トランプ大統領とディープ・ステイトとの間の対立の核心は階級的矛盾

<記事原文 寺島先生推薦>
The Deep State against Donald Trump
筆者:エドゥアルド・バスコ(Eduardo Vasco)
出典:StrategicCulture Foundation 2024年7月7日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年7月26日



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「トランプ氏には、最高裁にMAGA*に好意的な多数派がおり、連邦下級裁判所や連邦議会、州議会、知事公邸にも多数の支持者がおり、大規模で、カルト的な忠実心を持った、重武装した政治的支持者の基盤もあるので、彼はかなりの余裕があり、支持者も多い」と、6月10日に掲載されたフォーリン・アフェアーズ誌の記事は述べている。ジョン・D・マイケルズの署名記事だ。


*トランプ氏がよく使う言葉。Make America Great Again

筆者が恐れているのは
トランプ主義が独自のディープ・ステートを構築しており、それがトランプ氏の政権復帰とともに強化される可能性があることだ。西洋の知識人の伝統的な分析家は、北米や西ヨーロッパに属さない国々を、極端に官僚的で、腐敗した、非民主的な政権として特徴づける傾向がある。これらの国々では内部の陰謀が権力闘争の一形態として支配している、と。しかし、実際のところは、この特徴付けは、ここ数十年の米国にも完全に適合している。米国は、世界最大かつ最も強力な国家官僚機構の1つを持っているLGBTや黒人に対する懸念は忘れてほしい。アメリカで権力を支配している人々は、これらの人々の権利や権利の欠如を気にしない。彼らに関心があるのは、もっと根源的なこと、すなわち、政治体制の厳格な管理を維持することなのだ。

そして、
トランプ氏は、その支配に対する危険な脅威になっている。トランプ氏は大統領職に権力を集中させる傾向があり、諜報機関や国防機関に対する介入と統制の権限が大きくなる。彼は最初の任期の過ちから学び、今では信頼できる人々だけを重要な地位に配置するつもりだ―そして、彼が政府の主要分野のトップのほとんどを交代させる可能性がある。3月20日にリサ・ブルックス*が掲載した別のフォーリン・アフェアーズの記事は、トランプ派のプロパガンダと共和党議員がリベラル派とされる軍将校の昇進に対する拒否権行使することによりアメリカ軍の政治化が進むことに懸念を表明している。だから、ペンタゴンの幹部たちも、トランプが政府に戻るという考えを嫌っている。そして、ペンタゴンの将校は、常に、武器製造会社の階級の中から選ばれているが、彼らは、米国がアジアやヨーロッパから軍事基地や軍隊を撤退させる可能性を懸念している。なぜなら、彼らの利益は、まさにアメリカ政府やその属国に対する物資の販売から来ているのだから。CIAや国家安全保障会議のようなディープ・ステートの他の組織も、軍事産業の幹部や、アメリカ合州国と世界の大規模な技術的、金融的独占をまとめているシリコンバレーやウオール街の幹部を送り込んでいる。トランプ氏はまた、ジョン・ケネディ暗殺に関する秘密ファイルを開くこともできると宣言しており、それによって、CIAと、その殺害に関与している可能性が高いディープ・ステートの腐敗についてもう少し明らかになるだろう。

*歴史家、作家。マサチューセッツ州のアマースト大学教授

トランプは、本当のアメリカ政府であるディープ・ステートに対して前例のない再構成を行なう可能性がある。彼は米国帝国主義の最悪の本能にたてつこうとしているのだ

トランプとアメリカを動かしている機構との間の対立の核心は、階級の矛盾だ。この場合は、ブルジョアジー、中産階級、プロレタリアート階級という周縁化された層と、帝国主義の高級ブルジョアジーとの間の矛盾である。

