2026年5月15日 (金)
対イラン戦争:サウジアラビアはイスラエルを非難し、ネオコンの大御所は敗北を認めている
2026年5月11日
Moon of Alabama
ここ数日の間に、注目すべき記事が二つ発表された。両記事の著者は、ともに、ジョージ・W・ブッシュ政権とイラク戦争に深く関わっていた経験豊富な右翼戦略家で、互いに関連している。
最初の記事はトゥルキ・アル・ファイサルによるものだ。 • トゥルキ・アル・ファイサル王子は、サウジアラビアの主要外国情報機関である総合情報部(GID)で、1977年から2001年にかけて長官を務めた。2002年から2005年7月まで在英国サウジアラビア大使、その後2007年まで在米国サウジアラビア大使を務める。ファイサル国王財団の創設者兼理事、ファイサル王リサーチ・アンド・イスラム研究所(KFCRIS)の会長を務めている。
彼はサウジアラビア建国の父、アブドゥル・アジーズ国王の孫で、ファイサル国王の息子だ。彼はキング・ファイサル財団のイスラム研究センター会長を務めている。
1979年から2001年まで、トゥルキ王子はサウジアラビアの情報機関アル・ムハバラート・アル・アンマ長官を務め、2001年9月1日に辞任した。15人のサウジアラビア国民がアメリカの民間航空機をハイジャックした9月11日同時多発テロの10日前だった。
その後、トゥルキ王子はセントジェームズ宮廷およびアメリカ合衆国大使を務めた。
ファイサルは、土曜日に準国営メディアのアラブ・ニュースに掲載された論説記事で、アメリカによる対イラン戦争の背後にある重大な陰謀を明らかにした。
サウジアラビアはイランに不満を抱いているものの、湾岸地域全体が現在陥っている混乱の真の原因はイランではないと認めている。
イランなどがサウジアラビア王国を破滅の渦に引きずり込もうとした時、サウジアラビア指導者たちは、国民の生命と財産を守るため、隣国に引き起こされる苦痛に耐えることを選んだ。もしサウジアラビア王国が、イランの施設や権益を破壊することで、イランに対して同様の報復措置を取ることを望み、また実際にそうする能力を持っていたら、アラビア湾沿岸、更には王国奥深くにあるサウジアラビアの石油施設や海水淡水化プラントが破壊されるという結果になっていただろう。
もしイスラエルが対イラン戦争を引き起こす計画が成功していたら、この地域は荒廃と破壊に陥っていたはずだ。何千人もの息子や娘が、我々と何の利害関係もない戦いで命を落としていたはずだ。イスラエルはこの地域に自らの意思を押し付け、周辺地域における唯一の勢力として君臨していたはずだ。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の英知と先見の明により、サウジアラビア王国は戦争の惨禍とその壊滅的影響を回避できた。実際、現在パキスタンと共に、サウジアラビア王国は、戦闘の火を消し止め、事態の悪化を防ぎ、平和を求める人々が愛する人々の命と国益の安全について安心できるという希望を与えている。
この論説記事は、サウジアラビアが戦争の拡大を促していると主張していたシオニスト・プロパガンダ担当者に広められた全ての噂を否定している。
三年前の中国による仲介で、イランとサウジアラビア間で政治的合意が成立して以来、両国間で大きな衝突は起きていない。戦争にもかかわらず、サウジアラビアはハッジ(大巡礼)にイランからの巡礼者を歓迎し ている。イランはサウジアラビア国内の米軍施設を攻撃したが、サウジアラビアの主要石油利権への攻撃は控えている。その結果、国営石油会社サウジアラムコは記録的利益を上げている。
サウジアラビアの姿勢は、アメリカが湾岸地域における覇権的役割を失ったことを示す多くの兆候の一つだ。
強硬ネオコンのロバート・ケーガンが、親戦派のアトランティック誌に寄稿した2つ目の論説記事も、この見解を裏付けている。ブッシュ/チェイニー政権を、対イラン戦争へと駆り立てたケーガンは、アメリカがイランとの戦争に敗れたことを認めている。
ロバート・ケーガンは、アメリカ合衆国の歴史家、政治史家、政治評論家。ネオコンの代表的論者。ブルッキングス研究所上席フェロー、ジョージタウン大学招聘教授。専門分野はアメリカ近代政治史、特にアメリカの安全保障問題と外交政策に関する研究。
イランにおける王手 ― この戦争に敗れた結果をワシントンは覆すことも制御することもできない。(アーカイブ) ―アトランティック
紛争でアメリカが完全敗北を喫し、戦略的損失が修復も無視もできないほどの決定的後退を経験した時代を思い浮かべるのは困難だ。
…
