「プーチンは西側を読み誤った。彼が気づかなければハルマゲドンは近い」(P.C.ロバーツ)

<記事原文 寺島先生推薦>

プーチンは西側を見誤っている。(そして)もし彼がすぐに目を覚まさなければ、ハルマゲドンは我々の上にある。文字

ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)へのインタビュー7

出典:グローバル・リサーチ(Global Research)

2022年12月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月17日 (管理人:誤って削除したため1月30日付けで再掲載しました。)


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 マイク・ホイットニー:あなたの考えだと、プーチンは戦争を早く終わらせるために、最初からもっと強力に軍事力を行使すべきだった、ということですね。それはあなたの意見として間違いありませんか? そしてあなたの意見がそうなら、終わりの見えないこの紛争を長引かせることの不都合な点は何だと思われますか?

 ポール・クレイグ・ロバーツ:ええ、あなたは私の立場を正確に述べてくれました。しかし、CNNを見たり、NPR*を聞いたり、ニューヨーク・タイムズを読んだりしている、洗脳された多くの人々にとって、私の立ち位置は「非アメリカ的」に見えるかもしれませんので、私の答えを述べる前に、私の背景を少し説明しましょう。 *米国公共ラジオ放送

 私は、20世紀の冷戦にさまざまな形で関わってきました:


① ウォールストリートジャーナルの編集者として、
② 当時、ジョージタウン大学の一部門であった戦略国際問題研究センターの寄附講座教授として。同僚には、国家安全保障顧問兼国務長官のヘンリー・キッシンジャー、国家安全保障顧問のズビグニュー・ブレジンスキー、そしてバージニア大学大学院で私の指導教授の一人だった国防長官兼CIA長官のジェームズ・シュレジンジャーがいました。
③ 冷戦時代の「現在の危険に関する委員会」のメンバーとして。
そして、
レーガン大統領の冷戦終結計画に対するCIAの反対について調査する権限を持つ大統領秘密委員会のメンバーとして。

 このような経歴を持つ私が、ロシアのプーチン大統領がアメリカの覇権を否定したことについて客観的な立場をとったとき、「PropOrNot」(適切か否か)というウェブサイトで「ロシアのカモ/スパイ」というレッテルを貼られていることに驚きました。このサイトは、アメリカ国務省、全米民主化基金、あるいはCIAそのものが資金を出した可能性があります。私がレーガン大統領の冷戦終結を助け、それによってCIAの予算と権限を縮小させた昔の恨みを忘れてはいなかったのですね。今でもCIAの私への行動はその真意を測りかねています。CIAは私を招いてCIAで演説させたのです。私は演説をしました。CIAの推論がなぜ間違っているのかの説明もしました。


 しかし、私の考えでは、最後は核のハルマゲドンに終わりかねない現在のゲームにおいて、プーチンは最も誠実なプレーヤーでありおそらく最もお人好しなプレーヤーです。私の目的は、核のハルマゲドンを防ぐことであり、どちらかの側につくことではありません。レーガン大統領が「あの忌まわしい核兵器」を憎み、「目的は冷戦に勝つことではなく、それを終わらせることだ」と指示したことをよく覚えています。

 さて、マイクの質問ですが、これは的を射ています。プーチンを理解するためには、おそらく、生活、つまり、西側諸国がソ連に生活をどのように紹介したか、を思い出す必要があるでしょう。そして、ソ連に向けたアメリカの放送では、通りには金が敷き詰められ、食品市場には考えられる限りの美味なものがある西側の生活の自由を紹介しています。

 そのため、全員とは言わないまでも、多くのソ連人の心の中に、ロシア人のいる地獄に比べれば、西側世界の生活は天国であるという思いが生まれたのかもしれません。1961年、ウズベキスタンでバスに乗っていた時、肉の配達トラックが現れたのを覚えています。すべての車がそのトラックに続きました。配達店にはすでに数ブロックの長蛇の列ができていました。そんな光景をアメリカのスーパーマーケットの様子と比較すれば、西側の優位性は際立っています。ロシア人の西側への憧れがプーチンの気持ちを抑制していたことはほぼ間違いありません。プーチン自身、当時のアメリカとソ連の生活の違いに影響を受けているのです。

