スカイ島紀行 その8〜 フローラ・マクドナルド | スコットランドは今日も曇り空

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気がついたら在英30年。今さら周りに言えない憂さをさらすブログ。

スコットランドの歴史には

あまり女性が出てこない。

 

 

もちろん有名なメアリ女王はいるけど、

あとは、う〜ん?

 

 

 

 

そんな中で、

プリンセスでも貴族でもない

普通の女性

フローラ・マクドナルドは

貴重な存在です。

 

 

 

フローラはスカイ島のある

ヘブリディーズ諸島で

生まれ育ちました。

 

 

 

ちゃんと教育も受けた

マクドナルド一族の

若いレディー。

頭も良く機転のきく女性だと

記録されています。

 

 

フローラのポートレート

 

 

 

そんなフローラが

ジャコバイトの反乱に巻き込まれたのは、

幼馴染みの頼みから。

(ベルばらのアンドレあたりを想像してね)

 

 

 

首に多額の賞金をかけられた

チャーリー王子は

(若い、優男、イケメン)

カローデンの最後の戦いから

半年もの間、

スコットランドの峡谷やムーアの中を

忠実な支持者たちに

守られて逃げ隠れていました。

 

 

 

ボニー・プリンスチャーリー

 

 

 

だか季節は厳しい冬にさしかかり、

野外に隠れるのにも

限度がある。

政府軍は一向に追手を緩める事なく

このままでは王子が捕まるのも

時間の問題でした。

 

 

 

唯一の策は

スカイ島へ王子を逃す事。

そこからは強大なマクラウド部族の

庇護を受けて

安全にフランスへと渡れます。

 

 

 

 

そのためには、

何としても政府軍の

包囲網をすり抜けて

島へ渡らなければならない。

 

 

そこでスカイ島の

有力者の娘であり、

コネもあるフローラに

声がかかったのです。

時にフローラ、23歳。

 

 

ただ港では、若い男の出入りに

監視の目が光っている。

どうすればと頭を抱えている

男たちに、フローラが

言った一言。

 

 

「女同士なら

誰にも怪しまれないでしょう?

殿下に女装して頂いて、

私の侍女ベティにすれば

役人を騙せます!」

 

 

 

フローラの名案は

早速、実行され

誰に怪しまれることもなく

一行は無事にスカイ島へと

渡ったのです。

 

 

ルンルンOver the sea to Skye 

 

 

インバネス城の前にあるフローラの銅像。愛犬と共にスカイ島の方向を眺めています。ネットより。

 

 

 

そしてマクラウド部族に

安全に匿われたチャーリー王子は

フランスから来た

お迎えの船に乗って

無事に国外逃亡を成し遂げたのです。

 

 

フローラに最後の別れを告げる時、

チャーリーは

命の恩人の手にキスして

 

「マダム、次にお会いする時は

ロンドンの

セント・ジェームズ宮殿で

お目にかかりましょう」

 

と言葉を残し去って行きました。

 

 

めでたし、めでたし。

 

フローラとチャーリー王子の別れのシーン ネットより

 

 

 

 

そんなな訳ないでしょう!

 

 

ロンドン?

まだ王位につけるなんて

戯言言っているの?

 

 

 

自分はちゃっかり

フランスに逃げたけど、

フローラは逮捕されて

ロンドンはロンドンでも

ロンドンタワーに監禁されたんだよ!

 

 

 

アホ王子のおかげで

スコットランドは

フローラ個人のみならず

多大な反乱の尻拭いを

押し付けられて

それから長い間、苦しむのです。

 

 

 

ま、それは、また別の話でキョロキョロ

 

 

 

 

スカイ島の北にあるフローラのお墓

 

 

 

フローラがどうなったかと言うと、

逮捕されても沈黙を守り、

毅然として監禁に甘んじていました。

 

 

その様子に同情が集まり、

ロンドンタワーには

大逆罪の王子を助けた

勇敢な女性を

一目見たいという貴族で

ごった返し!

 

 

今でいうセレブになっちゃった!びっくり

 

 

 

もともと貴族の中には

ジャコバイトのシンパも居たので

フローラには

恩赦がでてお咎め無しになりました。

 

 

 

 

 

 

 

故郷に戻ったフローラは

スカイ島の恋人と結婚して

アメリカはノースカロライナに移住します。

 

 

当時、新大陸に渡った

スコットは沢山おり、

フローラ家族も

成功した生活を築きあげていました。

 

 

しかし、歴史は

スコットたちを独立戦争に巻きこみ、

イギリス王側についたフローラたちは

再び、家も財産も失って

スコットランドへ戻ることになるのです。

 

 

 

 

 

ダンヴィーガン城に身を寄せた

フローラは、

晩年は静かに余生を送ったと

伝えられています。

 

 

 

生涯、チャーリー王子との

逃避行を口にすることはせず、

娘にだけ、

真実の記録を残して

去ったそうです。

享年68歳でした。