こんにちは。

 

7月に、ベルばらの漫画を読んでから読み始めた『新エロイーズ』について、

再度ご紹介させてください。

 

 

『新エロイーズ』(Julie ou La Nouvelle Héloise, 1761)がどんな作品か、

朝日出版社の『フランス文学小事典』139頁から引用しますね。

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 ルソーの書簡体小説。スイスの美しい自然を舞台とする。家庭教師サン=プルーは貴族の娘ジュリーに恋心を抱き、彼女も彼を愛するようになるが、身分違いの恋ゆえに、彼は彼女のもとを離れ、スイスからパリへ出る。その間に、ジュリーは思慮深い人物ヴォルマールと結婚し、子どもも生まれる。だが、妻から事情を聞いたヴォルマールは、サン=プルーに子どもの家庭教師になるように提案し、彼もこれを受け入れる。

(中略)

書簡体であることも功を奏し、散文的な文体の美しさも特徴で、刊行と同時に大きな評判を呼び、18世紀最大のベストセラーの一つとなった

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(引用以上です)

 

上巻を、8月半ばに読み終わりました!

厚かったです、訳者あとがきまで含めて495頁。


上巻で一番印象に残ったのは、このピンクの付箋の、188〜189頁のところです。

 

 

ここがどんなところかというと、

ときは18世紀なかば、舞台はスイスのヴォー地方の田舎、

平民のサン・プルーと貴族の娘ジュリは愛し合っているのだが、

ジュリの父親はふたりの結婚は身分違いでありえない、問題外だと思っている。

 

そんな折、サン・プルーの友人エドワード卿(イギリスの貴族)が、

ジュリの父に、サン・プルーを婿殿に迎えてやってくださいと説得する、

という場面です。

 

書簡体小説なので、小説の地の文は全て、登場人物の誰かが誰かに宛てて書いたお手紙という体裁になっています。

これから引用する部分は、

クレール(ジュリの従姉妹)が、エドワード卿とジュリの父親とのやりとりを目撃していた、その様子をジュリに報告する手紙の文です。

 

少し長くなります。

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卿が言われるには、「あなたがどんな偏見をおもちになろうと、このことはわかっていただきたい。彼はだれにもましてジュリさんにふさわしい。きっと彼女を幸福にできる男性なのです。人間によって左右されないあらゆる賜物を彼は自然から受け取っていて、しかもそこに自分の努力で築いた才能をつみ重ねているのです。若くって、背は高く、姿はいい、丈夫で、なにをしても巧みです。教育があり、判断力もあり、行いはよく、勇気があります。才知は豊かで、魂は健全です。あなたのご承諾を得るのに何が欠けておりましょう。財産ですか。(・・・中略・・・)貴族の称号ですか。(・・・中略・・・)私の申したいことは、要するに、あなたが偏見よりも理性を選ばれるならば、称号よりもお嬢様をたいせつになさるならば、彼にお与えになってしかるべきだということです。」

 これを聞いてお父さまは激昂なさった。そんな提案はばかばかしく滑稽だと、こうおっしゃった。「なんですと! いやしくも名門の末裔が、どこの馬の骨ともわからない、宿なしの、物乞いしなければ生きてゆけぬ者の名を名のってわが名を絶やす、いやわが名を汚す、そんなことがいったいあなたのように名誉を重んずる方に考えられることですか・・・・・」「おやめください」と、エドワード卿がさえぎって言われました。「あなたは私の友人の話をなさっているのですよ。私の面前で彼を侮辱されたら、それは私に向けられたものだと理解しますから、お含み願いたい。また名誉を重んじる人間を傷つけるような侮辱的な呼び方をなさると、それを口にする方ご本人の名誉がいっそう傷つくことになりますから、これもご承知願いたい。どこの馬の骨ともわからぬこうした人たちこそ、ヨーロッパ中のあらゆる田舎貴族よりもずっと尊敬すべきなのです。それに身を立てる手段として、立派な人間と認められて身に受ける敬意、友情が与える贈物、これ以上に尊いものがあるとはよもやお考えになりますまい。私が推輓している婿殿は、あなたのように長い祖先の系譜、いつもあやしげなものですけれど、それはもっていないとしても、彼は自分の家の礎となり名誉となるでしょう。あなたのご先祖の最初の方がそうであられたように。まさかあなたはお家の始祖なる方の縁組を不名誉とはなさいますまい、こんな侮辱を抱かれたら、ご自身にはね返ってきますからね。かりに尊敬すべき人物が興した家名だけを考慮してそのほかは無視するとすれば、どれだけ多くの華々しい家名が忘れ去られることになりましょうか。現在から過去を判断しましょう。(・・・以下略)

 

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このあとも、エドワード卿(に語らせたルソー)の貴族及び身分制への批判は延々と続くのです。

 

1761年、この『新エロイーズ』が出版されて70版近くを重ね、18世紀最大のベストセラーになったというのです。1789年バスティーユ襲撃からのフランス革命前夜、この本を読んでいたフランス市民たちの気持ち、そしてこの書物が市民の行動に、ひいては歴史に与えた影響を考えると、ドキドキと胸が高鳴ってしまいます。

 

下巻は図書館で借りてきて、現在読んでいます。

 

下巻も、まだ途中ですが、私が読んだところまででも、教育論、家政論、お金の使い方、田舎と都会、健康的な食事、美しい庭の造りかた、などなど、さまざまなテーマについて、有名な「自然に帰れ」にもとづきルソーが語りまくっています。ルソー節、炸裂です。

 

今年中に読み終わるといいな、くらいで、

ゆっくり読みたいと思います。

 

お読みいただきありがとうございました。