ちなみに、その頃の僕は、山崎賢人に似ていた。
僕『はい、もしもし?』
女子『あおやさんですか?』
僕『そうですけど。』
女子『私、あおやさんの事が好きで、渡したいものがあるんですけど。』
僕『そ、そうなん?誰?』
女子『2年の女子なんですけど、魚定ていう所に来てもらえませんか?』
僕『分かった。行くわ。』
魚定とは、地元の魚屋である。
僕は急いで1番お気に入りの服に着替え、髪の毛をセットし、タクティクスをつけた。
鏡を見ていると、自分自身の男っぷりに酔いかけたが、女子の待つお気に入りの自転車で魚定に向かった。
着いた僕は自転車を停め、1番カッコいい形で立ち、髪をかきあげながら女子を待った。
そして、待った。
なかなか来ないと思って髪を12回かきあげた頃、隣の同級生マユの家の2階から黄色い笑い声があがった。
そこには同級生の女子3人がいて、
えつこ『あおや、そんなとこで何してんねん?』
僕『年下の子に呼び出されてん。』
えつこ『それ私らやで!』
僕『えっ?!』
僕はその時、初めて騙されたと気付いた。
そして思った。何度も髪をかきあげなければ良かった、と。
あんなカッコいいポーズで立っていなければ良かった、と。
穴があったら、高橋マーサの鼻の穴でも入りたい、と思っていると、女子が家に上がっておいでと言ってくれた。
2階にあがると、
えつこ『何カッコつけて立ってんねん!』
マユ『変な顔して待ちやがって!』
ノブヨ『髪の毛のかきあげ方、金八先生みたいやったで!』
僕『やかましわ!めっちゃドキドキしながら来たのに!男の純情を持て遊びやがって!』
そのあと、僕らは楽しく遊び、僕はお気に入りの自転車で帰って行った。
タクティクスの香りを残して。
嵐山あおや