DLの広角モデルに続き、標準ズームモデルのDL24-85 f1.8-2.8についても競合比較をしてみたいと思います。
このコンパクトデジタルカメラは
・ 1インチ(強)のセンサー搭載、
・ レンズはズームで24mmから中望遠までカバー、
・ テレ端でも開放F値2.8程度、
というカテゴリーに入れられると思いますが、ここは大変な激戦区です。
・ DL24-85 f1.8-2.8 (Nikon)
・ PowerShot G7X MarkⅡ (Canon)
・ DSC-RX100M4 (SONY)
・ DMC-LX100 (Panasonic)
・ D-Lux Typ 109 (Leica) ※DMC-LX100同等
デジタル一眼レフメーカーの二強のもう片方、そして白物家電メーカーの二強、はたまたLeicaまで製品を展開しています。この群雄割拠の戦国時代といえる市場でDL24-85 f1.8-2.8を選択するポイントはどこか。順番に見ていきたいと思います。
※尚、D-Lux Typ 109はDMC-LX100と同等の性能なので省略します
■ボディサイズ
コンパクトデジタルカメラである以上、携行性はとても重要な要素だと考えていますが、ここはSONYのDSC-RX100M4が数歩リードといったところでしょうか。唯一300gを割り込んでいます。G7X MarkⅡが僅差で続きます。DMC-LX100は400g近い重量で、これらの二機種と比較するとかなり大型といえるでしょう。
DL24-85 f1.8-2.8はその中間の345gですが、EVFを外付けする場合はDMC-LX100とほぼ同等の400g程度になると思われます(DLの外付けEVF DF-E1の重量データを見つけることができませんでした)
■画質
DMC-LX100は１インチ以上の大きさであるフォーサーズを使うことでマルチアスペクトに対応しています。また、画素ピッチの関係でやや手ぶれが目立ちにくいのではないかと思われます。
有効画素数はDMC-LX100が1280万画素、他が約2000万画素強ですが、画素の大小は好みの問題のような気もします(私はD700/D3Sの1200万画素で満足している人間です)。
DxOのスコアを比較すると、DSC-RX100M4、DMC-LX100、また参考値のG7X (前身モデル) はほぼ互角という結果となっています。これはレンズ込でのオーバーオールスコアなので、画質的にはほぼ同等と思って良さそうです。
■レンズ性能
全機種ワイド端は24mmの広さを確保しています。ワイド端でのF値も全モデルF=1.8(1.7)を誇ります。
テレ端についてはDSC-RX100M4、DMC-LX100がやや短く、それぞれ70mm、75mmまでです。一方DL24-85 f/1.8-2.8は85mm、G7X MarkⅡは100mmまで望遠します。
個人的には70mmと85mmで使用感が結構違うと思っており、例えば24-70mm f/2.8Gをメインレンズとして携行する旅では、必ず85mm f/1.8G単焦点を中望遠の補完用に持ち出しています。
85mmが欲しくなるのは主に「旅でのファーストコンタクトにおいて相手と適度な距離感を保ちつつポートレートを撮りたいとき」という時ですが、それ以外にもやはり中望遠が必要な場面はありますので、私的には旅に一台だけコンパクトを持って行くとしたらNikonかCanonを選択するかと思います。
---
AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G - モロッコで撮ったスナップ
http://ameblo.jp/junwxyz/entry-12135404426.html
AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G - バヌアツで撮ったポートレート
http://ameblo.jp/junwxyz/theme-10095773185.html
---
ただ、基本的にはどのカメラもテレ端でF=2.8を保っているので、どれを選んでも通常使いでは問題ないと思います。ちなみに手元のDSC-RX100M2のテレ端F=4.9はあまりボケてくれません。
■充電
USB充電できません。ここはUSB充電できて欲しかったです。CanonがG7XではできなかったUSB充電をG7X MarkⅡで対応させてくるくらい、市場の要求が大きい機能だと思うのですが…。
USB充電のできるG7X MarkⅡ、DSC-RX100M4は旅での携行性に優れていると思います。(純正品以外での充電はメーカー非推奨なので正当な評価に入れて良いかは賛否あると思いますが)
・スマートフォン、・タブレット端末、・kindle、・MP3プレーヤー(Walkmanなど)、・Surface3(ノートパソコン)、
と充電器が共有できるのは荷物の軽量化に何役も買ってくれそうです。モバイルバッテリーパックからの充電が可能なのも安心感があります。