 プーチンはすぐれた指導者であり人間的です。たぶん人間的すぎるのです。彼が直面している悪に対しては。
プーチンはやりすぎではなく、やりなさすぎという私の立ち位置を見る一つの方法は、イギリスのチェンバレン首相が挑発に次ぐ挑発を受け入れてヒトラーを奨励したと非難された第二次世界大戦の時代を思い出すことです。私自身は、この歴史は誤りだと考えていますが、今でもそれが正しかったと考えている人は多いのです。プーチンは、いろいろな挑発をそのままにしています。実力行使はしないが、レッドライン(譲れない一線)を宣言しているにもかかわらず、です。その結果、彼の敷いたレッドラインはだれも信じていません。ここに一つの報告があります。

 RT、12月10日の記事です:
「米国はウクライナに、ロシア領内の標的に対する長距離攻撃を許可したと、タイムズ紙が情報筋として、12月8日(金)に報じた。このような攻撃が紛争をエスカレートさせることへの懸念を薄れさせ、国防総省は、この問題に対する姿勢を変えたようだ」と報じています。

 言い換えれば、プーチンは何もしないことで、ワシントンとそのヨーロッパの傀儡国家に、プーチンの言うことは本心ではなく、さらにひどい挑発行為でも際限なく受け入れる、と確信させています。それは制裁からウクライナへの西側の資金援助、武器供給、訓練、標的情報、ロシア国内を攻撃できるミサイルの提供、クリミア大橋への攻撃、ノルトストリーム・パイプラインの破壊、ロシア兵捕虜の拷問、ロシア連邦に再編入したウクライナ領ロシアへの攻撃、ロシア国内への攻撃と続いているのです

 ある時点で、挑発がやりすぎてしまう。そのときがSHTF*です。
*Shit hits the fan(うんちが扇風機にあたる)の頭文字をとったもの。「大変な事態になったら」「秘密が公になったら」の意味。

 プーチンの目標は、戦争を回避することでした。したがって、ウクライナにおけるプーチンの限定的な軍事目標は、ドンバスからウクライナ軍を追い出すことであり、それは限定的な作戦でした。ウクライナの戦争基盤をそのままにして、西側から最新兵器を受け取って配備し、プーチンが紛争に投入した非常に限られた兵力をもたせたまま、より防御しやすいラインまでロシアを強制的に撤退させることができるという限定作戦でした。ウクライナの攻勢は、ロシアが敗北する可能性があることを西側に確信させ、この戦争をワシントンの覇権を阻む障害としてのロシアを弱体化させる主要な手段としました。英国の新聞は、クリスマスまでにウクライナ軍がクリミアに到着すると宣言しました。

 プーチンに必要だったのは、ロシアがウクライナの違反したレッドラインを完全に明確にするような素早い勝利でした。ロシアの軍事力を示すことで、すべての挑発行為を止めることができたでしょう退廃的な西側諸国は、熊に手出しをしてはいけないことを学んだことでしょう。それとは真逆なことが起きました。クレムリンは西側諸国を読み誤り、ミンスク協定に8年を費やしたのです。この協定のことをドイツのメルケル元首相は、ロシアが容易に成功できたのに行動を起こさせないための欺瞞だったと述べています。プーチンは今、米国がウクライナ軍を創設する前にドンバスに介入しなかったのは自分のミスだったと私に同意しています。

 マイクの質問に対する私の最後の言葉は、プーチンは西側諸国を読み違えたということです。プーチンは、西側諸国の「指導者」の中に、間違いなくプーチンの利益のためにその役割を果たし、交渉できる合理的な人々がいるとまだ思っています。プーチンはウォルフォウィッツ・ドクトリンを読むべきなのです。プーチンがすぐに目を覚まさなければ、ハルマゲドンがやってきます。ロシアが降伏すれば話は別ですが。

