中国企業のベトナム進出が加速、アメリカの追加関税措置に対抗
4/17(水) 7:00配信
マネーポストWEB
中国企業のベトナム進出加速の背景とは(ホーチミン。写真:Getty Images)
中国企業によるベトナムへの直接投資が活発になってきた。ベトナム政府の発表によれば、2019年1-3月期の対内直接投資(認可額)は前年同期と比べ86.2%増加し、108億ドルとなった。これは1-3月期としては2016年以来の高水準である。
新規のプロジェクト投資が急増しており、分野別では加工・製造業が全体の8割近くを占める。また、国・地域別では香港がトップで44億ドル、全体の41%を占め、以下シンガポールが14億6000万ドルで14%、韓国が13億ドルで12%、中国が10億ドルで9%、日本が7億ドルで6%を占める。
香港からの直接投資は中国企業による迂回投資が多いとみられる。香港、中国を合計したものが中国企業による直接投資の額だとすれば、全体の対内直接投資の内、中国企業が約半分を占めることになる。
2018年の対内直接投資額(認可額)は354億7000万ドルだが、日本がトップで86億ドル、全体の24%を占めた。以下、韓国、シンガポール、香港、中国の順であったことを考慮すれば、足元では、香港、中国からの急増が目立つ。ただ、2018年に関しても、香港、中国を合計すれば、56億9000万ドルで韓国に次いで第3位と、決して少ないわけではない。
中国メディア(証券時報)によれば、2008年以降、中国A株上場企業の内、60社余りがベトナム関連の投資を行っており、2017年から2018年にかけては20社近くが、関連投資に関する公告を行っている。
例えば、繊維関連では、綿織物に強みを持つ華孚時尚(002042、深センA株)、綿糸、ニット生地メーカーの天虹紡績(02678、香港)、高級シャツ用先染め生地大手の魯泰紡織(000726、深センA株)ユニクロ、ZARA、H&Mを主要顧客とする繊維メーカーの百隆東方(601339、上海A株)などが大型投資を行っている。
米中貿易摩擦の影響を受けない海外への生産移転を加速
ベトナムへの対内直接投資はここ数年増加傾向にあるが、その要因として考えられるのは、対外開放政策の加速である。
中国とベトナムとの間では、2005年に発効した中国ASEAN自由貿易協定を通じて貿易の自由化が進んでいるが、ベトナムは、国策として、中国だけでなく、グローバルに経済の自由化、国際化を進めており、輸出主導型の経済発展を目指している。輸出関税は現在、ゼロもしくは、低水準となっており、ベトナムから日米欧に輸出される繊維製品については、ほとんどがゼロとなっている。
昨年3月から始まった米中貿易戦争は、6月中旬以降、厳しさを増している。ようやく、米中協議がまとまりそうなところまでこぎつけてはいるが、完全な解消は難しいとみられる。こうした外部環境の中で、中国企業は、繊維以外の産業でも、電子産業などが米中貿易摩擦の影響を受けない海外への生産移転を加速させている。追加関税措置への対抗策といっていいだろう。
中国政府は一帯一路戦略の一環として、深セン-ハイフォン経済貿易合作区を建設しており、2017年末には第一期工事が終わっている。上場企業では、発電機、変電設備などを製造する臥龍電気駆動集団(600580)、エアバッグメーカーの華懋厦門新材料科技(603306)、バルブメーカーの浙江三花智能控制(002050)、モーターメーカーの中山大洋電機(002249)などがこの合作区に進出している。
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完成から6年程度で敷地が埋まるとみられていたが、工事完成からわずか1年で面積の約半分が進出企業で埋められるほど人気が高く、早くも拡張のための協議が始まっているという。
中国政府や企業の対応は柔軟でスピーディである。アメリカの対中強硬派は中国をサプライチェーンから外そうとしているが、それは容易ではないかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。
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