仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2024年8月20日号

 

2024年8月16日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Sois pas timide - Maître Gims

 2 Spider - Maître Gims, Dystinct

 3 Imagine - Carbonne

 4 Coco - Ninho & Niska

 5 Gata Only - FloyyMenor, Cris MJ

 6 Bah ouais nouvelle école - DADI

 7 No lo sé - Lacrim

 8 Monaco - Guy2Bezbar

 9 Wayeh - Théodort

 10 Boucan - KeBlack

 

【アルバムチャート】

 1 La vie continue - Maes

 2 HIT ME HARD AND SOFT - Billie Eilish

 3 Chambre 140 (Part.3) - PLK

 4 VENI VIDI VICI - Lacrim

 5 ATE - Stray Kids

 6 Chaque seconde - Pierre Garnier

 7 Mise à jour - JuL

 8 Essentiels - Slimane

 9 Depuis le temps - Bouss

 10 Pyramide - Werenoi

 

 今週のシングルチャートはMaître Gims(メイトル・ギムス)単独の「Sois pas timide」が1位に浮上しました。コンゴ民主共和国キンシャサ生まれの38歳のラッパー。8人組ヒップホップユニット「セクシオン・ダソー(Sexion d'Assaut)」の一員でした。本名のファーストネームは「インド独立の父」と同じガンディー(Gandhi)で、だから「先生(Maître)」。マスター・ヨーダのマスターのような尊称です。Lacrim(ラクリム)のアルバム「VENI VIDI VICI」収録の「No lo sé」がシングル7位。スペイン語で「知らない」という意味です。

 アルバムチャートは3週連続で、順位が変わるだけでトップ10の面子が同じ。夏ももうすぐ終わりですが夏枯れ極まれリ。今週の1位はMaes(メイズ)の「La vie continue」でした。

 

Phoenix(フェニックス)


Phoenix

 8月11日(現地時間)、パリ五輪の閉会式がサン=ドニ(Saint-Denis)のフランス競技場(スタッド・ドゥ・フランス/Stade de France)で行われました。そのパーティータイムで世界各国のアスリートたちに囲まれながらけっこう長い時間、演奏していたのが、4人組インディーズ・ポップロックバンド、Phoenix(フェニックス)でした。

 メンバーはフロントマンのトーマス・マーズ(Thomas Mars)、ベースのデック・ダーシー(Deck d'Arcy)、ギターのローラン・ブランコウィッツ(Laurent Brancowitz)、ギターのクリスチャン・マザライ(Christian Mazzalai)の4ピース。1995年、世界遺産のヴェルサイユ宮殿が世界的に有名なイヴリーヌ(Yvelines/78)県ヴェルサイユ(Versailles)で結成され、翌年に本格デビューしました。

 フランス国内で彼らが知られるきっかけが2000年のシングル「If I Ever Feel Better」で、SNEPシングルチャート最高12位。しかし同年リリースのファーストアルバム「United」は最高90位どまり。一部でカルト的人気は得たものの、メディアでは「オルタナ/インディーズの星」のような扱われ方でした。大部分の曲を英語で歌っていることも、ラジオ局は特定の時間にかける曲の40%をフランス語の楽曲にせよという「クオータ規制」で不利に作用しますが、英米のマーケットには進出しやすい利点もありました。

 最高14位だった2009年リリースの4枚目のアルバム「Wolfgang Amadeus Phoenix」でようやくフランス国内で商業的にブレイクし、収録シングル「1901」「Lisztomania」はアメリカでプラチナディスクになりました。次の2013年のアルバム「Bankrupt!」はSNEPアルバムチャート最高3位。アメリカのビルボードチャート4位にのぼりつめ、欧米のロックシーンで確固たる地位を築きました。その後、2017年の「Ti Amo」(最高17位)、2022年の「Alpha Zulu」(最高44位)と、デビュー以来7枚と寡作の部類ではありますが、彼らなりのペースでアルバム制作を続けています。ライブ活動はパリとロンドンを主体にコンスタントに行っています。

 彼らの代表曲で、パリ五輪の閉会式でも演奏された2009年リリースの「1901」をお聴きください。UKっぽさ全開ですが、2009年にアメリカのビルボードチャートで最高3位になっています。日本にもこの曲でフェニックスの存在を知った、という人がけっこういるようです。フロントマンのトーマス・マーズは曲のタイトルについて、「1901年のパリは今よりよかった」と言い、普仏戦争と第一次世界大戦の間(1870~1914年)、文化が花開いた「ベル・エポック(La Belle Époque)」の時代への憧憬が込められていると話しています。

 

Phoenix(フェニックス) - 1901

 

では、また来週

À la semaine prochaine!