女子が帰ったあと、僕は窓から外を見ていた。
景色は海だったか山だったか忘れたが、上の階の窓から言葉が降ってきた。
『自分ら、どこの中学?』
僕が見上げると、知らない中学の女子が、男前の僕に話かけて来た。
僕は同じ部屋の奴らに、
『ちょっとちょっと!女子が話かけて来てるで!』
男子みんなは、窓から顔を出して、アホみたいな顔で上を見た。
男子A『俺ら京都の中学やで!』
男子B『自分らは、どこなん?』
男子C『バナナ持ってる?』
女子A『私ら、松山東中学!』
女子B『部屋抜け出して遊びにおいで♪』
女子C『バナナ持ってへん。』
答えんのかい!
僕は鮮明に覚えている。松山東中学の女子。
誰かいません?下関マリンホテルに泊まった女子。
こんばんは☆あの時の男前です。
話を戻す。
僕ら4人は、部屋においでを聞いて、さっきの女子潜り込み問題も忘れて、上の階へと急いだ。
北村『こら!お前らの会話、隣の部屋で聞いてたんやぞ!』
一つ付け足す。
北村は音楽の先生で、たまに股間を掻く癖があった。
なぜだろう?
北村は鬼の首を取ったが如く、僕ら男子を捕まえて、廊下に正座をさせた。
僕らの部屋を訪れた女子にも正座をさせた。ばれていたのだ。
長かったなぁ。
男女共、正座をさせられながら、
男子A『長いー!』
男子B『もうええやろー!』
男子C『サバはおやつ?』
正座は1時間に及んだ。
けれど、あの頃の先生は、どこか、親戚のおっちゃんのように、
あたたかみと優しさも兼ね備えてるような、そんな気がしてならない。
嵐山あおや