イスラエルは戦争でハマスには勝てない。ではこの先どうなる?

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel can’t defeat Hamas in battle, so what’s next?

ガザの戦争が引き起こすことは、民間人の惨状だけ。その状況を米国はいつでも止めることが可能なのに・・・
筆者:ロバート・インラケシュ(Robert Inlakesh)
政治分析家、ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画監督。パレスチナ自治区での取材・滞在経験を持ち、現在はクッズ・ニュースに所属。YouTube上のドキュメンタリー番組「Steal of the Century:Trump's Palestine-Israel Catastrophe」の監督。ツイッターは @falasteen47
出典:RT  2023年12月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月10日




2023年11月16日、イスラエル軍が公開した資料写真イスラエルとパレスチナの過激派組織ハマスとの戦闘が続く中、ガザ地区での軍事作戦中の部隊の様子。@イスラエル軍 / AFP


 イスラエルとガザのパレスチナ武装勢力との間の戦争が7日間小康状態を保った後、敵対行為の再開が米国政府から再び許可された。同盟国のイスラエルを軍事的勝利に導けなかった米国は、戦況の危険な激化を容認し、これ以上の市民の被害を防ぐ平和的解決策を拒否している。

 アントニー・ブリンケン米国務長官がパレスチナ/イスラエルから去ったわずか数分後、ガザでの戦争が再開され、パレスチナの民間生活基盤施設に対する大規模な空爆が行われ、200人近い民間人が死亡した。

ホワイトハウスのジョン・カービー報道官は、イスラエルの「ハマスの後を追う権利と責任」を引き続き支持すると発表したが、その目的は不明だ。

エフード・バラック元イスラエル首相も、ハマスの崩壊は程遠いことを認めている。

 

ではいったい、この戦争をおこなう意味はどこにあるというのだろうか?

 パレスチナ人2万人以上が死亡したと思われる6週間の戦争の後、イスラエル軍は、包囲された沿岸の飛び地にいるハマスと他のパレスチナ武装集団の軍事力に大きな打撃を与えたという証拠を何一つ提示できていない。イスラエルは、ハマスがガザ北部の主要な病院を基地や指揮統制センターとして使用していると主張し、その病院への侵入を強行したが、イスラエル国防軍(IDF)が提出した証拠は、こうした主張を裏付けるものではなかった。米国政府は、シファ病院に司令塔が存在するという考えを支持し、イスラエル軍が病院敷地内に入った際には、そこで発見したとする武器と空洞のトンネルを提示した。一般に公開されたこのような画像はイスラエル軍によって管理・編集されたものだが、もし独自に検証されれば、武装勢力の存在を示す証拠となりうる。が、指揮統制センターや指令拠点があったという証拠はまだ示されていない。他の病院でも気をつけるべきものはほとんど発見されておらず、イスラエルの主張を裏付ける確かな情報を持っているというアメリカの主張は、ジョー・バイデン米大統領が「テロリストが子どもの首をはねている写真を確認した」と発言し、ホワイトハウスが後に撤回したことを考えれば、疑わしいものである。


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 この戦争が始まったとき、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「ハマス粉砕」を宣言したし、米国も公式にその目的を支持した。しかし、ハマスがイスラエルに対して史上最大の打撃を与えただけでなく、イスラエル軍の攻撃からガザを防衛した無数の成功事例が文書として残っている。いまや全世界でパレスチナ国家の樹立について語られている。パレスチナ国家の樹立に関しては、アラブ諸国とイスラエルとの間の無条件の国交正常化協定が優先され、戦前は完全に放棄されていた構想だ。

 

これに加えて、イスラエルによるガザ侵攻戦争の結果生じた状況のひとつとして考えられることは、占領地全域でハマスへの支持が飛躍的に高まったことだ。さらに、中東やイスラム世界では、ハマスの過激派は英雄視されていて、今回の行動は、勇敢な民族的抵抗として広く見られている。