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関連記事:核戦争は「心地よさのために近づきすぎている」。ジョー・バイデン、米国が "非核の脅威に対して核兵器を使用する "と発表

MW:私は、あなたがここで言っていることの多くに同意します。特に、ここです:
「プーチンは何もしないことで、ワシントンとそのヨーロッパの傀儡国家に、自分の言うことは本心ではなく、ますます悪化する挑発行為を際限なく受け入れると確信させています。」


 おっしゃる通りこれは問題です。しかし、それについてプーチンに何ができるか私にはわかりません。例えば、ロシア領内の飛行場に対するドローン攻撃。プーチンはポーランドの補給路を爆撃することで応戦するべきだったのでしょうか。それはフェアな対応に思えますが、NATOの報復やより広範な戦争を起こす危険性もあり、それがロシアの利益にならないことははっきりしています。

 プーチン大統領がまず500,000 人の戦闘部隊を配備し、キエフに向かう途中で多くの都市を平定していたら、おそらくこれらの引火点に直面することはなかったでしょう。しかし、いいですか、この戦争に対するロシアの世論は、当初は複雑でした。そして、ワシントンがロシアを敗北させ、ロシア政府を転覆させ、国境を越えて力を発揮できないほど弱体化させることを決定したことが明らかになるにつれ、はじめて、支持率が上昇したのです。プーチンの支持率が79.4%で、戦争への支持はほぼ100%であるのも、大多数のロシア国民が米国の意図を理解しているからです。私の考えでは、プーチンは戦争を維持するためにこの規模の支持が必要であり、従って、追加出動を延期したことはむしろプーチンに有利にさえ働いています。

 さらに重要なことですが、プーチンがこの対立の中で理性的なプレーヤーであると認識されなければなりません。これは絶対に必要なことです。プーチンは、国際法の範囲内で自制して行動する、慎重かつ合理的な行動者であると見なされなければなりません。そうでなければ、中国やインドなどの継続的な支持を得ることはできないでしょう。多極化した世界秩序を構築するためには、連合体の構築が必要です。それは衝動的で暴力的な行動によって損なわれてしまいます。そのことを忘れてはなりません。つまり、プーチンの "go-slow "アプローチ(あなたの言葉です)は、実は正しい行動だと思うのです。もしプーチンが海へ向かう道でシャーマン戦車*のようにウクライナを蹂躙して縦断していたら、新しい秩序を構築するために必要な制度や経済インフラを整備してくれる重要な同盟国を失っていたでしょうから。
*第2次大戦中アメリカが使った4人乗りで75mm砲を持つ中型戦車。(英辞郎)

 そこで、あなたに質問です。ロシアの勝利とはどのようなものでしょうか?ウクライナ軍をドンバスから追い出すだけなのか、それともロシア軍がドニエプル川以東をすべて掃討するのか?また、ウクライナの西部はどうでしょうか。西側地域が瓦礫と化したとしても、米国とNATOが対ロシア戦争の発射台として使い続けるならどうでしょう?

 私は、この先何年も戦闘が続くシナリオはたくさん想像できますが、外交的解決や休戦で終わるシナリオはほとんどないと思います。あなたはどう思いますか?

 ポール・クレイグ・ロバーツ: マイク、プーチンがなぜウクライナ紛争に対してあのような接近法を取るのか、その理由を、あなたははっきりさせたのだと思います。でも、私はプーチンが自分のアプローチに自信を失いつつあると思います。戦争に接近する際の注意は不可欠です。しかし、戦争が始まると、敵が同盟国とその支持を得る見込みがある場合は特に、迅速に勝利しなければなりません。プーチンが用心し過ぎたせいで、ロシアのドンバス救出を8年遅らせ、その間にワシントンがウクライナ軍を創設して装備し、クリミアのように2014年に簡単に救出できたはずのものが、1年になんなんとする現在の戦争に変わってしまったのです。プーチンが戦争に慎重であったために、ワシントンと西側メディアは、プーチンに不利な物語を作って、状況を支配し、アメリカとNATOは直接参加して戦争を拡大するための十分な時間を得ました。今ではラブロフ外相がそれを認めています。戦争は、ロシア自身への直接攻撃へと拡大しています。

