こんにちは



今回は教習指導員競技大会の四輪部門についてご説明したいと思います。



四輪車は二輪車に比べ免許の保有率も高く、二輪車以上に身近な乗り物でもありますが、その運転操作は『アクセル』『ブレーキ』『ハンドル』のみで全てをコントロールするため、実は二輪車の運転以上にドライバーの運転操作技術が問われる乗り物でもあります。



競技の内容は、より高度な運転技術が必要なものでもありますが、二輪部門同様に『教習指導員として必要な運転技術と立ち振る舞い』が求めらる内容となっているのです。


  フィギア


BOX内で方向転換し指定エリアへ

縦7m×横7mのBOX内で方向転換しながら、パイロンに接触することなく1カ所のエリアに後輪を指定通りに入れることと、前進・後退でのパイロン走行を含めた走行時間の短さで車両誘導技術を競います。




スタート枠から発進し、前進で幅2.1mの間隔のパイロンの間をスラロームしBOX内で切り返しを行ってあらかじめ指定された停止枠に後輪2本をピタリと停止させ、その後BOX内から今度は後退で幅3.5mの間隔のパイロンの間をスラロームしゴール枠に停止させそのタイムを競い合うというえげつない競技です。


ちなみに幅3.5mというのは全国共通でどこの自動車学校にも設置されている普通車用のクランクS字と同サイズで、幅2.1mは競技車両の幅から左右に20cmしか有余はありません。



なおかつ『指定G超過』なる減点項目も存在し、各競技車両に設置されたGセンサーにより加速方向に0.35G、減速及び左右方向に0.4G架かるとその都度減点となる厳しいG指定が設定されているのです。



指定G超過はその都度-50点、操作不良(ギアチェンジの際のギア鳴りなど)エンストは-100点、パイロンの接触やゴール枠接触は-300点、など教習指導員としての資質の問われる減点項目となっています。



ですから、やみくもに速く走行するのではなく、車両間隔を正確に捉え、かつ車両の無駄な挙動を抑えなくてはならない非常に高度な運転技術の求められる競技となっており、四輪競技において研鑽努力が1番問われる競技でもあります。


  ブレーキング回避


安定した危険回避技術で

50km/hで走行し、点灯する信号に従って右または左方向に危険回避し安全に停止することと、停止距離の短さで正しい判断と操作による車両誘導技術を競います。





50km/hで走行し制動開始地点からフルブレーキを開始すると同時に目の前の信号機がランダムに点灯し、その点灯の指示に従いハンドル操作で回避ラインを超えその停止距離の短さを競う競技です。



短く停止するハードなブレーキング操作と同時に信号点灯により素早く反応するための認知と正確な判断、確実なハンドル操作が必要となり、それを1回の本番で実施しなければなりません。



『指定速度不足』や『制動開始地点の不良』、『回避ミス(信号の指示と逆に行ったり回避ラインを越えられなかったり)』は大きな減点や記録が残りません。



二輪車のブレーキング競技同様に総合入賞を果たすためには確実な得点の獲得にとても重要な競技となります。



  縦列駐車/車庫入れ


合図や安全確認動作と正しい車両誘導で

縦列枠・方向転換枠において、パイロンに接触することなく正確に車両を誘導させることと、走行時間の短さで正確な車両誘導技術を競います。





自動車学校の課題でもおなじみの縦列駐車や車庫入れですが、ほぼ車1台分のスペースに確実に車体を収める技術と後退時の安全確認や発進時の方向指示器など、タイムを競う競技ながら日頃の教習における重点内容も盛り込まれたとても緻密な競技であります。


パイロン接触や接輪などもそうですが、こちらの競技も指定G超過の減点項目も設定されており、停止や発進時、ハンドル操作においても過度な車体への挙動は全て制御しながらより速いタイムを狙わなければなりません。


こちらも高得点を獲得出来る選手は日頃の鍛錬を積まれている努力の結晶であると思います。


コーススラローム 


正確な情報収集と環境に応じた総合的な判断で

さまざまな配列で置かれたパイロンから、的確に情報収集し正確にコースを読み取って走行することと、走行時間の短さで総合的な運転操作技術を競います。



※イメージ

二輪のコーススラローム競技と同じくジムカーナ的な競技をイメージしてもらえればわかりやすいですが、この競技もやはり『教習指導員として必要な技術と立ち振る舞い』が必要であり、ただ速ければ良いという訳ではありません。


『パイロン接触』や『落輪』-300点の他、ギアチェンジ区間における加速チェンジ(2速➜3速)、減速チェンジ(3速➜2速)のほか、この競技においても『指定G超過』の減点が採用されており、左右と減速方向に0.8G、加速方向には0.5Gを超えるとその都度-50点の減点があり、速さの中にも無駄な挙動をコントロールした正確な操作が求められる競技であります。



試走は1回のみで、またこの競技においてミスのない選手は全体の中でもほんのひと握りであることを考えると、試走での走行をいかに本番で修正できるかがカギとなる競技でもあります。



 井の中の蛙大海を知る


筆者もこの大会を二輪部門、四輪部門どちらも出場させてもらったのですが、全国からその有志が集まるこの大会はまさに『大海』であり、自分は『井の中の蛙』であったかを思い知らされるものでした。



また大会に向けた練習の過程で得た色々な方からの指導、大会の本番1発勝負などは、それこそ自動車学校で学ぶ教習生と同じ境遇であることに気づかされるのです。



そしてこの大会を通じて知り合った全国の同業者の仲間達とは現在も繋がっており、大会の目的でもあった『教習所間の情報交換と交流』の恩恵もたくさん受けて日々の業務をこなしております。



コロナ禍より中止されているこの大会ですが、是非また再開し、多くの志を持った教習指導員同士の熱き戦いをまた観たいものです。



※ 掲載写真はホンダ技研工業の全国自動車教習所安全運転競技大会ページより引用させて頂きました。