千佳 1995年10月28日、29日の大森ベルポートアトリウムで行われたゲームクリエーションのイベントに、水野あおいさんが出ていた話をしていました。

長戸 浜松の怪人によって、28日夜、会場前での徹夜に付き合わされた荀攸だった。

 

荀攸 徹夜する、という話を聞いたスドーカーが一緒につきあってくれることになった。

千佳 スドーカーさんと野宿と言ったら、8月12日の福島がありますね。

長戸 仲間が1人でもいれば頼もしいわな。

荀攸 スドーカーの参加はありがたかったんだけど、季節は10月末、しかも寝るのはひんやりと冷えたコンクリ―トの上、風も強く、寒くてしょうがなかった。正直、段ボールでは冷えたコンクリートの冷たさを防ぐことは出来なかった。ぶるぶる震えて夜を過ごした。

千佳 でしょうね。

荀攸 スドーカーは時折コンビニや吉野家に行って暖をとっていたようだったけど、こっちはその元気すらなかった。

長戸 悲惨だな。

荀攸 朝になった。開場するまではとにかく太陽の当たるところにいた。

長戸 それだけやったから、当然座れたんだろ。

荀攸 もちろん。最前のセンターはスドーカー、俺はその隣だ。

 

荀攸 ステージが始まった。この日もスタートはB-DUSHだった。

千佳 2日間も見ると、そういうことも覚えているんですね。

荀攸 寒さがなくなった後、俺は眠気に襲われていた。ぼーっとしながら、B-DUSHを見ていた。「俺はあおいちゃんさえ見られればいいのに・・・他のアイドルで最前にいて意味あるんか?とも思っていた。

長戸 言われりゃそうだな。

荀攸 それでも3人目、あおいちゃんが出てきた時だけはハイテンションで応援したけどね。

千佳 その為の徹夜ですから。


荀攸 あおいちゃんの次はMelodyだった。

長戸 怪人が徹夜を思い立った理由のグループだな。

荀攸 Melodyのステージが始まるまで少しの間がある。この時、強烈な睡魔に教われた。

長戸 まさか・・・

荀攸 気がつくともうMelodyのステージが始まっていた。顔をあげると、Melodyで1番人気の田中有紀美がこちらを覗きこむような感じで歌っていた。

千佳 これはMelodyファンに嫉妬されそう。

荀攸 何故だろう、と思った瞬間、もう2人(望月まゆと若杉南)から睨む様な視線を感じた。

長戸 (笑)

荀攸 俺は爆睡事件と呼んでいる。


荀攸 その場はそれで済んだとしても、このままではヤバいと思ったのは事実だ。

千佳 それは当然です。

荀攸 私は適当な、恐らく他のアイドルのファンと思われる人に「この席使っていいですよ。ただあおいちゃんのステージの時は返してね」とお願いして、席を外した。

長戸 そんなこと言ってうまくいくんか。

荀攸 そして席を外して休息した。その後、ダメ元であおいちゃんのステージの直前に席に戻ると、席にはお願いした人とは別の人が座っていた。

長戸 だろ。

荀攸 その旨を伝えると「ああ、聞いてますよ」と言わんばかりに席を譲ってくれた。

千佳 ちゃんと伝わっていたんですね。

長戸 それよりも、どのアイドルのファンもみんな譲り合っていることが凄いな。

千佳 自分だけよければいい、っていうんじゃないんですね。

長戸 考えてみると、ステージで演じているアイドルも、全く興味のない奴が前の方に占拠されていたら、面白くないよな。自分のステージの時は、やっぱり自分のファンに盛り上げてもらいたいよな。

千佳 ファン同士の席の譲り合いって、イコールステージ上の他のアイドルに対する敬意なんですね。

荀攸 そういう事も勉強になった大森ベルポートアトリウムだった。


千佳 続きの前に、ちょっといいです?

荀攸 どうした?

千佳 これまで連載ものは、100回でタイトルを変えていたじゃないですか。

長戸 『私見武士の世に』、『私見鎌倉幕府』、『私見頼朝政権』、確かにそうだ。

千佳 『正気の歌』、100回になりましたよ。

長戸 そうだ、俺も気になっていた。

荀攸 『正気の歌』のタイトルの元ネタは、文天祥の『正気の歌』からきている。何度か言ってるよね。

千佳 はい、そうです。

荀攸 『正気の歌』には続編も第2章もない。トータルで『正気の歌』だ。

長戸 だから続編はない、ということは

千佳 このまま『正気の歌』でいくってことですか。

荀攸 そういう事。


荀攸 そして次回は特別編を行います。特別編を挟んで、101回に続きます。

千佳 101回もまだまだ大森ベルポートアトリウムですね。

長戸 濃い2日間だな。