おかんの事が好きな僕は、おかんとお風呂に入るのが、テーマパークのように好きだった。
おかんの名前はシヅコ。
志すに、鶴に子。
志鶴子だ。
変わった名前でしょ?
ほっといてくれ!
ある日、僕はいつものように、おかんとお風呂に入っていた。
すると幼い僕は、おかんのお尻に違和感を感じた。何かがお尻に付いている、と。
うんこではないし、なんだろう。
僕は聞いた。
『おかん、お尻の穴に丸いもん付いてるで!』
おかんは慌てて、
『あ!これはええねん!』
と言いながら、マジシャンのように丸いものを引っ込めた。
僕は目を疑った。なんと、次におかんのお尻を見た時は、見事に丸いものがなかった。
今はキレイなお尻だ。さっきのは、なんだったのだろう。
丸いものといっても、大きな梅干しくらいあったし、卓球のボールくらいもあった。
張本にそれを投げたら、チョレイと言って打ち返してしまうほどの大きさだった。
そしておかんは僕に、声をひそめて言った。
『おとんに言うたらあかんで!』
言うたらあかん事は、おかんのお尻に丸いものがある事なのか、
それとも、おかんがマジシャンのように丸いものを引っ込めた事なのか。
たぶん両方だろう。
今、思うと、おかんがマジシャンのように引っ込めた丸いものは、まぎれもなくイボ◯だ。
まぎれもなくイ◯痔だ。
なぜ2回言ったのだろう。でも、当時僕は、イボ◯の存在も知らなかったし、イボ◯が引っ込む事も知らなかった。
出し入れ自由のイボ◯。まるでタンスのようなイボ◯だ。
でも今、思い出すと、紀州の梅干しにも似ていた。
紀州の梅干し。
あれはうまい。
それ以来、おかんとお風呂に入ると、おかんのお尻に目が行くようになったが、二度と紀州の梅干しに出会える事はなかった。
おかんも僕に気を使い、お尻に力を入れて、出ないようにしていたのだろう。
そういえば、お尻がキュッと閉まっていたような気がする。
気を使わせて悪かったね、おかん。
僕も小学5年や6年になり、おかんとお風呂に入る事はなくなったが、おかんの紀州の梅干し事件のことは誰にも言わなかった。
今はお星様になった大好きな、おかんに一言。
『おかん、これまで内緒事は守っていたけど、つい、ブログで言ってしまってごめんね。』
それと、おかん、明日の野球の試合、勝たしてね。お昼のお弁当は、梅干しおにぎりだから。
嵐山あおや