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財部誠一の「ビジネス立体思考」

オバマ政権よりも親日的なトランプ政権

暴言・暴挙のトランプ大統領の意外な一面

2017年2月1日(水)

 

 米国大統領に就任した後のトランプ氏が、どんな姿勢で日本と向き合ってくるのか。電話会談とはいえ、1月28日にトランプ大統領が何を語ってくるのか、この政権幹部も身構えていたという。

 そうは言っても、それらはあくまでも大統領就任前の話である。

 「11月の電話会談の時から安倍総理に配慮があり、驚くほど謙虚な態度でした。日米関係が大事だ、ぜひ一緒にやっていきましょうという感じだった。大統領になることへの若干の不安ものぞかせていた。その後のニューヨークでの首脳会談もすごく良い雰囲気で1時間半やった」

 そもそも安倍首相とトランプ大統領が「会談」をしたのは、

1月28日の電話会談で3度目だ。

1度目はトランプ氏が大統領選を制した直後、昨年11月の電話会談。

2度目は12月、ニューヨークのトランプタワーで行われた直接会談だ。

11月の電話会談の時から、安倍総理に配慮

電話で会談をするトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

 演説上手で理想主義を語り続けたオバマ大統領だが、対日姿勢には甚だ疑問が残るという。対照的に暴言・暴挙のトランプ大統領はマスコミでは絶対に報じられない意外な素顔を見せながら、日米関係重視の姿勢を見せている。

 安倍政権幹部は、以下のように語る
 「今だからこそ言えるがオバマ大統領の冷遇ぶりはひどかった。日本の総理大臣が米国まで出向いたというのに、会談時間わずか45分というのは異例の冷遇です。それだけ日本を見下していた。結局、オバマさんは親中だった。中国について日米が本音で語りあうことは最後までなかった

 「トランプ政権で日米関係は格段に良くなる」──。
 1月28日、安倍首相とトランプ大統領との電話会談直後、この場に同席した政権幹部は日米関係の先行きに確かな手応えを感じ、高揚感すら滲ませていた。その背景には、安倍政権発足直後(2013年1月)にワシントンで行われたオバマ大統領との日米首脳会談のトラウマがあるからだ。

オバマ大統領は親日ではなかった

「大統領就任前とまったく変わらなかった。TPP(環太平洋経済連携協定)や日本の自動車輸出など個別の話は一切なく、とにかく安全保障も含め、日米関係最重視の姿勢を強調していた」

 首脳同士の初めての電話会談で個別具体的な注文をつけなかったのは、儀礼上当然のことように思えるが、そうではない。ドイツのメルケル首相の電話会談では、トランプ大統領は貿易赤字を減らせと注文をつけたという。

トランプ大統領は、「予測不能」ではない

 メディアでは盛んに「予測不能」と形容されるトランプ大統領だが、それは明らかに違う。

 大統領令を連発して多くの人の怒りや絶望の原因を作っているとはいえ、それらはすべて公約通りだ。選挙キャンペーンで語り、大統領就任演説で明言したことをやっているにすぎない

 「予測不能」なのではなく、公約を本当に実行することをメディアが予測できなっただけだ。個別の政策について賛否は当然あるだろうが、トランプ政権は言葉通りの“有言実行”なのだ。その意味では驚くほど一貫性がある

オバマ政権の時にはありえなかったこと

 日米関係についても、話をもどそう。

 国家安全保障担当の大統領補佐官、マイケル・フリン氏は「日米関係重視がトランプ大統領の基本姿勢だ」と大統領選直後から日本側に伝えてきたという。

 「フリン大統領補佐官のカウンターパートである、谷内正太郎国家安全保障局長に『365日24時間、いつでも連絡をください』と、携帯電話番号とメールアドレスを連絡してきた。オバマ政権の時にはありえなかった。様変わりです」(安倍政権幹部)

 個別具体的な交渉の場面では、日米間で激しく利害が対立することもあるだろうが、少なくとも現時点において、安倍政権内には期待先行ムードが広がっている。期待は現実となるか。2月10日にワシントンで行われる日米首脳会談が注目される。

 

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122700034/013000002/?P=1