はじめまして。アオです。

子どもの頃、僕は玄関の鍵が回る音だけで、

その日の天気を当てられました。

空の話じゃありません。
家の中の天気です。

ガチャ!!と鍵が回る。

夜20時。父が帰ってくる。
その音のあとの一秒で、

僕はテレビの音量を、そっと二つ下げる。

足音が重ければ、今日は嵐。
軽ければ、まあ、曇り。
晴れの日は……正直、

あんまり記憶にないんですけど。



富山の、見渡すかぎり田んぼと、
おじいちゃんおばあちゃん

しかいないような田舎で育ちました。
 

父は精肉工場、母は看護師。

4つ下に、妹がいます。

家にはなぜか、ゲームだけが大量にありました。
ドラクエ、ポケモン、モンハン、FF。何でもやれました。

父が大のゲーム好きだったからです。

皮肉なもので、そのゲームのことで、

僕はいちばん怒られました。

「ゲームばっかりしとるからやろ」
「このゲームオタクが」

テストの点が悪いのも、走るのが遅いのも、

ぜんぶゲームのせいにされて。

……いや、ゲームは悪くない。
ゲームの世界が、現実よりずっと、

ルールが優しかっただけです。
 

努力すれば、ちゃんとレベルが上がる。

誰も僕を「デブ」とは言わない。

ちなみに僕の誕生日は9月8日。

松本人志さんと同じです。
笑いの才能のほうは、

1ミリも遺伝しませんでしたが()



父は、機嫌の振れ幅が大きい人でした。

機嫌のいい日は、笑う。
悪い日は、家じゅうの空気が、ズッシリと重くなる。

僕はその重さを足音で測りながら、
自分の部屋で、できるだけ気配を消していました。

家にいるのに、家の中で、息をひそめている。
それが、僕にとっての「スタンダード」でした。



ひとつだけ、今でもはっきり覚えている日があります。

小学二年の、たしか夏。
「お前はナヨナヨしすぎや」
そう言われて、家の隣の駐車場に連れ出されました。
手には、ドッジボール。

父は昔、柔道をしていたので

ガタイが良かったんです。

 

大の大人が、小学二年の子ども相手に、

全力で投げてくる。

速い。痛い。捕れない。

何球目かで、ボールが顔に当たりました。
鼻の奥がツンとして、視界がにじんで——
あ、泣いちゃだめだ、と思ったときには、もう泣いていて。

顔ではじかれたボールは、
駐車場の脇を流れる川に、

ぽちゃん、と落ちていきました。

「取ってこい」

僕はボールを追いかけて、そのまま川に落ちました。

……今になれば、ちょっと笑える話なんですけど。
あの日の僕には、笑えなかった。

あの駐車場で、僕の中に、いくつかのルールができました。

泣いてはいけない。泣くと、舐められる。
男なんだから、強くならなきゃいけない。
結果を出さないと、認めてもらえない。

このルールは、子どものうちは、僕を守ってくれました。
でも大人になってから、いちばん僕を苦しめたのも、このルールでした。

——その話は、また別の記事で、ちゃんと書きます。



正直に言うと、父のことは、まだうまく書けません。

父が僕を許さないんじゃなくて、僕が父を許せない。
その理由は、僕に向けられた言葉よりも——
母に向けられたものでした。

父は、母にも手を上げる人だったんです。

その日のことを思い出すと、今でも胸の奥が固くなる。
一度だけ、台所で、よくないことを考えてしまったこともあります。
……その話は、いつか、ちゃんと。今日は、まだ書けません。

ひとつだけ言えるのは。

父を許せない自分が、今でもいます。
でも、社会に出て、家族を食べさせていく重さを知って——
父に、ほんの少しだけ、感謝している自分も、いるんです。

感謝があるからといって、傷ついたことが、消えるわけじゃない。
その二つは、どちらかが勝つこともなく、
同じ胸の中で、ずっと同居しています。



ここまで読んでくれた、あなたへ。

もし、あなたも。
誰かの機嫌で、自分の一日が決まる子どもだったなら。
大人になった今も、人の顔色を、先に読んでしまうなら。

これは、あなたの話でもあります。

あの頃の僕は、自分だけがおかしいんだと思っていました。
弱いから、こうなったんだ、と。

でも、違った。

僕は、強くなりたかったわけじゃなかったんです。
ただ、怒られない自分で、いたかっただけ。

それは、弱さじゃない。
あの家で生き延びるための、精一杯の知恵でした。



このブログでは、そんな僕の過去と、
これからのことを、少しずつ書いていきます。

きれいな話ばかりには、なりません。
「親を許そう」なんて、急ぐつもりもありません。

ただ、同じように、誰かの機嫌を読んで生きてきた人に、
「ああ、自分だけじゃなかった」と、思ってもらえたら。
それだけで、僕がこれを書く意味があります。

ここから少しずつ、本音で選べる自分に、戻っていきます。

これから、よろしくお願いします。

アオ