中国の官僚 「死刑判決に至る収賄額」が引き上げられている
2015/9/13(日)16:00 NEWSポストセブン


 続出する不祥事はある種の混乱も巻き起こしていいる。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。

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 中国の刑事裁判をめぐる報道に接して日本人がつい首をひねってしまう場面は少なくない。


例えば、「執行猶予付き死刑」だ。これは実質的な無期懲役なのだが、たいていの日本人は「なぜ死刑に執行猶予が?」となるはずだからだ。


 中国は2013年から習近平の打ち出した反腐敗キャンペーンによって次々に汚職官僚が摘発され、年間で5万人以上の官僚(政治家)が起訴されたとも伝えられている。


 こうした裁判を通じて、天文学的な巨額賄賂が飛び交う社会の実態が明らかにされるのに対し、汚職官僚への判決はときに「死刑」であり、ときに「執行猶予付き死刑」、またときには「無期

懲役」であったりして、その基準が話題になることも少なくなかった。


 裁きを下す司法の側には、ある程度の目安があ

るのだろうか

 実はこれ、極めて曖昧なのだ


 2015年8月29日、全国人民代表大会常務委員会で刑法の改正が一つの焦点となったのだが、このとき明らかにされたのが汚職の罪の軽重を決める基準があまりに古く現状に適合しないという問題だった。


罪の重さは4段階に分けられており、

それぞれ収賄額で5000元未満、


5000元以上5万元未満、 1元=約19円

5万元以上10万元未満、

そして10万元以上となっていたのというのだ。


 2014年11月に摘発された馬超群(元北戴河供水総公司総経理)が自宅に現金1億2000万元(約22億8000万円)と金の延べ棒37キログラムを隠し持っていたケースを挙げるまでもなく、昨今の収賄額はどれも莫大で、収賄額が10万元を下回ることなどほとんどないのだ


 つまり、どれも10万元以上の深刻なケースであり、金額から客観的な判断を下す基準は司法の側にはなかったということだ。この事実は換言すれば、司法は極めて政治的に判決を決めてきた可能性が高いということになる。


 事実、過去20年、汚職で裁かれた官僚たちの判決には一定の規則が存在しない。


 例えば2000年に死刑判決を下された元江西省副省長の胡長清は544万元(約1億300万円)、元広西壮族自治区主席の成克傑は4109

万元(約7億7800万円)であった。また2003年に死刑判決となった元安徽省副省長王懐忠のケースでは517万元(約9820万円)。2007年に死刑となった元国家食品薬品監督管理局局長の鄭篠萸の収賄額は649万元(約1億2300万円)であった。


 つまり収賄額が500万元を超えるようなケースでは死刑が言い渡されると予測されてきたのだ。


 だが、2013年を越えて以降、この金額による基準は社会の変化を受けて大幅に引き上げられている様子だ。


 例えば、2013年に裁かれた元鉄道部長の劉志軍は収賄額6460万

元(約12億2300万円)で執行猶予付き死刑。


2014年に15年の判決となった元広西壮族自治区政治協商会議副主席の李達球の収賄額は1095万元(約2億700万円)。


2015年の元安徽省副省長倪発科のケースは1000万元(約1億8900万円)で17年だった。


 こうして並べて見ただけで一定の法則がないことは明白だが、今後

は従来の基準を見直し


「金額が比較的大きい、或いは問題の背景が比較的深刻」、


「金額が巨大か、或いは背景が深刻」、


そして「金額がとくに巨大か、或いは背景が極めて深刻」


という3段階にするという。


 改革という名前の下での変化だが、曖昧さはより深まったのではないだろうか

http://news.nicovideo.jp/watch/nw1792183