現在の対イラン戦争における敗北は全く異なる性質のものだ。修復も無視もできない。以前の状態に戻ることはなく、被った損害を覆したり克服したりするような最終的なアメリカの勝利もない。ホルムズ海峡は、かつてのように「開かれた」状態にはならない。海峡を支配することにより、イランはこの地域における主要当事者、世界における主要当事者の一人として台頭する。イランの同盟国、中国とロシアの役割は強化され、アメリカの役割は大幅に縮小する。戦争支持者が繰り返し主張してきたように、この紛争はアメリカの力量を示すどころか、頼りにならず、始めたことをやり遂げる能力のないアメリカを露呈した。これは、アメリカの失敗に、同盟諸国や敵国が適応していく中、世界中で連鎖反応を引き起こすだろう。
アメリカにはこのジレンマから抜け出す道がないことをケーガンは認めている。
たとえトランプがイラン「文明」を破壊するという脅迫を実行に移し、更なる爆撃を行ったとしても、イランは政権崩壊前に(そもそも政権が崩壊すると仮定した場合)、多数のミサイルやドローンを発射できる。わずか数回の攻撃が成功するだけで、この地域の石油・ガスインフラは数年、場合によっては数十年にわたり麻痺し、世界とアメリカを長期にわたる経済危機に陥れる可能性がある。たとえトランプが撤退戦略の一環としてイランを爆撃し、強硬姿勢を見せて、撤退を隠蔽しようとしても、このような大惨事を招くリスクなしには実行できない。
これは王手ではないにせよ、それに近い。
ケーガンは代替案として対イラン全面戦争も検討しているが、それは更に悪い道で、より大きな失敗につながる可能性が高いとして切り捨てている。
現在のイラン政権を打倒するため本格的地上戦と海戦を展開し、新政権が樹立されるまでイランを占領する覚悟がアメリカにない限り、また係争中の海峡でタンカーを護衛する軍艦を失うリスクを冒す覚悟がない限り、更に、イランの報復により、地域全体の生産能力に壊滅的な長期的損害が生じることを覚悟しない限り、今撤退するのは最悪の選択肢でないように思えるかもしれない。政治的観点から言えば、トランプ大統領は、より大規模で長期にわたり、費用もかさむにもかかわらず、最終的に失敗に終わる可能性がある戦争を生き延びるより、敗北を乗り切る方が可能性が高いと感じているのかもしれない。
従って、アメリカにとって、敗北はあり得るだけでなく、むしろ可能性が高い。敗北とはこういうことだ。
…
海峡における新たな現状は、地域的にも世界的にも、相対的な力と影響力に大きな変化をもたらす。この地域では、アメリカは張り子の虎だと証明され、湾岸諸国や他のアラブ諸国はイランに迎合せざるを得なくなる。イラン研究者のルーエル・ゲレヒトとレイ・タケイが最近書いたように「湾岸アラブ諸国の経済は、アメリカ覇権という傘の下で築かれてきた。それを奪い、それに伴う航行の自由を奪えば、湾岸諸国は必然的にテヘランに物乞いをすることになる」。
彼らだけではない。湾岸諸国のエネルギーに依存している全ての国は、イランとの間で独自の取り決めを結ばなければならない。他にどんな選択肢があるだろう?
対イラン戦争での敗北は、世界におけるアメリカの立場に、より広範な影響を与えるとケーガンは考えている。
ポスト・アメリカ世界への世界的適応は加速している。かつてアメリカが支配的だった湾岸地域におけるアメリカの地位低下は、数多くの犠牲のほんの始まりに過ぎない。
今週後半、ドナルド・トランプ大統領は中国訪問予定だ。フィナンシャル・タイムズに掲載された今回訪問に関する政権側の事前記事(アーカイブ)は、アメリカは依然、戦争を利用して世界中に圧力をかけられると主張している。
「大統領は圧力をかけると予想している」と、ある米当局者は記者会見で述べた。
トランプ大統領は、中国によるイランとロシアへの支援、具体的には軍民両用部品の提供や潜在的武器輸出について、習近平国家主席との以前の協議を再開すると述べた。
「この協議は今後も続くと予想している。ここ数日の間にアメリカからいくつかの措置、つまり制裁措置が出されたのを目にしたと思うが、それらは確実に協議の一部になる」と当局者は付け加えた。
金曜日、イランが中東で米軍に対する軍事攻撃を行うのを支援する画像や他のサービスを提供したとして、中国の衛星企業三社にアメリカ国務省が制裁を科した。また財務省は、イランが中国から携帯式地対空ミサイル(MANPADS)を輸入するのを支援したとして、YUSHITA (Shanghai)International Trade Co., Ltdにも制裁を科した。
戦争に敗れた以上、制裁ゲームも終わったのだということをトランプは未だに認識していない。中国であれ、他のどの国であれ、湾岸地域で失った覇権的地位をアメリカが取り戻すのを支援することは決して利益にならない。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/war-on-iran-saudis-blame-israel-neocon-grandee-concedes-defeat.html
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