低反発バットの導入によって変わると思われること、このように変わった方がいいのではないか?ということを3回に渡って書いていました。

もう少しだけ書いて締めたいと思ってます。


さて、前回バッテリーの話をした。バッテリーの共同作業として行うのが盗塁への対応である。


低反発バット導入スタートの選抜で、かつて『機動破壊』というイメージがあった健大高崎が優勝し、今大会盗塁しまくった星稜がベスト4となった。攻撃のバリエーションに機動力があるチームが上位進出したのは偶然ではないだろう。これまでくどく書いてきたように、単純なヒッティングだけでの得点が困難になれば、どうにかしてチャンスを広げよう、得点しようという手段としての機動力の重要性が増すのは必然だからである。


攻撃で機動力の重要性が増せば、守備側は機動力を封じる能力の重要性も増す。ピッチャーの牽制の技術、キャッチャーの肩。これらは最低限兼ね備えている必要がある。

さらに、試合が膠着すればダブルスチールやスクイズのようなプレーで点数を取ろうとする機会も増えるだろう。ツーランスクイズを仕掛けてくるチームも増えてくるかもしれない。バッテリーと内野手の連携の重要性もますます大きくなると思う。

ピッチャーを含めた実践的な守備練習がこれからもっと大切になってくるだろう。


逆にいえば攻撃側は、以前に書いたように機動力と絡めた攻撃のバリエーションが増えてくるだろう。盗塁、ダブルスチール、スクイズ、セーフティスクイズ、ツーランスクイズなどもだが、選抜2回戦で健大高崎が見せたように、内野ゴロで3塁ランナーがホームを陥れる技術もますます重要になるだろう。それについても、ランナーの判断に任せるのか、ゴロゴーなのかギャンブルスタートさせるのか、はたまた3塁ランナーとのエンドランを行うのか・・・状況、守備側の能力、バッターの能力、ランナーの能力。全てから判断の上采配する監督の能力も重要になるだろう。


私が高校野球を観戦していて、印象に残っている得点シーンが2つある。


ひとつはかつて選抜の健大高崎vs天理戦であったプレーである。(私はこの試合、健大高崎のアルプススタンドで観戦)

健大高崎の攻撃で、3塁ランナーは健大高崎で1番足の遅いランナーだった。

ここで打球には1塁線へのボテボテのファーストゴロ。ファーストは前に出て捕球した。バッターランナーが走ってこないので、ファーストは振り向いて1塁ベースカバーのセカンドに送球した。

ファーストゴロが転がった瞬間から、アルプススタンドは「来るぞ来るぞ」という空気になった。ファーストが振り向いた瞬間「行ったー」という声もあがった。

ファーストが振り向いた瞬間、3塁ランナーがスタートしたのである。そしてホームイン。天理守備陣の僅かなスキをついた見事な得点シーンだった。

スリリングなシーンであった上に、アルプススタンドの不思議な雰囲気もあり、非常にエキサイトしたものだ。

さらにいえばこの試合は1−0で健大高崎が勝ったという、非常に価値ある1点だった。


もう一つは選手権での明石商vs宇部鴻城。

8回裏、1点を追う明石商はランナーを3塁に進めた。ここでとった作戦が3塁ランナーとのヒットエンドラン。まるでこじ開けるかのような同点劇だった。

明石商の狭間監督はかつて明徳義塾中学の監督をしていて、中学軟式野球では3塁ランナーとのヒットエンドランが作戦としてあるが、まさか甲子園で使われるか、と騒然としたのは覚えている。

試合はその後明石商がスクイズでサヨナラ勝ちを決めた。

これまた価値ある1点だった。


このような試合が見られる機会が増えそうだと思ったらワクワクしてくる。


そういえば、攻めのバリエーションといえば、中学の場合軟式野球の方が3塁ランナーとのヒットエンドランのようにバリエーションがあるので、軟式出身者の方が巧みかもしれない。


このあたりで低反発バットに関する話は止めておこうと思っている。

後はこれからの試合をみましょう。