明訓vsりんご園農、 4回裏の明訓の攻撃から始めましょう。


『大甲子園』の作中で、太平監督が1番目立つシーンと言ってもいいのが、バント攻めの作戦を伝えるシーンである。岩鬼には単純と思われていた作戦だが、巨体の星王を攻めるには有効(必ずバテる)という作戦だ。

そして何の因果がわからないが、星王にそっくり(左右の違いはあるが)のキャラである『極道くん』の達磨もバント攻めに苦しむ。水島先生にとればバント攻めしたくなるキャラといえるでしょう(笑)


それはさておき、単純にバント攻めというがそれぞれの場面で各打者に求められることが違ってくる。それを見ていきたい。


最初の微笑は1番気楽である。とにかく星王を動かせばいいし、バントするコースもそこまで狙う必要はない。スリーバントすることと、スリーバント目をファールしなければいいだけの話になる。


上下になると少し状況が変わってくる。

ランナーがいることでりんご園農もバントを警戒してくる。その中できっちりと「星王を動かすバント」をしないといけない。星王を動かすとなればやはり理想はスリーバントだし、それはファールにしてはいけない。またスリーバントするまで2球星王を動かしたい。贅沢いえば休ませたくない。これだけを満たす必要がある。その上で上下が選んだのが「ファール2球」だったということだろう。

上下はチーム内で犠打の多い、つまりはバントの上手い選手である。スリーバントをきめるのも、わざとファールするのも自信があっただろう。(余談だが、この上下からバントの空振り三振をとった不知火の凄さがわかる)


蛸田になるともっと難しい。ただでさえ送りバントの決め辛い1,2塁の局面だし、りんご園農は完全にバントを警戒している。その中で「星王を動かすバント」をきめる必要があるのだから。逆にいえば、当初里中が色気をだし、蛸田も思っていたようにサードに取らせるバントが通常だからだ。通常じゃない普通なら「失敗バント」を確実に行う必要がある。

りんご園農はサード中村、ファースト苫米地にチャージさせている。太平監督は慌てたが、蛸田は落ち着いていた。中村や苫米地は星王の負担を軽減する為にチャージしている。チャージさせないためにはヒッティングの構えが必要だった。

そしてスリーバントを決める。このあたりはさすが明訓のレギュラーである。


蛸田の打席までは詳しいことが書かれたが、高代の打席は「スクイズをやると見せかけてフォアボールを選んだ」旨のコマがあるだけだ。確実に岩鬼までまわし、劇的に岩鬼を活躍させる為の都合(笑)だと思うが、この打席も分析したい。

『大甲子園』が描かれた時代にはメジャーな作戦ではなかったが、セーフティスクイズという手段がある。3塁ランナーは三太郎なので、バントの結果次第でホームを狙うセンスはあるだろう。また、そういう姿勢があるからこそ、星王を牽制できる。そして何より、サードの中村を牽制できる。

当たり前でスクイズを警戒する局面なので、星王は外してもくるだろう。カウントが悪くなり、最後は塁を詰める狙いもりんご園農にはあるだろうから、満塁は必然の結果だろう。


そして渚。スクイズをするもフライになったが三太郎の帰塁がよくダブルプレーにならなかった。星王に対する揺さぶりがメインなので、通常のスクイズとは三太郎の動きも違っていただろう。


バテバテの星王、バッターは岩鬼。ここで「ギネスブックホームラン」が飛び出す。おそらく水島漫画の中でも最も驚愕(漫画的)のホームランだと思う。

個人的に、水島漫画で(私が読んだ中で)3大驚愕の打球をあげろと言われたら


◎岩鬼のギネスブックホームラン

◎『一球さん』で一角が順光から打った、センターのグラブをはじき飛ばしたホームラン

◎『球道くん』で悪道が球道から打った、ホームベース手前でワンバウンドしたエンタイトルツーベース


をあげたいと思う。


というわけで以降次回である。