孫崎 享 さんの記事です:
Date: Mon, 18 Nov 2013 06:29:30 +0900
Subject: 日本が必要とするのは国民への情報提供を増すこと。情報からの隔離ではない。

秘密保護法の論議は何年後に公開かの論議に移っているが、今必要なのはそれぞれの現時点で国民がどれだけ多くの情報に接触できるかである。


民主主義が進化している国では、政策を左右するのは世論である。


最近の出来事でいえば、シリア攻撃である。

米国、英国政府は戦争に踏み切るためいに世論工作したが、世論の反対が多く、結局攻撃に踏み切れなかった。


日本においても2010年の漁船衝突事件の映像がその後の日本の対中政策に大きく影響を与えている。


正確で包括的な情報提供こそ最も望まれていることである


今一つ国際政治の変化と秘密の観点を考えてみたい。


核兵器の時代になって、国際政治は根本的な変化をした。

被害が途方もなく大きくなり、大国同士では戦略は「」勝つためではなく、「如何に戦争をしないか」の戦争に変化した。確証破壊戦略である。相手に自国
を必ず破壊できる、同時に攻撃した国も残存する核兵器で必ず破壊される状況を作ることで、互いに攻撃しないシステムを作った


ここでは秘密を敷くのではない、相手に戦略を正確に教える、自己の軍備配備がこの戦略と矛盾していないことを開示する、秘密の順守でなくて、開示が基本である。


これが今日の米国やNATOとロシアの関係である。


同じく、米国はこの関係を中国とも作ろうとしている。


だから、兵器開発のスパイは出るが、戦略や軍事配備などの大型スパイ事件はない。

最新の、最も正確な情報は最大の敵国にもっとも正確に伝えられるシステムである。この理解が国際社会の秘密関係で今、一番大事なことである。


但し米国はアフガニスタンやイラクなどで戦争をしてきているが、その時にはいつどこを攻撃するか、戦争遂行に秘密が必要になる。


これが何故今日本に秘密保護法が求められているかの最大のポイントである。


米国は日本に集団的自衛権をもたせ、自衛隊を米国の戦略のために米国を補完しながら戦わせることを考えている。そのためには米国軍と同程度の秘密保護が必要となる。


平時において、日本の外務省が必要な情報を友好国から提供を拒まれたことがあったであろうか。


考えていただきたい。過去20年間で日本で外交、防衛で機密が漏洩し、国益を大きく阻害した事件があったであろうか。


むしろ、イラク戦争参加のように、大量破壊兵器があるという情報操作で政策を意図的に歪められた例は多々ある。


秘密保護法は米軍に自衛隊が隷属するための装置である

日本が戦闘にはいるための装置である


だから、日米で秘密保護法を日本が作ることを約束しているのである

(参考;以前のニコニコブログより)


10月3日、ケリー国務長官とヘーゲル国防長官が来日し、岸田外務大臣と小野寺防衛大臣との間で日米安全保障協議委員会(通称「2プラス2」)が開催された。ここで、
「より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」と題する日米安全保障協議委員会共同発表が行われた。ここで重要な決定がなされている。


先ず、集団的自衛権に関し「集団的自衛権の行使に関する事項を含む自国の安全保障の法的基盤の再検討する」とし、日米両軍の「相互運用性を向上させる」と決めた。


そして秘密保護法についても決定した。外務省発表の日本語訳はわかりにくい。とりあえず私が訳すると、「(両国)閣僚は、情報の保護を確実なものにする目的で、日本側が法的枠組みを作るために真剣な努力をすることを歓迎する」となる。


日本は「法的枠組みを作る、秘密保護法を制定する」ことを外相、防衛相レベルで米国に約束している。)


記事をシェアするにはこちらから:
http://ch.nicovideo.jp/article/ar393203


孫崎 享
駐イラン大使
外務省国際情報局*長 1997年-1999年
駐ウズベキスタン大使(初代) 1993年-1996年


*米国のCIA,英国のMI6などに相当する
日本の情報局です。でも日本の場合は攻撃性
がないですね。


amazon「戦後史の正体」孫崎 享著
http://is.gd/a7bYd4