 これらのロシアへの攻撃は、親欧米のロシア人リベラル派をプーチンと連携させるかもしれません。しかし、腐敗した第三世界のアメリカの傀儡国家がロシアを攻撃する能力を持っているということは、ロシアの愛国者にとって受け入れがたいものです。戦闘的ロシア人は、母なるロシアを攻撃する能力がウクライナにあることに、プーチン政権の失敗を見るのです。

 最大の人口を抱える中国は、アメリカが無差別に武力行使するのを目の当たりにしています。そういった武力行使をしても、アメリカ国内外からワシントンに対してどうこうという動きはないのです。中国もインドも弱腰ロシアと同盟を結びたいとは思いません。

 これも申し上げておきます。ワシントンとNATOは、20年に及ぶ、完全に嘘と秘密の意図に基づいた、中東と北アフリカでの戦争で、世論の制約を受けませんでした。かつてロシアの一部だったドンバスをネオナチの迫害から救うために、ロシア国民の支持の欠如をプーチンが恐れる理由は何でしょう?もしプーチンがそれを恐れなければならないとしたら、それは、
ロシアで活動している米国の資金提供によるNGOがロシア人を洗脳していることを容認しているプーチン自身の間違いだということなのです。

 いや、プーチンは報復行動に関与すべきではありません。ポーランド、ドイツ、英国、米国にミサイルを送り込む必要はありません。プーチンがすべきことは、ウクライナのインフラを閉鎖して、たとえ西側の援助があっても、ウクライナが戦争を継続できないようにすることです。プーチンはこれをやり始めていますが、まだ十分ではありません。

 プーチンはドンバス救済のために軍隊を派遣する必要はなかったというのが本当のところです。アメリカの傀儡であるゼレンスキーに1時間の最後通牒を送り、降伏しない場合は通常の精密ミサイルと必要なら空爆でウクライナの電力、水、輸送インフラ全体を停止させ、キエフに特殊部隊を送ってゼレンスキーとアメリカの傀儡政権を公開処刑にする、それだけで良かったのです。

 (そうしていれば)ロシアの大学や公立学校で自国ロシアへの憎悪を教えている劣化した西側かぶれの人間たちへの影響は電撃的なものになったでしょう。ロシアに手を出すことの代償は、ウクライナがクリスマスまでにクリミアに到着するとか言っているバカどもには明らかになったでしょう。NATOは解散していたでしょう。アメリカはすべての制裁を解除し、愚かな戦争狂の新保守主義者たちを黙らせたでしょう。(そうすれば)今頃世界は平和になっていたことでしょう。

 ご質問の内容は、プーチンがいろいろ失敗したあげく、ロシアの勝利とはどのようなものなのか、というものです。まず、ロシアの勝利があるのかどうかはわかりません。プーチンの推論と行動に慎重になっていることは、あなたが説明したように、ロシアの勝利を否定する可能性が高くなりますそれどころか、交渉によって非武装地帯ができ、韓国の未解決紛争のように、紛争がいつ発火するかわからないような状態になってしまう可能性があります。

 一方、プーチンが防衛システムで迎撃できないロシアの極超音速核ミサイルの全面配備を待っていて、ワシントンに続いて核兵器の先制使用に動けば、プーチンは西側諸国を警戒させ、ロシアの軍事力を使って紛争を瞬時に終わらせることができる力を手に入れることになります。

