大前研一ニュースの視点~

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▼サウジアラビアとロシアVS米国という、原油をめぐる新しい対立の構図
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日経新聞は10日、
「OPECの『落日』鮮明」と題する記事を掲載しました。

ロシアのノワク・エネルギー担当相が6日、
OPECとの会合で4月以降の協調減産強化を
拒否したと紹介。

一方、原油価格の国際指標である北海ブレント先物が
9日、一時1バレル30ドル台に急落し、ロシアは
高コストのサウジアラビアに付き合うより、
相場下落で自ら傷を受けながら
強敵に育った米国のシェール企業を攻撃するほうが
得策と判断したとしています。

言い方は悪いかもしれませんが、
これは非常に興味深い話題です。

日本にとっては喧嘩を対岸から見ているだけで、
原油価格は安ければ安いほどありがたい状況です。

まずOPECの原油減産に対して、
ロシアが反対しました。

すなわち、OPECの中心にいる
サウジアラビアとロシアが敵対したという
構図になりました。

しかしその後、サウジアラビアの皇太子と
ロシア側が話し合いを持ち、
対立するのではなく協力して
米国を叩こうということになりました

背景にあるのは、
米国の原油生産量、輸出量の伸びです

特にこの数年間の伸びは急激で、今や米国は
国際供給で世界最大級の原油産出国であり
輸出国に成長しています。

OPECからすれば、成長する米国に
いじめられているような状況でした。

それに対して、
この原油価格の下落を利用して
米国の足腰が立たないようにしてしまいたい

というのがサウジアラビアとロシアの狙いでしょう。

米国は経済原則の国です。

シェールオイルの価格が
1バレル30ドルを下回ってきたら、
次々と閉鎖していくことになると思います

そのようにして、一度米国を
叩きのめして退場させてから、ゆっくりと
自分たちだけで稼ごうということでしょう。

実際のところで言えば、サウジアラビアも
1バレル80ドルくらいの価格を維持しないと
今の無駄遣いの国家予算を正当化することは
できません。

ベネズエラなどは
1バレル120ドルほどの価格でなければ
経済が成り立ちません。

ロシアは
1バレル40ドルが限界と言われていましたが、
先日プーチン大統領が1バレル25ドルでも
戦えると公言しています。

米国の原油生産量の推移を見ると、
原油価格の上昇に比例して
次々シェールオイルを掘ってきたことが

わかります。

原油輸出量も、
サウジアラビアとロシアに迫る勢いを
見せています。

今のうちに叩き潰しておかないといけないと
感じるのも当然かもしれません。

OPECとロシアにとっては
そんな米国を叩きのめすのは、
今や「共通の夢」と言っても

過言ではないでしょう。

サウジアラビアとロシア」VS「米国」という
新しい対決の構図が見えてきて、
これも市場の混乱に拍車をかけている状況です。

 

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※この記事は3月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています