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マカオのカジノ、謎の「女性ギャンブラー」 に敗北?
2017/2/28 6:30日本経済新聞 電子版
香港株式市場で上場企業の決算発表がたけなわだ。有力業種の一つ、マカオのカジノ企業といえば近年、業績が苦戦。理由は「中国人客の減少」というのがお決まりのパターンだが、米ラスベガス・サンズの子会社、金沙中国(サンズ・チャイナ)は違った。ある謎の女性ギャンブラーが同社のカジノで勝ちに勝ったのが響いたという。
■業績、見込みを下回る
謎の女性ギャンブラーが現れたと話題になったカジノリゾート「ザ・パリジャン・マカオ」
サンズ・チャイナの2016年10~12月期の調整済みEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)は6億1000万米ドル(約690億円)。前年同期比で5%増えたが、市場予想には届かなかった。
16年9月にサンズはマカオの埋め立て地コタイ地区にパリの街並みを模したカジノリゾート「ザ・パリジャン・マカオ」を開業した。実物の2分の1サイズのエッフェル塔を目玉に据えるこのカジノが、業績の足を引っ張った。
一つは「パリジャンによる需要の共食い」(招商証券・香港)だ。カジノリゾートがひしめくコタイ地区に、サンズはすでに複数のカジノを展開している。パリジャンの近くにある「サンズ・コタイ・セントラル」は10~12月期にカジノ収入が14%減り、減収率が7~9月期(6.7%)から拡大した。
パリジャン自体もいまひとつ。9500万米ドルのEBITDAを稼いだが、カジノ収入が伸びず、会社側の見込みを1500万~2000万米ドル下回った。関心を集めたのがその理由。経営陣が「カジノで毎日勝ち続ける女性がいた」と説明したのだ。
大手カジノの利益をへこませるほど連勝する女ギャンブラーとは何者か。香港メディアは「女賭神」と一斉にはやし立てた。
■「23億円荒稼ぎ」
香港紙の蘋果日報(アップル・デイリー)によると、この女性は上海出身で、テーブルゲームの一種であるバカラを好む。じっくりと見極めて賭けるタイプだそうだ。澳門博彩控股(SJMホールディングス)のカジノ「リスボア」で大負けした後、パリジャンにやってくるとツキが回ってきて、同カジノを中心に2000万米ドル(約23億円)の勝ちを収めた、とうわさされている。
カジノ施設は客に払い戻した後の取り分を収入とする。マカオにあるサンズの5施設を比べると、一般向けテーブルのカジノ側の勝率はパリジャンが18.3%と最も低かった。ほかの4施設は平均で20.7%だ。パリジャンでの女賭神の勝ちっぷりを物語る、と解釈されている。
カジノには一般向けテーブルと賭け金の大きいVIP向けテーブルがある。通常、カジノ会社にとってはVIP向けよりも一般向けの方が利益率が高いとされている。VIP向けの場合、VIP客の世話をする「ジャンケット」と呼ばれるカジノ仲介業者に手数料を支払う必要があるからだ。一般向けで苦戦したパリジャンは5つのカジノのなかでEBITDAマージン(売上高EBITDA比率)が最も低かった。
「パリジャンの収益率が低いのは一時的。先行きの成長を楽観視している」(上海申銀万国証券研究所)との見方もあるが、香港株式市場では2月1日の春節(旧正月)休み明け以降、サンズ株のパフォーマンスは他のカジノ銘柄を下回っている。
マカオ政府がまとめた1月のマカオの賭博業収入は192億5500万パタカ(約2700億円)と前年同月に比べ3.1%増えた。6カ月連続のプラスだが、伸び率は前の月から4.9ポイント縮小した。底入れ感はあるが、回復力は鈍い。
実はメディアが一時的に話題を振りまいた後、春節休みが明けると女性ギャンブラーの消息はようとして聞こえてこなくなった。本当に存在したのかどうかすら今となっては謎だ。物見高いカジノ客を増やす効果はあっただろう、とささやかれている。
(NQN香港=大谷篤)
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