まず、タイトルがすごいです、

『女殺油地獄』。

 

字面もすごいけど、

声に出して言ってみるのもすごい、

 

「おんなころしあぶらのじごく」

 

人形浄瑠璃で観てきました。

 

 

あらすじを、公演チラシから引用します。

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仕事もせずに遊び暮らす河内屋与兵衛。

河内屋の主人徳兵衛は与兵衛の義理の父であるが、恩ある先代の主人の息子である与兵衛に厳しいことを言えない。借金がかさんだ与兵衛は徳兵衛から金をだまし取ろうとするが、それが露見して、とうとう勘当されてしまう。

借金の返済に困り果て、同業の油屋である豊島屋の女房お吉に借金を頼み込むが断られ、追い詰められた与兵衛はお吉を殺して金を奪おうと刃物で斬りつける。売り物の油がこぼれ、油まみれになりながら与兵衛はお吉を殺害してしまう。

実際の殺人事件を元にしたといわれる近松門左衛門の人気作。

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人形浄瑠璃に先立ち、出演者のかたたちのトークショーがあって、興味深かったです。

人形遣いの吉田玉助さん(今回は与兵衛役)が進行役で、

太夫の豊竹呂勢太夫さん、

三味線の竹澤宗助さん、

そして、

人形遣いの人間国宝でいらっしゃる桐竹勘十郎さん(お吉役)、

三名のお話でした。

 

印象に残っているのは、

桐竹勘十郎さんが、「自分の役割の浄瑠璃が終わっても、次の役割の浄瑠璃が始まるまで、気を抜かないできちんと演技をする」というようなことをおっしゃってて、「つながりが大事」と。

 

それから、与兵衛がお吉に対して殺意を抱くポイントとしては、

与兵衛のセリフ

「これ程男の冥利にかけ、誓言立ててもなりませぬか。ハアハアなんとせう借りますまい」

の、「なんとせう借りますまい」のところで、みなさまご意見が一致していました。

 

世話ものと歴史ものでは、太夫の豊竹呂勢太夫さんがおっしゃっていたのは、

歴史ものの方が型がカッチリしているから、ますは歴史ものから学んで、

世話物は流れが速かったりして難しいところが多いから後に学ぶ、といったところも、

興味深かったです。

 

 
人形浄瑠璃ですが、人形の動きがとても繊細で、人間より人間らしいことに
心底驚きました。
 
お人形一体(数え方合ってるかな?)につき、三人の人形遣いの人で動かしているのですが、
その三人の連携や息がぴったり合っているところが、ほんとうにすごい。
それに、次第に、お人形を動かしている大勢の人間たちがかすんで、お人形しか目に入らなくなるのです。
 
与兵衛がお吉に刃物で斬りかかり、お吉が甕からひしゃくで油をすくって与兵衛にぶちまけて必死の抵抗。
二人(お人形だけど)の血と油にまみれながらの鬼気迫る闘い。
それに太夫の殺気にみちた語りとキリキリと高く鳴る三味線が合わさって、圧倒されます。

お人形が油だらけの床でツツーーーーっと滑って転ぶ、その動きの迫真のなめらかさ。
舞台の上で実際に油がまかれているわけではないけれど、
真実、床が油だらけなんだろうなって、思えるのです。
 
お吉が、二人の幼い娘の髪を梳いてあげる場面も丁寧で繊細で、とても優しいのです。
蚊帳のなかの寝床に寝かしつけてあげるところとか、
お吉も娘ちゃん達もお人形なのに、あたたかい情愛がいっぱいで、
そのあとの与兵衛との死闘を知っているだけにつらくなりました。
 
人形浄瑠璃を観たのは、わたしは、まだ3回目くらいですが、
人間と人形(物)のあいだの境目がゆらぐ、繊細な、不思議な、とても独特の舞台芸術だと思います。
これからも、もっとたくさん観に行きたいです。