 MW:非常に良い指摘をされていますが、私はやはり、プーチンのゆっくりとしたアプローチが、国内外での国民の支持を集めるのに役立ったと思います。しかし、もちろん、私が間違っている可能性もあります。中国とインドが「弱腰のロシアとは手を組みたくない」というあなたの主張にはどうしても賛成できません。私見では、インド、中国両首脳はプーチンを、おそらく前世紀最大の主権擁護者である聡明で信頼できる政治家として見ていますインドも中国もワシントンの強圧的な外交には飽き飽きしており、世界最大の自決と独立の推進者となった指導者の努力を高く評価しているのでしょう彼らが一番望まないのは、ワシントンの「うなずき」なしには何も決められないヨーロッパの指導者たちのように、おずおずとした下男になることでしょう。(原注:今日の早い時間に、プーチンは、EUの指導者たちは、自分たちがドアマット*のように扱われることを許していると述べた:
*玄関前の靴拭い。「いつも踏みにじられている人」の意。

プーチン:「今日、EUの主要な友人であるアメリカは、ヨーロッパの非工業化に直結する政策を進めています。それに対して、(ヨーロッパは)アメリカという主君に対して一応は文句を言います。時には憤慨しながら、『なぜ、こんなことをするんだ?』という具合に。私は聞きたい。何を期待していたのですか? 相手の靴磨きを甘受する人間に、他にどんなことが起こるのでしょうか?」

 ポール・クレイグ・ロバーツ: マイク、私は、ロシアが中国とインドの友人として選ばれていることに同意します。私が言いたかったのは、中国とインドは、ワシントンの干渉から自分たちを守ってくれる強力なロシアを見たいということです中国とインドは、プーチンが時折見せる迷いやためらいに少し不安を覚えます。プーチンの行動原則は、もはや西側諸国では尊重されていないのです。

 プーチンの言う通り、ヨーロッパ諸国、カナダ、オーストラリア、日本、ニュージーランドの政府はすべてワシントンの飼い犬です。プーチンは、ワシントンが操る人形連中が、この役割をぬくぬくと喜んで果たしていることに気づいていません。したがって、プーチンが彼らの従属性を叱り、独立を約束させることなどほとんどできない相談です。最近、読者から、人は流布する物語にしたがう傾向があるという1950年代のアッシュ実験や、エドワード・バーネイズによるプロパガンダの分析が活用されていることを教えてもらいました。また、1970年代にある政府高官から聞いた話ですが、「ヨーロッパ諸国の政府は我々の思い通りに動いている。我々は彼らを所有している。彼らは我々に報告してくれる」。

 言い換えれば、操り人形たちはぬるま湯に身を置いています。プーチンは、自分が率先して動き、範を示すだけでは、この状態を打ち破ることは非常に難しいでしょう。


 MW:最後の質問は、米国経済に関するあなたの幅広い知識を活用し、米国の経済的弱さがロシアを挑発するワシントンの決断の要因になる可能性についてお聞きしたいと思います。この10ヵ月間、多くの識者がNATOのウクライナへの拡大がロシアにとって「存立危機事態」を引き起こしていると言っているのを耳にしました。ただ、同じことが米国にも言えるのでしょうか。ジェイミー・ダイアモンド*からヌリエル・ルービニ**までが、2008年の全システム・メルトダウン(完全崩壊)よりも大きな金融の大混乱を予測しているようです。メディアも政治家も、ロシアとの対決を強く求めているのは、そのためでしょうか?米国が世界秩序の中で高貴な地位を維持するためには、戦争しかないと考えているのでしょうか?
*アメリカ合衆国の実業家。アメリカ合衆国の四大銀行の一つであるJPモルガン・チェースの会長および最高経営責任者を務めている。また、ニューヨーク連邦準備銀行においては2007年よりクラスA取締役を務めている。( ウィキペディア)
** アメリカ合衆国の経済学者。ニューヨーク大学の教授である。( ウィキペディア)

