御嶽山の噴火から今日で2週間になります。死傷者が出てしまったのみならず、いまだに行方不明者がいるということで、そのご家族のご心痛には想像を絶するものがあるだろうと思います。
しかし、本稿では、そのような生の「今」にフォーカスするのではなく、もしかしたら出てくるかもしれない「これから」についてのお話をしようと思います。これは、2011年3月11日の東日本大震災での「行方不明者」にも当てはまり得るお話です。

もし、ある家族の父・夫に当たる男性がある日急にいなくなってしまったとしましょう。その理由は上記のような自然災害、あるいは飛行機事故・船舶事故などの大規模事故、さらには現在のイスラム国問題に見るような戦地での失踪などの他に、本当に何もない日常中に「仕事に行く」といいながら、忽然と姿を消したということもあるでしょう。これらの場合に、家族はその男性が(生死を問わず)発見されるまで待たなければならないのでしょうか。つまり、生死が確定するまで妻は再婚できず、あるいは相続は開始しないのでしょうか。もちろん、人倫的には「最後まで希望を捨てずに待つ」というのは素晴らしいものなのかもしれません。しかし、だからといって、例えば上記の男性の子は老齢で自分が死ぬ間際になっても父の財産を相続できないということがいいのか。その意味で上記のような(必ずしもすべての人には強制し得ない)人倫観で国民を縛ることには慎重でなければなりません。

このような事態に対応するため、法律はいくつかの制度を用意しています。それが、失踪宣告制度と認定死亡制度です。
便宜上後者から概観しますが、戸籍法89条は「水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は法務省令で定める地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。 」と規定をし、死亡が確実ではあるが、死体が見つからない場合などがそれに当てはまります。しかし、これは死亡認定された者の権利能力(権利義務の主体となることのできる資格)を喪失させるものではないので、もし万一生きて現れたときには、認定死亡の効力は当然に失われるとされます。

さて、問題は失踪宣告です。この制度もあれこれとややこしい法律問題を抱えていますが、紙幅の関係上概観だけに留めます。失踪宣告は民法30条から32条が規定しています。条文は少々長いので正確にはこちらをご覧いただきたいのですが、ざっというと、7年間生死不明であれば、利害関係人の請求により家裁が失踪宣告をし、それによって失踪から7年間が満了したときに死亡したものと取り扱われ、戦地などの場合(これを危難といいます)には、それらが終了したのち1年に変えられ、死亡したものと取り扱われるのがその危難が去った時になります。
危難失踪の場合とは異なり、普通失踪の場合には、失踪者がどこかで生きている可能性は比較的高いものとなります。そのため、7年という長期間が設定されているのです。
失踪宣告が確定すると、官報に公告され(例えば、6392号・平成26年10月10日・15ページ)、上記の日に死亡したものと取り扱われます。そのため、相続や再婚が可能となります。しかも、本人が生きて帰ってきても、当然には宣告が無効とはならず、「宣告の取消し」が必要となります(民法32条1項)。それは、民法31条により、失踪者の死亡が、「推定」ではなく、「みな」されていることに由来します(「推定」と「みなし」について、拙稿「推定とみなし」参照)。とはいいながらも、死亡とみなされた失踪者がどこかで例えばアルバイトをしていても、雇い先も「死者(幽霊)を雇っていた」わけではありませんから、給料をもらえなくなるわけではありません。なお、民法770条1項3号により配偶者の生死3年以上の不明は離婚事由ですし、同法814条1項2号で一方の3年の生死不明は養子縁組の離縁事由となっていますので、こちらを使った方が、法律問題が生じることは少ないと指摘されることがあります。
参照:裁判所HPによる失踪宣告手続きの案内

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