ジェフリー・ソネンフェルド氏は、アメリカの著名な上流社会学者で、アメリカ最大の資本家たちと日々仕事をしているが、この矛盾を報道記事で強調している。ニューヨーク・タイムズ紙で、彼は、
フォーチュン誌の上位100人の億万長者の誰ひとりも、トランプの大統領選挙キャンペーンに1ペニーも寄付していないことを強調した。2016年に寄付をしたCEOはゼロで、2020年でもトップ100人のうち2人しか寄付しなかったのだ。さらに、2016年にトランプ氏に資金を提供した多くの実業家たちは彼の政権時代に船を放棄した。

共和党のリーダー(トランプ氏)を支持する金融業者も数人いるが、「実際には、これらの金融業者はビジネス界のごく一部を代表しているだけだ」とソネンフェルド氏はタイム誌に記している。


この情報と主要マスコミのキャンペーンから、アメリカの上流ブルジョアジーがトランプ氏を支持していないことは明らかだ。ではしかし、誰が彼を支持しているのだろうか?

トランプの政治的立場を見てほしい。
彼は保護主義者で、孤立主義者で、反移民だ。彼はグローバリゼーション(世界一極化)を攻撃し、アメリカの国内情勢を処理し、他国の問題への介入を減らすことを約束しているが、それは世界の帝国主義体制にとって深刻な打撃を意味する。世界中でこの体制に対する反乱が起こっているときには、その深刻さはなおさらである。

移民の入国を妨害することは米国労働者の賃金率を上昇させるだろう。米国に入国する移民が非常に低い賃金を受け取ることを受け入れ、米国労働者の平均給与を低下させるからだ。だからこそ、大企業の人々は、移民との競争で低賃金を維持するために、トランプの移民政策を攻撃する多くの労働者がトランプ氏を支持するのは、当然のことながら賃金の向上を望んでいるからだ。


トランプ主義の内部には左翼さえ存在する。イタリアのファシズムやドイツのナチズムに存在したのと同じだ。これはまさに、何十年にもわたる新自由主義、産業空洞化、伝統的な民主党と共和党の政府から激しく苦しめられてきた、政治的意識がほとんどない無秩序な労働者の影響によるものだ。NYT紙とタイム紙の両記事で、ソネンフェルド氏は、トランプの経済政策は、共和党の伝統的な立場よりも社会主義左派の経済政策にはるかに似ており、「そして、しばしばバイデン政権よりもはるかに進歩的である」と述べている。

大企業は、全国民から、そして両党のメンバーの間でさえ、非常に不人気なのだ。だからバイデンですら、彼らを批判し、彼らが嫌う措置を取らざるを得なかった。米国内で大きな力を持つ部門でさえ経済における独占企業の支配の影響を受けた。独占企業が権力の周辺に留まっていた実業家の競争を抑制したからだ。実際、そのような少数派が統治すれば、社会の裕福な階層でさえも害を受けることになるのだ。そして、彼らは自分たちの生活やビジネス活動がNSAにスパイされたり、外国の、主に中国の生産者との競争によって顧客を失なわされ、破産させられそうになったりすることを好まなかった。

近年、米国は、電子機器、ビデオゲーム、機械、繊維、化学品、金属など、いくつかの分野で中国に依存するようになった。つまり、この問題は主に製造された製品に関連している。悪名高いトランプ氏の支持者であるイーロン・マスク氏の企業は、中国のインターネットおよび電気自動車会社の競争相手だ。多数の企業やビジネスマンを包含するこの巨大なビジネス分野全体は、トランプ氏が米国は中国や他の国々との競争から身を守る必要があると言ったときに同意する。そのため、彼らはバイデン政権に対して、高い関税と制裁を課し、投資を制御および禁止し、Tik Tokを禁止する寸前まで、歴史上最も反中国になるように大きな圧力をかけた。地政学的な領域では、バイデン政権はおそらく中国に対して最も攻撃的であり、台湾をめぐる米国との戦争の脅威にさらされている。多くの人は、
アメリカの主要な地政学的敵国は、テロリズム、イランやロシアではなく、むしろ中国だと理解している。中国のアメリカ国内市場への浸透により、産業、技術、政治スパイ活動と、アメリカの覇権に挑戦する権力の経済的強化が生み出されている、という非難の声が噴出している。

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