出場校の発表から1週間以上経っているというのに、まだまだ騒ぎは収まらない。むしろ日頃高校野球を取り扱わないメディアまでが話題にしているように、ネットニュースを見ている限りは感じる。過去も選抜の代表選考が物議を醸す事はあったが、ここまでの事はなかった。やはり今回の聖隷クリストファーの落選という事態が異例である事を証明している。

私も発表の日(1月28日)は仕事で、選考結果はスマホで知った人間である。サイトにアクセスした当初は、北海道(クラーク国際)だけ発表されていた。しばらくしてから再アクセスすると、東海まで発表が進んでいた。関東、東京のラスト1枠は?なんてつもりで見ていて、最後に驚いた。大垣日大?なんで聖隷クリストファーじゃないんだ??何かの見間違いか???

落ち着いてから再アクセスして、ネットの反応を見て、本当に大垣日大が選抜され、聖隷クリストファーが落選したと知った。私も最初は感情のままに1回ここで吐き出そうかと思ったが、あまりにも酷いネットでの記事、コメント等を見て冷静になることができた。少なくとも95回も『光と影の高校野球』を記載し、初期の話はまだ時々アクセスがある。そんな私が自分の意見を吐き出すのに、感情的になってヤフコメみたいになってはいけないだろう、と思ったからである。


それにしてもこの件の関心の高さには驚かされる。というのも、実をいえば水島新司先生の逝去後、このブログのアクセス数が増えている。当初は自分も力入れて書いていた『大甲子園』の明訓vs青田、vs紫義塾に関する記事のアクセス数が増えていたのだが、28日以降のトップは毎日、明訓四天王3年春の選抜の代表選考について書いた記事である。私のブログを読んでくれる人の為にも、いくつか出す例として使う事になるだろう。


さて、選抜の代表選考の話を書く前に、過去の代表選考においてよく見られた特徴3つについて書いてみたいと思う。ただ、私がくどくどと語れるのは昭和60年代からだが。


まず見られる傾向としては、「地域性」である。実例をあげて説明してみよう。


よく選抜の選考で「山陰枠」と言われる選考がある。これは山陰の高校が中国大会のベスト4に残った場合、優先して選考されるというものである。(勿論、山陰の他校が決勝に残っていない事が条件)山陰から選抜出場にこぎ着けるのは困難と、ある意味山陰を卑下したような話である。

山陰枠に限らず、前述した『ドカベン』の例も「地域性」である。準決勝でコールド負けした日光学園が、準決勝でサヨナラ負けした東郷学園を抑えて選抜されたのは、『ドカベン』ではそこまで記載されていないが、「地域性」の産物として間違いないだろう。東郷学園は神奈川で、神奈川からは関東大会優勝の明訓の選抜出場が確定だからである。


「勝ち上がり優先」というのは、近年多かった選考である。近年多かったということは、八田前会長の体制の方針がそうだったということだろう。

単純にいえば、代表枠が2の地区で、決勝戦が一方的な展開となり、準決勝で優勝校に惜敗した学校がある場合、決勝戦まで行ったことを評価するということである。

この場合、代表枠2ならば決勝進出校で決定という訳だ。


脇村会長の頃は「負け方重視」という選考が多かった。「勝ち上がり優先」で示した例の場合、優勝校に惜敗した学校を「実力がある」と選抜するというものである。代表例が2003年選抜の北信越地区における選考だ。

2003年選抜の選考資料となるのは2002年の秋季大会である。この大会、遊学館(石川)が決勝戦で福井商(福井)を9ー1と圧倒、優勝した。結果選抜されたのは遊学館と、遊学館に準々決勝で2ー1と惜敗した福井(福井、現在の福井工大福井)だった。福井大会で福井が優勝、福井商が3位だったことや、2002年の選手権大会で活躍、好投している藤井投手の存在もプラスになったと言われた。


まずこの3パターンを頭に入れてもらいたい。


それ以外の選抜がなかったのか?といえばかつてあった。「話題性重視」と言っていいだろう。

これは1990年代に時々見られた。一般選考枠が32(つまり21世紀枠がない時代)の話である。代表的なのが1990年選抜だ。東北の枠は通常、当時も今も2だが、この年だけ3校選抜されている。東北(宮城)、金足農(秋田)、秋田経法大付(秋田、現在の明桜)である。しかも秋田から2校、これは何故か?

東北大会では優勝が東北、準優勝が金足農、ベスト4が秋田経法大付だった。つまり秋田経法大付をわざわざ選抜したということになる。これは、前年の選手権大会で秋田経法大付が1年生エース(背番号は11だったが)中川を擁しベスト4に進出していたからで、中川の人気に話題性も加わっての事だった。(前後の年と比較し、東京が1減になった)

この時程の例はさすがに私がとやかく言える様になってからは少ないが、その後もしばらくは記念大会の増枠がある時も、最近と違いどこの地区が増枠されるというアナウンスがなかったので、話題性や集客力を見込んだ選考があったのも確かだ。


さて、ここまで述べてようやく本題を書ける下準備が出来た。


聖隷クリストファー落選、大垣日大が選抜という決定において、問題を大きくしているのは全く説明がなっていないからである。まずはこの4点について分析した上で、なっていない説明について書いていきたいと思う。