世界で一番しあわせな食堂 | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

世界で一番しあわせな食堂

90点
フィンランドで食事を題材にした映画といえば小林聡美主演の『かもめ食堂』を思い出す人が多そうだけど、こちらは主題こそ違うものの、何となく通じる温かさみたいなものは伝わってくる内容。
中国人で料理人の父親とその幼い子供が、人探しのためフィンランドの小さな村を訪れる。食堂を営む未亡人が人探しを手伝う代わりに、店の料理を手伝ってもらう展開。
現地の個性的な人々と綺麗な風景。そこへ人情味あふれるエピソードと美味しそうな料理。個人的にはもうツボの要素が次々と出てきて最後まで飽きることがなかった。
フィンランドと中国人という、一見ミスマッチに見える組み合わせも意外と映画を盛り立てている。もし主役が日本人だったらもっとハマれたかもしれないが、これはこれとして面白かった設定。
ソーセージとジャガイモばかり食べて中華料理を「ゲイの食う物」と馬鹿にする現地の人。欧州のアジア偏見なんかこんなものかなぁとふと思うも、そんな連中を美味しい料理食わせて黙らせる痛快な部分も有り、痒いところに手が届くような演出が散りばめられている。

全体的には淡々とした作品だけど、終盤ではキッチリと伏線も回収され、単にまったり作品では終わらず見終わったあとは満足感が味わえ、まさしくタイトル通りの「しあわせ」な気分になれた気がした。これ見たら誰でもフィンランドに行ってみたくなりそうな良作。


監督:ミカ・カウリスマキ
出演:アンナ=マイヤ・トゥオッコ、チュー・パック・ホング、カリ・バーナネン、ルーカス・スアン
2019年  114分
原題:Mestari Cheng