孫崎 享 さんの記事です:
Date: Sat, 25 Apr 2015 08:44:23 +0900
Subject:
集団的自衛権(「朝まで生テレビ」終え):米国軍事行動で世界不安定。自衛隊この戦略に海外


A 今回の「朝まで生テレビ」の特徴


・番組の冒頭、天皇陛下の80歳誕生日の言葉から始まった。


現代の在り様を考える上で極めて貴重な発言にもかかわらず、これを知っている国民は多くない。NHKは「ニュース資料」に入れなかったことに象徴されるごとく、安倍政権に遠慮をし、報じなかった部分である。


「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。」


・かつタイトルは「激論!憲法9条と日本の平和」であったが、NHKお

よびテレビ朝日を呼んで、事情聴収を行ったことの意味から始めた。


 ここで小西洋之民主党議員(元郵政省勤務)が放送法3条「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」を指摘した。


・「朝まで生テレビ」は夜中の番組であることもあり、ネトウヨ的視聴者が多い傾向があったが、視聴者のアンケートでは、憲法改正及び集団的自衛権に反対が多数を占めていた。


B:集団的自衛権についての私の考え


 ・集団的自衛権は「自衛権」と言っているから、あたかも日本防衛であるかのような印象を与えているが、そうではない。


 この点を明確に述べているのが宮崎礼壹元内閣法制局長官である。


彼は昨年の『世界』八月号に「憲法9条と集団的自衛権は両立不可」の論文を書き、ここで、「集団的自衛権の本質は「他国防衛」。


集団的自衛権も「自衛権」というから、各国の持つ自己防衛権の一種ではないか、と考えてしまう人が多い。、違う。自衛権と名前はついているけれども、「自己防衛の権利」である「個別的自衛権」とは定義からしても、実態からみても、異質。」と記述した。樋口陽一東大名誉教授は「集団的自衛権は他衛権だが、他国を助けるのでもなく国の秩序をめちゃくちゃにしたのが現代史の事」と発言している。


・安倍政権は「他国防衛」「他衛権」の本質をごまかすために、昨年の5月15日、安倍首相は記者会見で日本人の母子らしい人が乗った米国の船を《防護できない》としたパネル。これを指しながら首相はいう。「紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さん、おじいさんやおばあさん、子どもたち。彼らが乗る米国の船を今私たちは、守ることが出来ないのです」と言っているが、米国国務省はホームページで、「 危機に於いて我々の優先は米国市民を助けることである。


方方は米国政府が雇いあげたり非商業輸送手段に、米国市民でない友人や家族を連れ込むことを期待すべきではない」と答えています。更に「避難時にどうして米軍軍用手段を使わないのか」という問いに「ヘリコプターや米軍運搬手段や軍事エスコートがついた米国雇用輸送手段は現実と言うよりハリウッドの脚本である」と安倍首相の説明のようなケースを「ハリウッドの脚本」と言っている。


・安倍政権は昨年7月1日の閣議決定で、集団的自衛権の新3条件を示し、「他国防衛」の本質を示した。


「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」


・よく、集団的自衛権は国連憲章で認められた権利と言われるが正確ではない。


 国連憲章51条は「、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」としている。


・また、尖閣諸島などの防衛のため集団的自衛権を守る必要があるとの説明がなされるが、この点は日米安保条約で規定されていて、集団的自衛権とは関係がない。よって「切れ目のない防衛」という言葉を使い、あたかも関係があるかのごとき印象を作り出している。


「第五条:


 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」


・今一つの例として「日本は石油に依存している。ペルシア湾に機雷が敷設されたときこれを除去する」ことが言われる。


 まず、機雷が敷設されている時には戦闘が起こっている


 この時には石油の輸出入は相手国の経済力を高める行為として敵対行為であると位置づけられているので、機雷敷設有無にかかわらずタンカーはとても入れない。機雷敷設は戦闘行為の一環として行われているので、これの除去も戦闘行為となる。したがって戦闘時に機雷除去を行えば当然、相手国から狙われる。


・しばしば「冷戦後世界情勢が変わった。だから新たな行動が必要になる」という言葉が使われるが、冷戦後行動が変わったのは米国である。「国際的安全保障環境の改善のため」という口実で武力行使を行ってきた。


 イラク戦争、アフガニスタン戦争、リビアへの攻撃、シリアへの攻撃など、米国の軍事行動で決して当該地域は安定になっていない。これらの地域を見れば混乱を招いているだけである。


・テロも米国の軍事行動が起こるまでは、減少していたのである。


・そして米国、並びに有志連合の攻撃に反撃するケースが増えてきた。


 スペインはイラク戦争に参加した。これに反対するテロ活動がスペイン国内に起こり、2004年3月11日スペイン列車爆破事件が首都マドリードで起こった。191人が死亡し、2000人以上が負傷した。スペインのイラク戦争参加に対する反対するテロ行為であった。


 これに加えてロンドン、パリで爆弾事件が発生している。


・イスラム国による後藤さん殺害のケースを見てみよう。安倍首相はエジプトでの演説で「ISIL(注:「イスラム国」)がもたらす脅威を少しでも食い止めるため」「イラク、シリアの難民・避難民支援」「ISIL(注:「イスラム国」)周辺国への人材開発、インフラ整備」を表明したがこれに対して、イスラム国は「安倍総理よ。勝てない戦争に参加した向こう見ずな決断によって、このナイフは後藤を殺すだけでない。今後もあなたの国民はどこにいても殺される。日本の悪夢は始まる」と反応したのである。


集団的自衛権で米国戦略の下自衛隊が海外に展開されても世界は平和にならない。


 そして、海外における日本人、日本企業、そして日本本土でのテロ行為を増大させることとなる。


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