いわば大きな下り坂の中、新たな脅威としてサッカーが出てきたにもかかわらず、野球界は全体として対応する事はなかった。プロ野球界のリーダーだった巨人が、長嶋茂雄を前面に出すという
『新規の若い顧客は相手にしない。今社会で中心になっている金のある世代と商売すればいい』
というやり方だった。短期的には稼げるかもしれないが長期的視野の欠けたビジネスモデルである。サッカーが普及活動を行う中であった、全世代一体となった、長期的視野をもったビジョンはなかった。

 

野球が身近なものでなくなった上に、サッカーが身近がものになった。親世代は野球も身近だったのだが、本格的に野球をしようとすれば、グローブやらスパイクやらバットやらで、サッカーにはない用具代がかかってしまう。

現役の親世代の可処分所得が減少している。現役親世代の親が現役親世代だった頃より1割の減少である。食事代や光熱費等生きていく上で必要な経費をさっ引いたら、使える金額の減少は1割では済まない。これは簡単な算数の話である。
 
そして、子どものスポーツを取り巻く環境は可処分所得が減少しているにもかかわらず、親の負担が大きくなっている。

 

家族会やお茶当番といった負担については残念ながら私はよくわからないが、私が少年野球をやっていた頃は、むしろ親の入る余地はなかったので、それだけで負担というのはわかる。ただ、どうもそれだけではない。
というのは、どんなスポーツも子どもの頃から簡単に遠征しているのだ。昔よりも練習試合の数が増えている上に、
「近くのチームは公式戦で戦うので」
という理由で遠征する。どんなスポーツをさせている親でも、話をしていると新潟遠征という練習試合(私は富山県在住)がしょっちゅうある。これまた負担増である。
 
ここまで負担が増えてはやりきれない。少しでも親の負担の少ないスポーツを、親も子どもに薦めるようになっている。野球はますます不利である。
 
しかも少子化である。競技人口の減少が想定以上になれば、いろんな対策も成り立たなくなる。この現実を踏まえた上で、次の話をしたい。
 
この選抜に復活出場する米子東は2年生が6名しかいない。選抜に出るようなチームでも、1学年で9人いない状況になってきた。
その上で、常連チームによる部員の寡占は止められない。どうしたらいいのか?
 
これから先、部員不足に陥るチームは多いだろう。今は試合さえ出来れば良いという感じの連合チームだが、もう少しどうにかならないだろうか。地縁的に近いチームが7名位それぞれ部員がいた場合、7+7の14名で出られるようにするといった措置も必要だと思う。今は他所の3名以下をプラスしてギリギリの人数で、といった感じだ。
地縁のあるチーム8名以下のチームが、16名を越えない(8+8は16である)範囲で連合チームを組めれば、練習も平生から一緒に出来るだろうし、結果もついてくる。これでこそ連合チームの意味があると思う。
地縁パターンでは高校の統廃合が有りうる話だろうが、私は少子化のペースよりも競技人口の減少のペースの方が早いとみている。また、高校相互の性格上、統廃合出来ないパターンもあるだろう。その為にも、現行よりはフレキシブルな連合チーム体制になってほしいと思う。
 
出場機会を増やすトレードやレンタル移籍を認めては?という考えもあるだろう。ただ、転校ではなくトレードやレンタル移籍で“部活”と言えるだろうか?以前に書いたように転校時の規定を改正すれば良い話だと思う。
 
さて、テーマがあまりにも膨大なものになったこともあり、私の考えも膠着するようになった。という訳で、一端『光と影の高校野球』を中断させたいと思う。休止状態として、話題となるテーマが浮上する毎に、『光と影の高校野球』の形で、そのテーマについて持論を展開させたいと思う。
昨年100回目の夏が終わり、91回目の春が始まるのもまもなくである。私も、少なくとも100回目の春は元気に観戦したいと思っている。人間の健康はわからないが、まずはそれが目標だ。
 
その時以降も、高校野球が素晴らしいものとして続いていますように。