ここ数年、出勤率ナンバーワンの私からは想像もつかないだろうが、子供の頃は病弱で医者にばかりかかっていた。
すぐに風邪を引いては発熱した。
病院に行けば、母親が必ず売店で「ビスコ」を買ってくれたが、子供心にそれが楽しみだった。
文字通り、親の心子知らずである。
幼稚園の年中の頃だったと思うが、扁桃腺の切除手術で入院した。
全身麻酔で、煌々と光る手術台の複数の丸いライトを覚えている。
麻酔のマスクを被されて2、3秒で意識が飛んだ。
3、4日ほどの入院だったと思うが、毎晩母親が添い寝してくれた。
夜、病院の中庭あたりから聞こえる猫の求愛の鳴き声が、妖怪のうめき声に聞こえて、とても恐ろしかった。
退院前日の晩は父親が添い寝してくれた。
その最後の晩だけ、おねしょした。
翌朝、「よくがんばったね」と言ってくれた看護師のお姉さんの顔が恥ずかしくて見られず、下ばかり見ていた。
(了)