ザンビアの農民が中国鉱山企業を有害物質流出で提訴 アフリカに押し寄せる集団訴訟の波
六辻彰二
国際政治学者
アフリカ南部ザンビアでは昨年9月、中国企業シノメタルに対する集団訴訟が始まった。
きっかけは昨年2月の銅鉱滓(こうさい)ダム決壊で数百万リットルの酸性廃棄物が河川に流れ込み周辺一帯に流出したことだった。
シノメタルから充分な補償が提示されなかったため、農地が壊滅的ダメージを受けた農家が170人以上集まり、800億ドルの損害賠償を求めて提訴したのだ。
これに対して中国のSNSなどでは「中国に対する西側の誹謗中傷」といった論調が噴出したが、実際には海外の資源企業などへの集団訴訟はこれ以外にも途上国で増えている。
ココがポイント
(前略)住民を代表して(中略)提出された訴状には「高酸性で毒性の高い物質が深刻な環境被害を引き起こした」と記されている。
出典:AFPBB 2025/9/18(木)
(前略)many see as a recurring pattern of unfair treatment(後略)
出典:The China-Global South Project 2025/9/25(木)
(前略)ザンビアKabwe鉛鉱山周辺の住民が、Anglo American South Africaを(中略)提訴した。
出典:JOGMEC金属資源情報 2020/10/23(金)
しかし訴訟費用を賄う体力はないというとき、訴訟ファンドから資金提供を受ければ法的手段を行使する可能性が出てくる。
出典:SOMPOインスティチュート・プラス 2020/2/20(木)
エキスパートの補足・見解
ザンビアはアフリカ屈指の銅の産出地で、中国企業の操業による環境破壊などはしばしば問題になってきた。
しかし、最近ではシノメタルのケースのように住民自身が訴訟に踏み切ることが増えており、その対象は中国企業だけではない。
例えば昨年11月、南アフリカ最高裁ではザンビアの小都市カブウェの住民がアングロ・アメリカン南アフリカを訴えた裁判の控訴審が始まった。
アングロ・アメリカンは英国の巨大資源企業で、植民地時代の20世紀初頭から1974年までザンビアで操業していたが、当時の廃液垂れ流しで土壌の亜鉛濃度が異常に高まり、次世代にも深刻な健康被害が出ていると約14万人が被害を訴えたのだ。
英国ではこの問題が議会でも取り上げられた。
集団訴訟が増加する背景には権利意識の高まりに加えて、訴訟ファイナンスの発達がある。大企業相手に多額の資金が必要となる訴訟で、ファンド会社が費用を負担し、勝訴した場合にリターンを受け取るもので、集団訴訟のビジネス化ともいえる。
これを倫理的に疑問視する意見もあるが、資金調達によって急速に拡大する集団訴訟の波は欧米大企業だけでなく、各地で大規模に資源開発を進める中国企業にとっても大きな脅威になるとみられる。