 ポール・クレイグ・ロバーツ: 政府が経済の失敗から目を背けさせるために、戦争に向かうという考え方はよくあります。しかし、あなたの質問に対する私の答えは、アメリカの覇権がその動機であるということです。ウォルフォウィッツ・ドクトリンはそれを明確に述べています。このドクトリンは、アメリカの外交政策の主要な目標は、アメリカの一国主義の制約となりうるいかなる国の台頭も阻止することだ、とも述べています。2007年のミュンヘン安全保障会議でプーチンは、ロシアは自国の利益を米国の利益に従属させることはないと明言しました。

 ワシントンには、核戦争に勝てると信じている狂った新保守主義者がいます。彼らは、米国の核兵器政策を、先制攻撃を受けた側の報復能力を低下させることに焦点を当てた先制攻撃モードとして作り上げてきました。米国は現在ロシアとの戦争を探っているわけではありませんが、不測の事態に陥る可能性はあります。

 

新保守主義者の作戦は、

 

①ロシアで問題を引き起こし、国内問題を発生させ、クレムリンの注意をワシントンの権力行使からそらし、

プロパガンダでロシアを孤立させ、そして、

③ひょっとするとジョージアやウクライナで行われたように、ロシア国内またはベラルーシのような旧ロシア属国でカラー革命を引き起こさせることまで、

この3つです。

 

人々は、プーチンがロシア軍を送り込んで阻止した、アメリカが仕掛けたジョージア軍による南オセチアへの侵攻を忘れてしまいました。

ロシア軍の到着によって沈静化したカザフスタンの最近の騒動も忘れてしまいました。

クレムリンを毟(むし)り取り続ける計画なのです。

ワシントンにウクライナのマイダン革命のような成功を常にもたらすことはないにしても、一連の出来事はクレムリンの時間とエネルギーを消耗させ、政府内に反対意見をもたらす、という陽動作戦として首尾よく進んでいます。しかもそれは軍事的な緊急事態の計画を必要とします。ワシントンがシナリオを管理しているため、事件はロシアを侵略者として貶(おとし)め、プーチンを「新たなヒトラー」として描写することにもなります

ロシア人選手の競技会からの排除、

ロシア人作曲家の楽曲のオーケストラによる演奏の拒否、

ロシア文学の排除、

ロシアとの協力の拒否など、

プロパガンダの成果はかなりのものです。

 

これは、ロシア人にとって屈辱的なことであり、国民の政府に対する支持を低下させかねません。ロシアのスポーツ選手、アイススケート選手、芸能人、そしてそのファンにとっては、たいへんな不安と苛立ちがたまることになるでしょう。

 とはいえ、ウクライナでの紛争は、意図的であろうとなかろうと、
全面戦争に発展する可能性があります。これが私の懸念であり、クレムリンの限定的なゆったり作戦が誤りであると考える理由です。ワシントンの挑発が行き過ぎになる機会を提供しすぎているのです。

 経済的な要素もあります。ワシントンは、自分の支配下にあるヨーロッパ帝国が、エネルギー依存やビジネス関係からロシアとの関係を緊密化させることを阻止しようと考えています。実際、経済制裁は、ワシントンの経済・金融覇権に代わってヨーロッパを脱工業化するものだと説明する人もいます。こちらをご覧ください。

*

This article was originally published on The Unz Review.
Paul Craig Roberts is a renowned author and academic, chairman of The Institute for Political Economy where this article was originally published. Dr. Roberts was previously associate editor and columnist for The Wall Street Journal. He was Assistant Secretary of the Treasury for Economic Policy during the Reagan Administration.
He is a regular contributor to Global Research.
Michael Whitney is a renowned geopolitical and social analyst based in Washington State. He initiated his career as an independent citizen-journalist in 2002 with a commitment to honest journalism, social justice and World peace.
He is a Research Associate of the Centre for Research on Globalization (CRG).
Featured image is from The Last Refuge
The original source of this article is Global Research
Copyright © Dr. Paul Craig Roberts and Mike Whitney, Global Research, 2022

 

 

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