ハウ | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

ハウ

69点

ここは思い切りネタバレ注意。


本作は一見実話ベースだと思いそうだが、実は『黄泉がえり』『チーム・バチスタの栄光』『老後の資金がありません!』などの脚本を書いた斉藤ひろしの小説を実写映画化したもので、モデルとなった犬などは存在しない100%創作の話。ハウを演じた犬もベックという名の俳優犬。
監督は『ジョゼと虎と魚たち』『のぼうの城』などの犬童一心。犬だけに(笑)
婚約者からフラれた主人公・民夫(田中圭)が、上司の勧めで保護犬となっていた大型犬を飼う展開。しかし序盤、民夫の不注意であっさりと犬に逃げられてしまう。

映画はペットロスになった民夫の生活と、誤ってトラックの荷台に乗り込み青森まで行ってしまったハウが、民夫の住む横浜まで自力で戻ろうとするロードムービー的要素を交互に描く構成。
ハウが旅する過程で出会うのは、いじめを受けている女子中学生、旦那を亡くした傘屋の老女、DV被害の経験を持つ修道院の女性など。なるほど小説の作り話っぽい、取ってつけたような問題を抱える登場人物とエピソードばかり。
まぁ色々あって迎える映画のラストでは、民夫とハウは感動の再会を果たすものの、すでにハウは他の家庭に飼われており、民夫は「俺はもう大丈夫だから」とハウとあっさり別れることを決意してしまう。現実的と言えば現実的だが、どうせ創作ならもっと上手い終わり方なかったのかなぁ、とは思う。そこはポスターに書いてある「かつてない優しいラスト」に違和感を持った。
というわけで犬好きな人はそこそこ楽しめると思うが、シナリオに少々無理があり感動とまではいかなかった。題材がもったいなかった作品。

監督:犬童一心
出演:田中圭、池田エライザ、野間口徹、渡辺真起子、モトーラ世理奈、石橋蓮司、宮本信子
2022年  118分