2024年6月21日付 SNEPシングル&アルバムチャート
※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)
【シングルチャート】
1 Imagine - Carbonne
2 Spider - Maître Gims, Dystinct
3 Gata Only - FloyyMenor, Cris MJ
4 Mélanine - Heuss L'Enfoiré
5 Boucan - KeBlack
6 The Sound Of Silence(Cyril Remix) - Disturbed
7 Beautiful Things - Benson Boone
8 Espresso - Sabrina Carpenter
9 Petit Génie - Jungeli,Imen ES, Alonzo
10 Wayeh - Théodort
【アルバムチャート】
1 VENI VIDI VICI - Lacrim
2 Mise à jour - JuL
3 Chaque seconde - Pierre Garnier
4 La Vie de Roni - Heuss L'Enfoiré
5 JVLIVS Prequel:Giulio - SCH
6 HIT ME HARD AND SOFT - Billie Eilish
7 L'HEURE MIROIR - Thibault Cauvin & -M-
8 Essentiels - Slimane
9 Dose héroïque - Caballero
10 Chambre 140 (Part.3) - PLK
シングルチャートは8位以外は前週と同じ顔ぶれ。1位は今週もCarbonneの「Imagine」で動かず。8位に上がってきた「Espresso」を歌うSabrina Carpenter(サブリナ・カーペンター)は25歳のアメリカ・ペンシルベニア州出身の女優兼歌手。代表作はディズニー・チャンネルの『ガール・ミーツ・ワールド』シリーズです。「Espresso(エスプレッソ)」は4月に出した新曲で、同月のコーチェラ・フェスで披露しています。
6月14日発売の17曲入りアルバム「VENI VIDI VICI」が今週、初登場でアルバムチャート1位にランクインしたのがLacrim(ラクリム)です。パリ20区生まれの39歳のラッパー。両親はアルジェリア系とモロッコ系で、プロフィールは2021年12月21日号でくわしくご紹介していますので、そちらをご覧ください。2021年12月の「Persona non grata(ペルソナ・ノン・グラータ/受け入れがたい人物)」以来2年半ぶりの新作のタイトルは再びラテン語で「来た、見た、勝った」という意味。歴史家プルタルコスの『対比列伝』によると、古代ローマの将軍にして政治家のユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が紀元前47年、ゼラの戦いで小アジアのポントス王国軍を電撃戦で撃破した後、勝利をローマに知らせた手紙にある言葉です。フィリップ・モリスのタバコ「マールボロ」のライオンのエンブレムの下にもこの言葉が刻まれています。
アルバム4位の「La Vie de Roni」はアルジェリア系の31歳のラッパー、Heuss L'Enfoiré(ヒュース・ランフォワレ)の3枚目のスタジオアルバムで、6月14日リリース。収録曲ではWerenoiをフィーチャーした「Mélanine」が今週、シングル4位にチャートインしています。タイトルの「Roni」とはサッカーの元ブラジル代表でPSGやFCバルセロナで活躍したロナウジーニョのことで、本人がアルバムのオフィシャルPVに特別出演しています。引退後は何度もおまわりさんのお世話になるなどスキャンダラスな人生を送ってきましたが、44歳の今はブラジルで静かに暮らしているとのこと。彼が「サッカーの次に好きだ」という音楽では、かつてのドリブル突破の際のあのリズムノリで、レゲエやヒップホップを披露しています。
6月14日に出した「Dose héroïque」がアルバム9位に初登場したCaballero(カバレロ)は、スペイン・カタルーニャ州バルセロナで生まれベルギーのブリュッセルを本拠にパリのレーベルからフランス語でラップした新作を出すという、欧州連合のヨーロッパ統合の理念を体現したかのような35歳のラッパー。皮肉やおふざけが多いリリックが人気です。アルバムタイトルは直訳すると「英雄的な摂取」。いけないクスリを思わせますが……。
Thibault Cauvin(ティボー・コーヴァン)
今週のアルバムチャート7位に、「-M-」ことブローニュ・ビヤンクール出身の52歳のシンガーソングライター、マチュー・シェディッド(Matthieu Chedid/2022年6月14日号参照)と共作の16曲入りのアルバム「L'HEURE MIROIR」がチャートインしたThibault Cauvin(ティボー・コーヴァン)は、クラシック界では現代フランスを代表するギタリストです。
1984年7月、ボルドー(Bordeaux)生まれの39歳。父親に勧められて5歳で初めてギターを手にし、ボルドー音楽院(Conservatoire à rayonnement régional de Bordeaux)から、数々の優れた音楽家を輩出したパリ国立高等音楽院(Conservatoire national supérieur de musique et de danse de Paris)へ進学して、優秀な成績で卒業しました。
10代の頃からクラシックギターの国際コンクールに意欲的に挑戦し、20歳までに1位13回を含む36回の入賞を果たしたという「21世紀の神童」でした。その後はパリ、ロンドン、ニューヨーク、モスクワなど世界各国のホールでソロコンサートを開き、批評家から高い評価を得る一方、エッフェル塔、北京の紫禁城など世界じゅうのユネスコ世界遺産を訪れてはそこで演奏する映像を収録したシリーズ「マジック・ツアー」が人気を博し、若い女性ファンの「追っかけ」まで出現して「コーヴァン現象」とも呼ばれました。日本での知名度は低いですが、フランスでは年齢的に近いピアノのソフィアン・パマート、ヴァイオリンのルノー・カピュソン、チェロのゴーティエ・カピュソンと並び立つ、実力と人気を兼ね備えたアーティストです。
ここに挙げた人たちもクラシックの枠を超えて他ジャンルのミュージシャンとコラボしたり、映画音楽、ポピュラー音楽、ワールドミュージックなどに挑戦していますが、それと同じように、ティボー・コーヴァンが今回、フレンチポップスのベテランと組んで出したアルバムが「L'HEURE MIROIR」です。なお、映画音楽についてはすでに挑戦済みです。
タイトルは日本語では「ミラーアワー」と言い、「12:21(12時21分)」のように、時と分の間に入るコロンによって左右対称になる時刻のことで、「魔法の力を持っている」と信じている人たちがいます。日本でも素人の姓名判断で、たとえば「山中幸二」のような「漢字が左右対称になる名前はラッキー」と言っている人がいますが、それと似たようなものです。
収録曲ではコーヴァンのクラシックギターと-M-のエレキギターが競演していますが、今回はその中からオープニング&タイトルチューンをお聴きください。彼らは10月にパリ8区のアルマ橋に近いシャンゼリゼ劇場でジョイントコンサートを開く予定です。ジャンルを超えて「異種格闘技」のように出会ったこの企画から「新しい音」を発見できますか?
Thibault Cauvin(ティボー・コーヴァン) & -M- - "L'HEURE MIROIR" (Clip officiel)
では、また来週
À la semaine prochaine!