プーチンは自分の頭を射抜いた。

<記事原文 寺島先生推薦>
Putin Shoots Himself in the Head

筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ (Paul Craig Roberts)


出典:Paul Craig Robertsブログ 2023年6月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月2日



 プーチン大統領の直近の演説は、絶対やってはいけないものだった。彼の無思慮な演説— https://sputnikglobe.com/20230626/putin-mutineers-wanted-russian-soldiers-to-kill-each-other-kiev-wanted-the-same—-1111480880.htmlにより、彼の立ち位置が弱体化し挑戦を受ける立場になった、そして米国がウクライナで勝利できるというネオコンの主張にプーチンは同調したことになる。ウクライナ軍が事実上敗北した中で、「反乱」という偽情報はネオコンにとって紛争を継続させるために必要なものになる。スコット・リッターは、そのためにヴィクトリア・ヌーランドが「クーデター」を引き起こした可能性があると考えている。


 たとえプーチン大統領の言ったことが真実であったとしても(実際にはそうではないが)、彼はそれを口にすべきではなかった。彼は米国ネオコンの宣伝を事実だと受け止めてしまったその結果、ロシアに対する挑発がさらに増えるだろう。これらの挑発から生じる危険性は、ネオコンがそれをあれこれこねくり回し、手が付けられない状態にする前に、ロシアが十分な力を行使して紛争を終結させることがますます重要となる。

 明らかに、プーチン大統領の補佐官たちは三流だ。内部不一致によってプーチンの立場は弱まったというネオコンの宣伝を事実だと受け止めるのではなく、プーチンはプリゴジンの抗議で地上部隊とモスクワの軍幹部の関係の悪化に目が向いたし、そしてモスクワのために戦闘を行う兵士たちが十分な力を行使して紛争を終結させたがっている願望に目が向いた、と述べるべきだった。ワグナー部隊は、進展のない戦争や見通しのない終結のために死ぬことにうんざりしているのだ


 しかし、これではプリゴジンではなくプーチンが間違っていると言うことになるだろう。そして彼の補佐官たちはプーチンを守ろうとするつもりで、実際には彼を危険にさらし、ネオコンが描くようにプーチンの弱さと内部対立が事実だと受け入れることになってしまった

 ロシアの軍幹部は、プリゴジンがワグナー部隊を彼らの指揮下に置くことを拒否したため、彼を排除しようとしてきた。軍幹部は弾薬の不足や他の方法で彼に報復してきた。彼らがミサイルで彼のキャンプを攻撃し、彼の怒りを引き出すためにそれを行った可能性もある。何が起こったにせよ、軍幹部は彼を排除することに成功した。
まさに民主党とCIAがトランプ大統領の国家安全保障担当補佐官であるフリン将軍を排除したように、だ



 おそらくプリゴジンはプーチン大統領の注意を引くことに成功した。が、プーチン大統領は「武装反乱」「クーデター」という話があまりにも確定的で避けて通れないと考えたのかもしれない。もしプーチン大統領が先週土曜日(6月24日)の出来事を重大な反逆行為と見なしているのであれ、なぜ彼はプリゴジンやワグナーの兵士たちに許しを与えたのだろうか?

 ワグナー部隊に脅威を感じる指導者(プーチン)は、ワグナーを軍に組み入れるのだろうか、それとも解散させて訴追するのだろうか?


 これはクーデターではなかったという説明を私は既にしている: https://www.paulcraigroberts.org/2023/06/25/the-russian-coup-that-wasnt-2/

 エフゲニー・プリゴジンは、プーチンと長い間密接な同盟関係にある。彼はプーチンの要請により、ワグナー部隊を結成した。この部隊は、ロシア軍とは別個に形成されているが、国防省によって装備され、ロシアの軍事基地で訓練を受けていた。プーチンは、この部隊を使って、否認されそうな軍事作戦を行うために必要だったのではないかという憶測もある。この憶測にあまり意味がないのは、ワグナー部隊の給料はロシアが支払っており、この部隊はロシアのために活動するロシアの私設軍事部隊だからだ。それを否定する余地は皆無だ。
https://www.rt.com/russia/578797-wagner-fully-funded-russia-putin/

 プーチンがなぜプリゴジンにワグナー部隊を作らせたのかはわからない。ワグナー部隊はフランス外人部隊のような存在で、徴兵制の代替手段だと私は考えている。

 もしも軍幹部に変化が現れ、最終的にプーチンが紛争を終結させるための武力行使を認めるならば、プリゴジンがプーチン大統領の注意を引くのに成功したことが分かるだろう。
もしプーチン大統領が紛争を終結させないと、核戦争が起こる可能性が高くなる。

 ダグラス・マクレガー大佐は私が実際考えているのと同じように今の状況を見ている。(ただ)自信がないのは、マクレガーが次の2点をどれほど認識しているか、だ:


① ロシアが内戦と重大な内部武力紛争の危機に瀕しているとプーチン大統領が宣言することで、彼が西側で自らに与えたダメージ、
② ワグナー司令官(プリゴジン)とその部隊をロシア人同士に殺し合わせたい裏切り者として非難することで、彼がロシア内部で自らに与えたダメージ。

以下の動画は、マクレガー大佐の説明だけでなく、先週土曜日(6月24日)にロストフ市に到着したプリゴジンと彼の兵士たちに対するロストフ市のロシア人の熱狂と高い評価を示すビデオ映像も含まれており、貴重なものだ。ロシア人はワグナー部隊を誇りに思っており、それがプーチン大統領によって非難されたことは、おそらくプリゴジンよりもプーチン大統領にとってより大きなダメージを与えただろう。


 その動画には、ブリンケン国務長官の、プーチンが自国民から拒絶されていると主張する映像や、バイデン大統領の海軍提督がウクライナへのさらなる武器提供を約束する映像も含まれている。明らかに、偽クーデターに対するワシントンの反応は、私が説明したとおりになっている。返す返す残念なのは、プーチンがその罠に飛び込むほど馬鹿正直だったということだ。

 戦争を迅速に終結させたいと望むのは、プリゴジンと彼の兵士だけではない。それはロシアの人々が求めていることだ。彼らにとっての勝利は、彼らの主権と能力の表明として重要なのだ。
ロシアを無力に見せてしまうプーチンの到達点のない戦争は弁明のしようがないプーチン大統領が達成したのは、NATOとアメリカの関与を巻き込んで紛争を大きく広げたことだけ。ロシア人は、何の進展ももたらさないことのために命を落としている。意味のない死だ。

 そう、ロシアの冬季攻勢はなかった。その言い訳は、地面が凍らなかったため、戦車、砲兵、兵舎の車列が泥にはまらないようにすることができなかったから、だった。今はもう7月に近づいているが、まだ夏季攻勢はない。もしプーチンが自らの戦争を放棄し続けるなら、アメリカとNATOは再びウクライナ軍を作り上げる時間を持つことになるだろう。おそらくポーランドの兵士を含め、CIAのジハード軍のいずれかを使うかもしれない


 プーチン大統領は、軍幹部に譲歩し、ワグナー部隊を分割し、ロシア軍に統合することで、戦闘効果を損ねている。ロシア兵士たちはワグナー部隊のような成功を収めていないので嫉妬するだろう。ワグナー部隊は年長で経験豊富な兵士であり、嫌味な発言を許さない。今回の動きはそれほどうまくいかないかもしれない。そしてワグナー部隊の戦闘能力は一体感の喪失によって損なわれるかもしれない。事実上、ワグナー部隊は軍規模の特殊部隊だ。その解体は西側にとって大きな勝利となるだろう。

 ワグナー部隊が抗議として噴出した不満を理解するのはとても簡単だ。最高司令官の責務は戦争を迅速かつ勝利に導くことなのだ。プーチン大統領はその責任を果たしていない。


 「武装蜂起」という偽情報が出てきたのは、プーチン大統領がやるべきことをやっていないからだ。彼はプリゴジンと将軍たちとの間にくすぶっていた対立に対処することせず、兵士たちや国に終わりのない戦争を突きつけ、ロシア人の士気を下げた。もしロシアが惨めなウクライナに勝つことができないのなら、どうやってロシアは西側に立ち向かうことができるのか?

 ロシアのメディアと西側のメディアが偽ニュースで見解が一致し、それが確固としたものになっているという事実は、今回の紛争の真実の理解が遠のき、結果として世界全体に悪影響を及ぼす爆発の可能性を最大限に高めている。


https://www.youtube.com/watch?v=0zRF9FGRr9s

更新:2023年6月27日10時30分


 アンドリュー・コリブコは、先週土曜日(6月24日)の「武装蜂起」についてのプリゴジンの解釈を示し、それは真実を捻じ曲げたものだと述べている。しかし、私にはプリゴジンの説明が妥当に思える。要はこうなのだプリゴジンは、軍幹部が彼に陰謀を巡らしていることを知った。それは事実であり、彼らは7月1日にワグナー部隊を解散または乗っ取るように画策していたのだ。プリゴジンはこれをロシアの主要な戦闘部隊の死と見なした。「モスクワ行進」は単なる抗議行動に過ぎなかった。血の流れる結果になることが明らかになると、彼は行進を中止したhttps://korybko.substack.com/p/prigozhins-first-audio-message-since

 プリゴジンの説明が半分しか正しくないとしても、プーチンの説明はCNNやアメリカの国務長官ブリンケンの説明と同様に間違っている。公式の説明がロシアと西側の両方で確固としている状況では、プリゴジンの説明に耳が傾けられることも、考慮されることもないだろう。


 私は、プリゴジンの主張は絶対正しいと思う。ロシア政府と軍はウクライナでの戦争をだれも満足させないやり方で行っており、それが世界を核対決の道へと導いている。