上司の機嫌が、悪い。
隣の席で、誰かが怒鳴られている。
パートナーの声が、低くなる。

その瞬間、頭の中が、真っ白になる。
声が、出ない。
うまく、笑えない。
体が、ぎゅっと固まって、動かない。

そしてあとで、必ず思うんです。
「なんで、あのとき、何も言えなかったんだろう」って。

何度か予告していた話を、今日は書きます。
怒っている人の前で、体が固まる。
あれは、あなたが弱いからじゃ、ないんです。



◆ 「固まる」のは、ちゃんとした防衛反応

人は、強い恐怖に出会ったとき、
3つのうちのどれかで、反応すると言われています。

闘う(ファイト)。
逃げる(フライト)。
そして、固まる(フリーズ)。

これは「闘争・逃走・凍りつき反応」と呼ばれるものです。
むずかしく聞こえますが、ようするに、
こわいとき、体が勝手にとる、3つの守り方のこと。

ここで、思い出してほしいんです。

子どもの頃の僕らは、
あの家で、父に「闘う」ことなんて、できなかった。
かといって、家から「逃げる」ことも、できなかった。

闘えない。逃げられない。

だったら、残る道は、ひとつしかありません。

——固まって、嵐が過ぎるのを、じっと待つ。

つまり「固まる」ことは、
あの状況で選べる、いちばん賢い生き延び方だったんです。

そしてその反応は、大人になった今も、
体に、しっかり刻み込まれています。

……ちょっと、かたい言い方になりました。
ようするに、今も体が、ちゃんと覚えてしまっている、ということです。

怒っている人を見ると、神経が「危険だ」と判断して、
あなたの意志とは関係なく、体をロックする。

これは、心の弱さじゃない。
あなたを守るために、体が今も働いてくれている、証拠なんです。



◆ 今日からできる、小さな一歩

固まった体は、「もう安全だよ」と伝えてあげると、
少しずつ、ゆるんでいきます。

ひとつめ。
固まったな、と気づいたら、
息を、長く、細く、吐いてみてください。

吸うよりも、吐くほうを、長く。
吐く息は、体の「安心スイッチ」を、そっと押してくれます。

ふたつめ。
手の指を、ぎゅっと握って、ぱっと開く。
足の裏で、軽く、床を踏む。

「自分は、動ける」
それを、体に、思い出させてあげるんです。

固まるの反対は、リラックスじゃなくて、
「ちょっと動ける」なので。

うまくできなくても、いいんです。
気づけただけで、もう、十分すぎるくらいです。



◆ 固まった自分を、責めないで

あの会議で。あの食卓で。
何も言えずに固まった自分を、ずっと責めてきたかもしれません。

でも、もう、責めないであげてください。

あなたは、あのとき、ちゃんと生き延びた。
固まるという方法で、自分を、守りきった。

それは、敗北じゃありません。
立派な、サバイバルです。

これから少しずつ、
"安全な場所では、動ける体"を、取り戻していきましょう。
急がず、ゆっくり、で大丈夫です。

次回は、「失敗するのが、こわい」という話を。
挑戦できないのは、あなたが臆病だからじゃ、ないんです。

アオ