「オールジャパン」は百害あって一利なし
従業員はシャープ×鴻海傘下で輝く
坂本幸雄とは、エルピーダメモリ株式会社の代表取締役社長・最高経営責任者 (CEO )である。半導体産業界で経営難にあえぐ数社の再建を成功させ、その手腕から「半導体業界の救世主」とあだ名される人物である。1947年9月3日生、群馬県前橋市生まれ。
1970年に日本体育大学体育学部を卒業した坂本幸雄は、半導体 メーカーの日本テキサス・インスツルメンツ (TI )社へ入社した。体育会系で、半導体 に関する知識もなく、倉庫係として資材の出入庫を始めたという。しかし20年の勤務を経たころには、坂本幸雄は取締役を務めるまでになっていた。その陰には、在庫 を把握する能力や、持ち前の体力、判断の決定に至るまでの迅速さといった坂本幸雄の特長がある。坂本幸雄はTI で副社長までを歴任した後、神戸製鋼所に移って半導体本部長に就任した。そして2000年には日本ファウンドリー(現・UMC Japan)社長へと就任している。。。
坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方
シャープが台湾・鴻海精密工業グループの傘下で再建を目指すことが決定した。産業革新機構に買収されるよりも賢明な選択をしたと思う。

「オールジャパンでの復活を目指すべきだ」という意見もあったが、理解に苦しむ。外国資本であっても、日本で雇用を生み、納税してくれれば、国にとってはプラスだ。「オールジャパン」にこだわり倒産してしまえば、雇用はなくなり、税収も減る。
日産自動車は仏ルノーとの資本提携をきっかけに復活を遂げたが、オールジャパンにこだわっていれば、倒産して雇用も税収も失っていた可能性が高い。どちらのほうが国益に適っているかは明白だ。
グローバル競争を勝ち抜く企業は、「世界のどの企業と一緒になるべきか」を日々模索している。日本企業による買収がすべてダメだと言っているのではなく、日本企業ありきで考えるのはおかしい、ということである。
エンジニアが力を発揮するには、
1.やりたいことをできる環境があるか
2.研究開発などの十分な予算があるか
3.業績向上に寄与したら待遇等含めて優遇されるか
の3点が重要になる。
じり貧企業に所属していたエンジニアが外資系企業に買収されて輝きを取り戻す事例は数多く存在する。例えば、シャープの堺工場は本体に先駆けて一足先に鴻海の傘下に収まったが、ここで働く日本人エンジニアは「シャープのままでなくて本当によかった」と発言している。シャープのままであれば今頃リストラ対象になっていただろう。
(画像:Ingram Publishing)
白物家電事業が中国の家電メーカーであるハイアールの傘下に収まった元三洋電機のエンジニアも「研究開発費が潤沢になり、以前より作りたいものを作ることができるようになった」と話していたと聞いている。鴻海に買収されることで、シャープのエンジニアは今後、これまでやれていなかった商品開発に着手できる可能性が高まった。今後の活躍に期待したい。
私が以前CEOを務めていたエルピーダメモリも米マイクロンに買収されたが、エルピーダが手掛けていた事業が現在ではマイクロンの稼ぎ頭となっている。「オールジャパン」などといって官製ファンドなどが筆頭株主にでもなっていれば、リストラの憂き目にあっていた従業員も
多くいただろう。「マイクロンに買収されてよかった」という声をよく耳にする。
詳細は次回以降に譲るが、かくいう私も今年に入ってから立ちあがった半導体企業・サイノキングテクノロジーのCEOを務めることになった。日本・台湾の技術力と中国の資本力を活かして、競争力があり、世の中に必要とされる半導体を、日本企業をはじめ、世界に提供していきたいと考えている。
グローバル企業は生き残りをかけて世界中の企業と合従連衡を図っている。「オールジャパン」に拘泥すれば、雇用も税収も失い国力を弱
めるだけだ。