すばらしき世界 | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

すばらしき世界

59点

佐木隆三の長編小説を映画化。長く刑務所に入っていた殺人犯の、出所してからの彼の生活を描く。実在の人物がモデルらしい。
監督は西川美和。彼女の作品だと『ゆれる』にどこか雰囲気が似ている感じがした。
暴力団関係者で、抗争相手を殺めてしまった主人公・三上(役所広司)が刑期を終え出所。もう一度社会に馴染もうともがくものの、彼なりの昭和っぽい正義感が物語の中でちらほらと顔を出し邪魔をする展開。
久しぶりの娑婆の生活で良い事、悪い事がたくさん起こり、生きていくことの難しさをダイレクトに伝える手法。そんな彼を取材する青年(仲野太賀)やTV屋の女性(長澤まさみ)など、三上をとりまく様々な人間模様が映画の軸。
ここでは手助けしてくれる人も大きくクローズアップされており、そこまで厳しい現実を突きつけてるわけでもないのが見やすさに繋がっているかな。見ていてホッとするエピソードも出てくるので、そこはこの作品の魅力なんだろうと思う。映画を通じて、出所した三上の厳しい生活と度重なる苦労が描かれているが、時おりコミカルな部分も顔を出し、映画としてのバランスは上手いと思う。

ただ衝撃とか感動という要素を期待すると、え?もう終わり?みたいな拍子抜けは感じるかもしれない。
さて『すばらしき世界』というタイトルは幾分大げさに見える。ぶっちゃけそんな大層な内容ではなくて、そこのミスマッチを狙ったタイトルなんだと思うけど、見終わったあとそこの意味を突き詰めて考えてみるのも面白いかも。

監督:西川美和
出演:役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、キムラ緑子、安田成美、梶芽衣子、白竜、橋爪功、長澤まさみ
2021年  126分