 バイデン政権が中東政策の柱としていたサウジとイスラエルの国交正常化交渉は、サウジアラビア政府がイラン政府に接近している現在、水泡に帰している

 

イスラエルの世論調査の数値によれば、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエル国民の4%からしか信頼されておらず、最も信頼されている人物はイスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官である、という。

しかし、イスラエル国民から信頼されているハガリ報道官は、「リストの男」と揶揄され、ネットをざわつかせる人物に成り下がってしまった。それは同報道官が示した動画の中で、(病院の壁に貼られてあった)アラビア語で書かれたありふれたカレンダーを「テロリストのリスト」だと主張したからだ。同報道官が「リスト」だと言い張ったカレンダーを映した動画は、ハマスがランティシ小児病院で人質をとっている証拠を示すものになるはずだった。

 少なくとも10カ国がイスラエルから大使を引き揚げるか、イスラエルとの関係を停止した。ロンドンやワシントンDCのような首都では、これまで欧米で起きたことのない大規模な親パレスチナデモが続いている。このような状況は、ジョー・バイデンへの支持率の大幅な低下と相まって、米国が支援するガザでの戦争に災いをもたらすものだ。


 ホワイトハウスは、ガザ南部への侵攻を計画するイスラエル軍に一定の制限を加えていると主張するが、同時にイスラエルの行動を無条件で支持している米国政府は、10月7日以降に起こったことに対していかなる責任も取らず、自分たちがついた嘘に対する謝罪もなく、戦略の変更もなく、ハマスの攻撃を容易にしたガザの状況を作り上げた米国側の責任も認めていない

 今、本当に問われているのは以下のことだ。

 

これから私たちはどこへ向かうのか?イスラエルはガザで無目的に戦い、何千人ものパレスチナ市民を殺し続け、ハマス敗北の兆しは見えず、国連のマーティン・グリフィス救援総長が「過去最悪」と評する人道状況はさらに悪化している。これらの要素をすべて深刻に受け止める一方で、イスラエルによるガザ攻撃が激化した場合、地域戦争が勃発する恐れもある。レバノンのヒズボラは現在、レバノン国境沿いで頻繁に戦闘を繰り広げており、イスラエルの軍事目標への攻撃範囲を拡大している。


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 イスラエルとハマスの間で行われた捕虜交換は、このパレスチナ組織と外交的な話し合いができる証となった。この交換はまた、イスラエルが何の罪もない女性や子どもたちを拘束していることを世界に知らしめることにもなった。解放されたイスラエルの民間人捕虜の大半は、解放時にハマスの戦闘員と笑顔で握手し、感謝の言葉を述べているところを撮影されているが、その体験について報道機関に直接語ることは封じられている。一方、パレスチナの女性や子どもたちは、イスラエルの獄吏の手によって受けた虐待、拷問、屈辱を語った。このような状況はイスラエル政府にとって、自国がハマスよりも罪が重く見せてしまうという、新たな広報上の大失敗となった

 米国政府は戦争の運転席に座っている。いつでも紛争を終結させる力を持ちながら、この惨事を長引かせ続けている。戦闘行為の7日間の一時停止中、イスラエルの勝利を可能にするような有利な変化は何もなかった。ガザでの戦争に軍事的解決はあり得ない。米国は、パレスチナの人々に正義と自由が与えられるまで、この紛争は決して終わらないことを認識しなければならない。

75年間、西側諸国の政府はパレスチナ人の苦しみを無視してきた。西側諸国は決して客観的な平和の仲介者ではなかった。暴力は暴力を生み、憎しみは憎しみを生む。パレスチナ人を単に殺害して服従させることは不可能だ。仮にハマスが敗北したとしても、彼らの仇を討ち、国家樹立のために戦う組織が今後さらに現れるだろう。国際社会が団結すれば、この連鎖を断ち切ることは可能だが、それには勇気が必要だ。

 

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