京都大学教授の潮見佳男先生(民法)が8月19日に亡くなったとの報が入りました。63歳だったようです。

 

潮見先生の学界でのご活躍は、法律家や法学徒であれば、言うまでもないところで、多数の業績・社会的貢献を遺してこられました(現在のreserchmapにおける情報はこちら)。最近の、民法典債権法部分の大改正においても、法制審議会部会幹事として重要な役割を果たされたのは周知の事実です。

 

一定の世代からは、潮見先生の『基本講義 債権各論Ⅰ』、同『Ⅱ』(新世社)を基本書に据えて債権各論(契約・事務管理・不当利得・不法行為)の勉強をした(している)法学生がかなりいます(大学の講義にて教科書指定されていることもしばしばです)。その平易な叙述と明快な論理が強い支持の基礎にあったように思われます。他方で,信山社の「法律学の森」シリーズから刊行されている債権法に関する諸著作は極めて重厚でまた緻密な論理による論争誘発的なものとして、多くの研究者が参照すべきものの1つに挙げていることも見逃せず、このような両面もまた潮見先生の民法(債権法)研究者としての優れた側面の1つであったように思われます。

 

実は、私自身は、潮見先生のご著書を基本書に据えたことがありません。債権総論では、先生の『プラクティス債権総論』(信山社)というものがありますが、私はこれと双璧を成す中田裕康『債権総論』(岩波書店)を使っていましたし、債権各論も内田貴『民法Ⅱ』(東京大学出版会)がそのベースにありました(内田先生が法務省参与になられてからは、中田裕康『契約法』(有斐閣)も参照していました)。ただ唯一自身で購入したものは、有斐閣から出版された『民法(全)』です。この本のはしがきには、「私は、本を出す際には、自分が研究している部分だけにしてきたが、編集部の強い願い出に断れなくなり、やむを得ず書くことにした」という趣旨のことが書かれており、それを当時の私は好意的に受け止めていたように記憶していますし、ようやく潮見民法の俯瞰図を手に入れられると思ったと記憶しています(が、本の性質上、あまり「潮見説」はなく、条文の羅列に近いものだったように思います。もっとも、最新版には目に通せていないので、最新版ではどうかということまでは含みません)。

 

まだまだ学界での主導的役割を内外から期待されていたものと思い、その意味でも大きな損失だと思われます。

生前の先生のご活躍・ご貢献を記念し、ここにご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

 

 

 

 


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