孫崎 享さんの記事です:

Date: Sat, 11 May 2013
Subject: 沖縄独立論で考えるべきなのは、現在の日本政府の政策が沖縄県民の意思を反映しているか否かだ

中国共産党機関紙人民日報は8日付で、中国社会科学院学部委員張海鵬氏と同院中国辺境史地研究センター研究員李国強氏の連名で、「『馬関条約』と釣魚島問題を論じる(釣魚島の問題をきちんと整理する 1)」と題する署名論説を掲載し、ここで、沖縄について「歴史上の懸案であり、未解決の問題。改めて議論する時期が来た」と記載した(8日付サーチナ)。


これに対して、菅義偉官房長官は8日午後の記者会見で、中国共産党機関紙の人民日報が「琉球問題は未解決」と主張する論文を掲載し、中国に沖縄の領有権があるとの立場を示唆したことについて、「全く不見識な見解だ」と批判した(8日時事通信)


今日、どこかの国が唆し、どこかの国が独立するというような単純なものではない。


一番重要なことは、特定地域住民が、


(1)自分たちを独立するにふさわしい同一性を感じているか、


(2)現在属している国家が住民を代表していると思えるように機能しているかである。


今沖縄で確実に独立論が力を増してきている。具体的な事実を見てみよう。


(1) 5月15日「琉球民族独立総合研究学会」の設立発表記者会見が行われる予定である。龍谷大学の松島泰勝教授(石垣島出身)や沖縄国際大学の友知政樹准教授らが中心。


(2)沖縄の政治的、社会的に重要な地位にいる人物が沖縄独立に言及し始めた。


社会民主党の照屋寛徳衆議院議員(67)が、「沖縄は日本国から独立した方が良い」などとブログで発言し話題になっている。(4/ 9 Jcastニュース)その他、琉球新報社長も独立を考える時と述べている。


(3)沖縄の多くの識者は、独立論を展開しないまでも、これら発言を好意的にみている人が多い。


(4)沖縄の人の論拠には次のものがある。琉球民族独立総合研究学会の設立趣意書には次の内容が含まれている。


・琉球民族は独自の民族。琉球国はかつて独立国


・1609年薩摩侵攻、1879年明治政府による琉球併合、


・それ以降日本政府による差別、1945年沖縄の地上戦、

1952年日本の主権回復時に琉球を質草、


・日本人は琉球を犠牲にして「日本の平和と繁栄」を享受つづ     けようとしている。


・沖縄は独自のネーション、国際法で保障された「人民の自己   決定権」を行使できる法的主体。


・国際人権規約共通第一条に規定された「人民の自己決定権」にもとづき、琉球独立という本来の政治的地位の実現を目指す、」


一番の問題は、沖縄の人々が今日の日本政府は沖縄の人々の考えを代表していると考えられるかである。


・米軍基地を沖縄に集中させている、


・沖縄県民の負担軽減で発足したはずの普天間基地を、沖縄県内の辺野古に強引に移そうとしている、


・オスプレーの配備を県民のほぼ一致した反対にかかわらず強引に実施した。、


 ・1952年4月28日は沖縄を置き去りにして日本が独立した日であるが、安倍政権はこの日を「主権回復の日」として祝った。


沖縄の独立論を考察した人民日報を非難するのはいい。

しかし、日本政府の諸政策が本当に沖縄県民の意思を反映しているかを真剣に考えないと、沖縄独立の動きはどんどん具体性を持ってくる。


記事をシェアするにはこちらから:
http://ch.nicovideo.jp/article/ar225627


孫崎 享

駐イラン大使
外務省国際情報局長 1997年-1999年

駐ウズベキスタン大使(初代) 1993年-1996年