旅もそうですが…日常使いでもそうですね。いちいち速射型ケースから外して電池出して充電して…というのは煩わしいです。DLには、365日表現者であれ。というキャッチコピーを謳う以上日々の充電を面倒くさくないようにしてほしかったです。
■EVF
別売りで外付けです。
撮影に没頭するのに大切なEVF。DSC-RX100M4はポップアップ式で、そしてDMC-LX100はレンジファインダーで内蔵しています。DL(G7X Mark2)も外付けできますが、外付けすると速射型のケースに入れられなくなるので携行性を損なうように思います。傷なんて気にしない！というのであればこの限りではありませんが、どの道カバンに入れる際のケースを別途考えないといけないという点ではやはりひと手間かと思いました。
■その他
・Nikon DLはAFがNikon1譲りということで高速AFが可能です。
・Nikon DLには起動時の焦点距離を設定できるモードがあります。
・Nikon DLのホットシューの規格はニコンのDSLRと共通で、DSLR用のアクセサリーが使えます。
・Nikon DLはBluetooth接続によるスマートフォンなどへの常時画像転送モードがあります。
■比較総評
以上、カタログで評価できる部分を中心に比較評価しましたが、数値上ではDL24-85 f/1.8-2.8には後発としての優位性をあまり感じることができませんでした。また、少なくともUSB充電には対応していて欲しかったです。
ただ、DLにはNikon1譲りの高速AFがあったり、起動時の焦点距離を設定できる機能があったりするので、実際の使い勝手はやはり店頭で試してみて…ということになると思います。もしコンパクトならではの煩わしさ、例えば起動時間やズーム、オートフォーカスの速度が他のカメラより優れていたとしたら、これはコンパクトデジタルカメラを越えた一台になる可能性があります。
また、図らずも1インチ高級ズーム市場の各モデルを比較する良い機会にもなりましたが、私としては各モデルで結構な個性を感じました。この中でベストの一台を決めるのは難しいですが、
・旅でこれ一台！
→焦点距離とUSB充電を評価してG7X Mark2、AF性能と4k動画そして起動時の焦点距離設定機能を評価してDL24-85 f1.8-2.8
・日常使い
→携行性とポップアップEVFとUSB充電を評価してDSC-RX100M4、レンジファインダーの楽しさを評価してDMC-LX100(Leica D-Lux Typ 109)、
といった選び方をするかと思います。
また、売価を見るとDMC-LX100は非常にお買い得になっているので、特にメーカーにこだわりがないという方はコストパフォーマンスを重視してこれを選ぶのも良いかと思います(しかしDSC-RX100M4は高いですね…)。
あとはRaw現像までするのであれば、ワークフローに応じてという選び方もあるかと思います。（私はコンパクトを使うような気楽な撮影でまでRaw現像をしないので、この点はどれでもOKです）
■結論 DL24-85 f/1.8-2.8は買いか
結論は…買わない。
かなぁ。DL18-50 f1.8-2.8を買うという前提であれば、ですが。
まず
NikonさんのCP+ 2016のインタビューより、
“...we wanted DL users - who we believe will be DSLR users - to choose whichever camera in this DL series as if they were choosing an interchangeable lens.”
“我々はDLのユーザー、恐らく一眼レフユーザーだが、には、あたかも交換レンズを選ぶかのようにDLのカメラを選んでほしい”
とありました。
面白いコンセプトですが、というのであれば全域でF=1.8を実現する位の突き抜け方をして欲しかったです。正直DL18-50 f1.8-2.8と使い分けたくなるようなレンズの性能差は持っていない印象です。ズームが120mmくらいまで伸びるとか音声入力端子があるとかであれば話は別でしたが…。
ただ、このNikonさんのコメントは今後のDLシリーズの商品展開の構想ともとれますので、今後に引き続き期待していきたいと思います。そう考えた場合、このモデルは一番標準的なモデルということで納得できます。かと言って、DL24-85 f/1.8-2.8単体で見た場合でも、ライバル機種と比較しての特別な優位性は今のところ感じませんが…。
---
ということでカタログスペックを比較してきましたが、他社と比較すると、良く言えば「うまくまとまった」、悪く言えば「無難な一台」といった印象でした。
365日持ち出したくなるほど毎日の取り扱いに配慮された仕様ではないし(主にUSB充電と外付けのファインダーです)、
かといって持ち出しに優位性があるくらい小さく軽い訳でもないし(競合比でですが)、
だからと言って突き抜けたスペックがあるわけでもない。
少しターゲットカスタマーが見えにくい機種だな、と思いました。
次はDL24-500 f2.8-5.6の競合比較をしてみたいと思います。