し遂げることができるのか?
昔の名作は、得てして今見ると堅苦しくて面白くないことが多いものだけど、本作は違う。オリジナルは日本的、だがこちらはイギリス的に脚色されており、その絶妙な表現方法がハマっている。黒澤明マニアが見るとあれこれ批判されそうだけど、まっさらな気持ちで見ると主人公ウィリアムズの最後の「挑戦」が心に響くと思う。むしろこれは若い人が見た方が活力になるのでは、と感じた。

クロサワ映画を知らない人にここはおすすめ。

監督:オリヴァー・ハーマナス
出演:ビル・ナイ、エイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ、トム・バーク
2022年  102分
原題:LIVING