夏へのトンネル、さよならの出口 | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

夏へのトンネル、さよならの出口

67点
ウラシマトンネルと呼ばれる不思議な場所。そこに入ると欲しいものが手に入るが、ただしトンネル内は時間の流れが外界より早い。そのトンネルをめぐり、男女高校生2人が織りなす夏の物語。洋画の『インターステラー』にインスパイアされたらしい。ようはタイムパラドックスを描いた作品。
男子の方は事故で死んだ妹に会いたい。女子の方はマンガ家になるという夢がある。この望みを叶えるために共同戦線する2人だけど、求めるのが過去と未来という真逆の目標を対称的に描いているのがポイント。
しかしまず主演2人に若手役者(鈴鹿央士、飯豊まりえ)を使ったため、セリフ回しが未熟。そして感動させる前提の妙に目立つBGMもどこか浮いている。アニメ作品としては基本的な部分で違和感を持ってしまう印象。
時間の流れを扱ったという点では『時をかける少女』に通じるものがあるが、こちらは今ひとつ理路整然としておらず、ラストに大したどんでん返しもない。ようするに、ただ漠然と2人の願いを追ってしまった感が強い。せっかくの面白い題材が上手に生かされてないように思えた。
そして何より致命的なのが、大ヒットアニメ『君の名は』をあからさまにパクった場面が目立っているんだな。まぁ内容さえよければいくらパクってもいいんだけど、こちらは設定はいいんだがストーリーに難ありで、クライマックスにも劇的な展開はなく、音楽以外で泣ける要素が残念ながらあまり見当たらなかった。
雰囲気は悪くないものの、骨組みがしっかりしておらず、エピソードがバラけて見えてしまい一貫性がない。そのため見終わった後は疑問点もちらほら出て、結論として泣くには至らず。うーんこれは素材がもったいなかったかな。

監督:田口智久
声の出演:鈴鹿央士、飯豊まりえ、小宮有紗、畠中祐、小林星蘭
2022年  83分