ここまで2回、低反発バットの導入について思うところを書いてきました。3回目の今回はバッテリーについて書いてみたいと思います。
ネット等を見ると、低反発バットの導入によってボールを見極めフォアボールを狙ってくる攻撃が増えたとあります。これについてはまずは書いてみたいと思います。
従来のバットでは「力があるから強振してバットに当たれば期待出来る」と強振してくる選手がいた。中には考えて振ってないのか変化球が打てないのか、ボールになるスライダーを3球投げれば3球空振りして三振する選手がよくいた。
この「ボールになるスライダーを3球投げれば空振り三振」というシーンはこの後減るだろう。ボールを見極めに出れば当然である。まあこれは極端にしてでも、ピッチングの形が変わるかもしれない。
右投手の場合、基本的なピッチングの組み立てはウイニングショットがボールになるスライダーというパターンが多い。スライダーではなくスプリットやフォークのピッチャーもいるが、基本的には「ボールになる変化球を振らせる」のがピッチングのスタイルである。
しかしバッターが強振よりも見極めを優先するようになればこのスタイルは無駄に球数が増えるだけのスタイルとなる。ストライクゾーンで勝負することが重要になってくる。
ストライクゾーンで勝負するピッチャー、過去の観戦歴からとあるピッチャーを連想した。その話をしてみたい。
秋季北信越大会観戦時である。その年は開催県が富山だったので、選抜のかかった準決勝を観戦した。第1試合に敦賀気比が登場した。そして敦賀気比には注目の好投手山崎がいた。
最初は本格派の好投手というから、三振を取りにいくピッチングを期待していた。しかし山崎投手のピッチングは違っていた。低めのストライクゾーンに140km前後のストレートを投げ込みゴロを打たせて取っていた。敦賀気比はこの試合に勝ち選抜出場を決めた。
なお選抜の1回戦(vs青森山田)も観戦している。この時も山崎投手は低めのストレートで青森山田打線ゴロの山を築き、1−0、3安打完封をしている。
なお、この山崎投手とは現在オリックスバファローズの山崎颯一郎投手のことである。今は160kmのストレートなどのイメージが強いが、高校時代は力のある低めのストレートでゴロを打たせるスタイルだった。
「将来プロに行くレベルのピッチャーだから出来るんだろう」という人もいるだろう。ただ山崎颯一郎の場合は相手が従来バットでこういうピッチングをし、甲子園で完封しているのに対し、今日の高校野球では140km前後のストレートを投げるピッチャーは沢山いる。さらに対戦相手は低反発バットになる。ストレートに力のあるピッチャーはこちらを選択してみてはどうだろう。
また、カットボールやツーシームといった小さな変化球で芯を外させ打ち取ることも有効な手段になるだろう。従来のバットは真芯が広い上こともあり、こういうムービング系のボールはパワーで打ち返されることが多いので、高校野球ではあまり有効活用されなかった。ツーシームを武器にするピッチャーも、打ち取るツーシームではなく、インコースをつくためのツーシームであったり、変化が大きくて、ウイニングショットとして使うツーシームだったりした。
このようにムービング系のボールに慣れていないがために、木製バットを使う国際試合ではムービング系のボールに苦しみ、貧打に終わるのが高校日本代表のパターンでもあった。
ストライクゾーンで勝負し打ち取る野球になればとはピッチャーはもっとムービング系のボールを使ってくるだろう。逆にいえばバッターはムービング系のボールに対応する必要が出てくるので、国際試合になるとムービング系ボールを全く打てないということはなくなるだろう。
一挙両得のような話である。
それだけではない。打ち取るピッチングが基本になれば、これまで以上に技巧派のピッチャーに光が当たることにもなる。また、ストライクゾーンの勝負することが基本になれば、無駄なボール球を投げる必要がないので球数も少なくなるのでは、ということも期待できる。
ピッチャーについてはこのような具合だが、キャッチャーについてはどうだろうか?次から見ていきたいと思う。
スライダーやフォーク、スプリットがウイニングショットのピッチングではなく、カットボールやツーシームで打たせてとるピッチングがメインになればバッテリーエラーは減ると思われる。これはいいことであるようで、ある程度のレベル以上になれば、やはりスライダーやフォーク、スプリットを投げるだろうから、キャッチャーのキャッチングのレベルが一時的に下がる危険性があるだろう。スライダーやフォークを受けたことのないキャッチャーがスライダーやフォークをキャッチング出来るわけがないのだから。
逆に技巧派のピッチャーをリードする機会が増えたらインサイドワークは上手くなるかもしれないが。
バッテリーについてもう少し書きたいので以降次回である。